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飲食店開業の資金集めは「創業計画書」が鍵。日本政策金融公庫の担当者が語る融資のポイント

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飲食店に心強い存在の日本政策金融公庫

飲食店の創業時に最も頭を悩ますのは、資金をどのように調達するかということではないだろうか。自己資金ですべてを賄えればいいが、多くの場合そうはいかない。融資を受けることを前提に、開業を考えている方がほとんどだろう。

融資を受けるにはさまざまな方法があるが、飲食店出店において最も馴染み深いのが日本政策金融公庫からの融資だ。そこでここでは、日本政策金融公庫から融資を受ける際のポイントについてまとめてみたので紹介したい。

ご存知の方も多いだろうが、日本政策金融公庫とは新しい産業を生み、育てることを目的とした政策金融機関のこと。融資実行までの期間が短いのが特徴で、素早い事業展開にも対応が可能だ。本稿の最後には、日本政策金融公庫で1000件以上の創業支援融資を手がけてきた上野支店融資第二課長の石原文彦氏に、融資を受ける際のポイントについても伺っているのでぜひ参考にしていただきたい。

創業計画書、攻略のポイント

融資を受ける際、金融機関が特にチェックしている部分はどこなのか? 創業計画書の中で大切なポイントをいくつか紹介しよう。

■まずは熱意をしっかりと伝える
創業計画書には、これまでの経歴や創業の動機、さらにメニューやサービスの特徴まで細かく記載することが大切。金融機関はここで創業者の熱意を量るので、しっかりと練り上げておく必要がある。

■金融機関を納得させられるように工夫を
創業時には、「事業実績がなく財務データがない」「取引実績がないため信用情報がない」ことから、金融機関の担当者を納得させられるだけのビジネスプランが必要になってくる。そのためには何が必要なのだろうか。

1、客観的視点も交えながら事業内容を伝える
創業計画書では、熱意を伝えるのはもちろんのこと、客観的視点を交えながら自身の事業を説明することが必要だ。業界の動向や第三者の意見を記載することで、しっかりと情報収集していることをアピールでき、それが金融機関への信頼にも繋がっていく。

2、資金面のリスクをなるべく抑える
これは初期計画の段階で重要になる話だが、金融機関はリスクに敏感なので、極力リスクを抑えた事業計画を練る必要がある。特に日本政策金融公庫では、小さく始めて大きく育てることが事業の成功確率を高めると考えられているので、初期の過剰な設備投資は避けたい。また設備資金については、創業計画書に見積書を添付しておくと担当者の理解が得られやすい。

3、収支計画は綿密に練る
収支計画には緻密さが求められる。たとえば日本政策金融公庫総合研究所が発表している「小企業の経営指標」という資料には、業態ごとの売上原価率、1坪あたりの売上高といった数値が掲載されている。売上予測にはこれらの資料を用いるのが良い。また人件費の算出に関しても、雇い入れる従業員数を考慮したうえで算出するなど、あらゆる面で緻密さを意識して計画を練っていきたい。

創業計画書は日本政策金融公庫のホームページで記入例を閲覧することができる。出店希望者は一度チェックしてみるといいだろう。

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写真はイメージ

実際の融資担当者の声を聞いてみた

ここからは日本政策金融公庫・石原文彦氏のコメントを紹介する。実際の融資担当者は、どのようなポイントに注意するのだろうか?

「私たちが最も重視するのが、開業希望者が自分の店を持つことにどのくらい強い熱意を持っているかです。開業の動機がしっかりとしている人ほど、難局を乗り越え、事業を成功に導いています。その熱意を判断するために重要になるのが、創業計画書と面談時のプレゼンテーションになります。

創業計画書は、飲食店の事業プランを整理した文書です。融資を申し込む直前になってから作成するのではなく、開業準備を始めた早い段階から作り始め、準備を進める中でブラッシュアップしていけばいいのです。そうすれば、この計画書が店の経営指針になっていきます」

なるほど、熱意が伝わるような創業計画書を作ることがまずは大切というわけだ。ちなみに自己資金の割合も大切だと聞くが、どのぐらい用意しておくのが望ましいのだろう?

「最低でも開業資金の3割は自分で用意する気持ちが必要です。自己資金に“どうしても開業したい”という気持ちが表れるからです。さらに各種支払いの支払い状況も審査の材料になります。きちんと支払いをすることは信頼関係の土台になることですから、これがルーズになっているのは大きなマイナスになります。

また、出店する場所が決まったら、そのエリアにある競合店を必ず視察してください。そのエリアの需要がわかるとともに、開業後の見通しを考える際のベンチマークになります。当公庫では面談の際に、売上高や経費の算定根拠をヒアリングします。事前にリサーチした、根拠のある数字を用意することで、計画書の信頼性を高めることができるからです」

石原氏はこれまで1000件以上の創業支援融資を手がけてきたそうだが、数多くの開業者を見る中で感じた、開業の成否を決めるポイントはあるのだろうか。

「成功する経営者は人間的な魅力に溢れており、その魅力に引かれて多くの人が集まってきます。『人脈』もまた、開業の成否を決める鍵と言えるかもしれません。数多くの開業希望者とお会いしてきましたが、成功者は皆ポジティブです。思いがけないトラブルに見舞われても、それらを成功の糧と前向きに捉えて乗り越えて欲しいと思います」

日本政策金融公庫の融資制度には、創業を目指す飲食店経営者にとって大きなメリットがある。融資実行までのスピードが早いこともあり、物件取得などの起業準備に関わる資金調達を素早く行うことができるからだ。これから融資を検討する方は、上記ポイントをチェックしつつ創業準備に臨んでほしい。

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平田佐百合

ライター: 平田佐百合

情報誌の編集者として長くダイニングやホテル、エンターテインメントまで幅広い記事を担当。また中国上海にて、在留邦人向けに現地の勢いある飲食店情報を発信。ミシュランスターシェフのインタビューや飲食店スタッフとの交流から生まれた企画など、トレンドを織り交ぜた記事が得意。