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空前のかき氷ブームはこうして生まれた。天然氷とフワフワ食感、そして蒼井優

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飲食店で働く食に詳しい方なら“何を今さら”という感想を抱くかもしれないが、巷は空前の「かき氷ブーム」で賑わっている。昨年、日本上陸を果たした台湾発のかき氷店『ICE MONSTER』は相変わらず絶好調、かき氷専門店『yelo』も中目黒へ期間限定ショップをオープンするなど勢力を拡大中だ。また、これらの専門店だけでなく、一般の飲食店でもかき氷を提供する店舗が増えてきた。

日本では古くから愛されてきたかき氷だが、なぜこのタイミングでブレイクしたのか? 今回はその秘密を探っていく。

かき氷ブームはどのように生まれた?

かき氷といえば庶民の味として親しまれ、喫茶店やファミレスといった飲食店を中心に提供されてきた。家庭用のかき氷機が安価で手に入るため、自宅でかき氷を楽しんでいる方も多いだろう。

そんな庶民の味に変化が訪れたのは1990年代。埼玉県秩父郡の『阿左美冷蔵』や栃木県日光市の『松月氷室』といった天然氷の蔵元がかき氷を販売しだしたのがきっかけとなった。これまでのシャリシャリとした食感のかき氷とは一線を画すフワフワとした食感。そしてシロップは果汁感を意識した上品な味わい。瞬く間に話題となり、かき氷の新たな魅力が世の中に浸透していった。

2000年代には天然氷を用いたこだわりのかき氷店が首都圏にも登場。藤沢『埜庵』、下北沢『しもきた茶苑大山』、十条『だるまや餅菓子店』といった名店が続々と誕生し、グルメ誌でも取り上げられるように。さらに追い風になったのが、女優・蒼井優の著書『今日も かき氷』が発売され話題を呼んだことだ。2011年に発表されたこの本では、スイーツ好きとして知られる彼女が足繁く通うかき氷店を惜しげもなく披露。自然体でかき氷を食べる彼女の姿に、多くの若い女性が夢中になった。

若い女性を味方につけられればあとは早い。ブームの火種は徐々に大きくなり全国へと飛び火。名店にはさらなる行列ができ、そして一般的な飲食店でも“こだわりかき氷”が開発されるように。『ICE MONSTER』が昨年オープンする頃には、かき氷ブームは確固たるものへとなっていた。

美味しいかき氷に「天然氷」が欠かせない理由

このかき氷ブームを支えているのが天然氷の存在だ。なぜ天然氷と冷凍庫で作られた氷では味に違いが生まれるのだろう?

天然氷とは文字通り自然の寒さだけで凍らせた氷のこと。冷凍庫とは違い何日もかけてゆっくりと凍らせるので、その過程でミネラルや空気といった不純物を押し出すことができる。不純物が少ないと硬く溶けにくい氷になるのだが、今、人気を博しているフワフワのかき氷には、この硬くて溶けにくい氷が必要不可欠なのだ。

氷は硬さが保たれていればいるほど細かく削ることができる。つまりパウダーのようなサラサラのかき氷が作れるというわけだ。また、氷の温度は冷凍庫から取り出した状態だとマイナス18度ぐらいが一般的なのだが、天然氷は溶けにくいためマイナス4度ぐらいまで温めることができる。こうして氷の温度を緩めることで口溶けがよくなり、フワフワとした柔らかい食感が味わえるようになるのだ。

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さらに昨今のかき氷ブームの要因として欠かせないのがシロップの多様性だろう。かつてのシロップといえばイチゴやメロンといったフルーツ系、しかも無果汁のものがほとんどだった。しかし最近は果汁入りのシロップが用いられるようになったほか、ティラミスなどのドルチェ系シロップやホイップなどを用いる店舗も増えてきた。こうして多種多様なかき氷が誕生しているのも、ブームに拍車をかける大きな要因となっている。

集客効果抜群の個性あふれるかき氷

かき氷は専門店の専売特許かというと、そういうわけではない。どんな店舗でも「夏の目玉メニュー」として売り出すことが可能だ。

最近は“大人のかき氷”をテーマにする店舗が多く、例えば虎ノ門ヒルズにある『ピルエット』では、ロゼワインと桃のリキュールを用いた夏らしいかき氷を提供。また銀座『麦酒屋るぷりん』でも、有機レモンや青梅、番茶といった渋い素材をシロップとして利用。お酒のあとにも楽しめるかき氷を提案している。

さらに食後のかき氷でいえば、ラーメンの締めにかき氷を提供する店舗が増えつつある。旗の台『ブン ブン ブラウ カフェ ウィズ ビーハイヴ』では、「アグー豚醤油ラーメン」や「スーパーフードラーメン」といったこだわりラーメンを提供しながら、同時にイチゴエスプーマソースを用いたかき氷も提供。ラーメンもかき氷も手を抜かない本気さに、多くのグルメファンが虜になっている。また武蔵小山『はいむる珈琲店』でもラーメンと同時にかき氷を提供。「らーかき」というキャッチーな合言葉を用いているのも面白い。

このように、各店ともオリジナリティあふれるかき氷で真夏の集客を図っているようだ。8月は飲食店にとって難しい時期ではあるが、トレンドを上手に取り入れれば新規客獲得にも繋がるはず。かき氷ブームは今年だけでなく来年以降も続いていく気配があるので、今のうちに取り入れてみてはいかがだろうか。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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