飲食店ドットコムのサービス

いま飲食店に求められるメニュープランとは? 本格コース料理5,000円はなぜ実現できる!?

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly
1026_a

南青山『L’AS』の5,000円コースで提供される「ショコラマルキース」

“5,000円の本格コース”が増える理由

ここのところ、5,000円前後で良質なコース料理を提供する店舗が増えてきている。その“走り”といえば南青山『L’AS』が挙げられるが、兼子大輔シェフは以前『Foodist Media』の取材でこのようなコメントを残している。

「フランス料理には敷居の高さというか、ある種の堅苦しさがあります。この堅苦しさは僕も嫌いではないのですが、もっとリーズナブルに、そして気軽にフランス料理を楽しみたいという方がいることも事実。そのニーズに応えてあげることが、『L’AS』の成功に繋がるという自信があったんです」

つまり、“本格フランス料理をリーズナブルに楽しみたい”という世の中のニーズに応える形で、5,000円のコース料理を始めたというわけだ。

近年の消費者は、“少し値が張ってでも、質の高いものを食べたい”という傾向にある。そうした消費者にとって5,000円のコース料理は、ちょうどいい値ごろ感なのだろう。『L’AS』は高級店に足繁く通うグルマンから、少し背伸びして本格フレンチを味わってみたいという若い世代まで、幅広い客を獲得することができた。「5,000円」という絶妙な値付けがもたらした大きな効果といえるだろう。

では、5,000円をキー・プライスとした場合、どのようなメニュー提案であれば客の満足を得られるのだろうか。実例を交えながら考えていきたい。

本格フレンチの入り口としての5,000円

5,000円という価格設定は、業態によって相場より高く感じる場合と、そうでない場合がある。例えば、フランス料理のディナーコースが5,000円と聞くと、訪れる側からすればかなりお得感があるのではないだろうか。

今年の春にオープンした四谷三丁目の『アトリエ シュシュ』は、ディナーのコース料理を5,000円で提供中。腕をふるう野村裕亮シェフは、銀座『ボン・シャン』や渋谷『パピエドレ』で実力を磨いてきた人物で、正統派フレンチの技法を用いながら、全7皿のコース料理でグルマンたちを魅了している。

また、期間限定ではあるが、9月24日〜10月9日の約半月行われる「フランスレストランウィーク」では、全国の参加フレンチレストラン各店で、ランチもディナーも5,000円で提供するという。

“食べること”に関して、年々多様化する考え方に対し、専門性の高さや個性でそのニーズに応える店舗が増えてきている。価格や流行だけにとらわれず、良質なものを口にしたいと考える人が世代を問わず増えてきている今、本格フレンチの5,000円は、こうした食にこだわりを持ち始めた人への入り口となるのではないだろうか。

飲み放題ではない、“良質な酒と食事”で5,000円

五反田『酒場それがし』では、定番の人気メニューを集めた「それがしコース(3,500円)」に1,500円をプラスすると、こだわりの日本酒10種が楽しめる。食事との相性を楽しみながら、多彩な日本酒を堪能することができるというわけだ。

『酒場それがし』のスゴイところは、メンチカツやポテトサラダといった居酒屋メニューを提供しながらも、そのどれもがクオリティが高いところ。日本酒も米の旨みが存分に味わえる純米酒を豊富に揃えるなど“通好み”のセレクトも魅力だ。4,000~5,000円程度の宴会コースを提供する店舗は数多くあるが、『酒場それがし』のようにしっかりとコンセプトメイクされたコース料理なら今の時代のニーズにもしっかりと応えることができるだろう。

相場より高くても満足できる5,000円

夏の風物詩、ビアガーデンも年々進化している。特に近年はクラフトビールの流行もあり、オーガニックビールやクラフトビールを豊富に取り揃えたプランや、料理のクオリティを重視したプランが人気のようだ。いずれも5,000円ほどの料金設定にしている店舗が多い。また、通常のレストランもテラス席で楽しめるビアガーデンプランが5,000円代で充実している。

『YAFFA ORGANIC CAFÉ』では、夏の間テラス席で楽しめるビアガーデンプランを提案。オーガニックビールとビオワインの飲み放題もできて5,500円だ。『KIHACHI 青山本店』でもビアテラスをオープン。本格的なおつまみとともにビールを楽しめるプランを提案している。さらに日本初の水牛モッツァレラ専門店『オービカモッツァレラバー 東京ミッドタウン』では本場のモッツァレラチーズとともにビールを楽しむプランを提案。これまでのビアガーデンの相場からは少し高いイメージだが、やはりこちらでも安さよりクオリティを重視する傾向がみられる。

さて、“少し値が張ってでも、質の高いものを食べたい”という消費者の需要に応えるためには、質の高い料理を提供できる技術力に加え、コストを下げるための工夫も必要になってくる。前述の『L’AS』では、低価格で本格フレンチ料理を提供するために、パリの名店『サンドランス』で学んだ最新技術を取り入れているのだとか。

もちろんこれは兼子シェフだからこそできることではあるが、最近はテクノロジーの進歩によりさまざまサービス・ツールが生まれている。それらを上手に用いればコストを圧縮することができるし、浮いた費用を料理のクオリティを高めるために投資することも可能だ。5,000円をキー・プライスにしたコース料理を検討する場合は、金額に見合う内容にするのではなく、なるべくコストを圧縮しながら、品質を上げる工夫をしていきたいものだ。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。