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一流シェフはなぜ「食育」に励むのか!? 最近の飲食店の食育事情とは?

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Photo by Sharon Mollerus

六本木の一ツ星店『日本料理 菱沼』。店主である菱沼孝之氏は、長年に渡り日本料理界の第一線を走り続けてきた人物だが、そんな彼が最近力を入れているのが「食育」である。特に子どもに向けた食育に力を入れており、本の執筆や講演活動を積極的に行っているようだ。

こうした食育活動は、菱沼氏だけでなくさまざまな料理人が行っている。その背景には一体何があるのだろうか? 今回は最近の食育事情について紹介していきたい。

料理人が食育に力を入れる理由

今、多くの一流シェフたちが熱心に食育に取り組んでいる。例えば、フレンチの巨匠・三國清三氏。彼は「KIDSシェフ教室」を10年以上続け、子どもたちに料理の楽しさを伝えている。

また、三菱地所が推進するプロジェクト「食育丸の内」は、丸の内エリアを中心に食のイベントやプロジェクトを展開。参加する料理人は『リストランテ アルポルト』の片岡護氏、『分とく山』の野崎洋光氏、そして『Wakiya -笑美茶樓』の脇屋友詞氏など、そうそうたる顔ぶれが名を連ねる。

さらに、一流シェフが給食メニューを提供する「スーパー給食」には、『新宿割烹 中嶋』の中嶋貞治氏、『美虎』の五十嵐美幸氏らが参加している。

なぜ、これほど多くの料理人が食育に力を入れているのだろうか?

その大きな理由として、消費者の食生活が大きく変化したことが挙げられる。外食産業の市場規模は、震災のあった2011年の23兆円弱で底打ちしたあとは微増を続け、近年は24兆円台で推移。その一方で躍進しているのが中食市場だ。中食市場は現在8兆円超で、これからも成長が予測されている。

中食だけでなく、内食、つまり家庭内で食べる食事でも、手軽に調理できる冷凍食品・加工食品などが増え、本来の「手作り」の食事を食べる機会が減少。また、一人で食べる個食の増加も指摘されている。

このような環境を背景に、野菜や鮮魚などをまともに味わう機会が減り、子どもたちの味覚の育ちが心配されている。味覚が育たなければ、いつかレストランの需要も薄れていく。つまり料理人たちは、次世代のゲストとなりうる子どもたちへ食の楽しさや大切さを伝えることで、食文化を廃れさせないように努めているのだ。

ちなみに食育の具体的な中身とはどのようなものだろうか。食育月間を推進する内閣府の説明を参照してみると、「子どもだけではなく、『老化予防』『食文化の継承』など、大人にとっても食育が大切」と位置付けられている。さらに、服部幸應氏が主宰する食育クラブでは、食育の3本柱として以下を提案している。

1、選食力を養う(旬の食べ物、日本食の魅力)
2、マナーやしつけ(食のマナーを通じて社会を学ぶ)
3、地球規模で食を考える(環境問題)

この3か条は飲食店からみても共感しやすく、「何かできそう」と思えるのではないだろうか。一方の消費者側も、外食する場合に「体にいい」「食を学べる」「食育体験ができる」などの要素があると足を運びやすくなる。こうした視点で食育イベントを企画するのも、集客手段のひとつといえるかもしれない。

食の大切さは少しずつ世間に浸透しつつある。そうした食への高い意識を持つ消費者に対しても、しっかりと応えられるような飲食店でありたいものだ。

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。