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三ツ星店で学んだ弟子たちの“今”。『カンテサンス』出身者の活躍を追う

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日本には「巨匠」、「カリスマ」と称される料理人が幾人かいる。日本のグルメシーンを牽引する彼らのもとには数多くの教え子が集い、一流の技術を習得するために日夜、修行に励む。そして技術を習得したら、今度は自分の花を咲かせるべく開業して一心不乱に働く。こうして巨匠の味は弟子へと受け継がれ、また違う場所で花開いていくわけだが、今回はこの“巨匠の味”がどのように受け継がれ、そして発展しているのか、その系譜を紹介していく。

老舗フレンチ店『銀座レカン』出身の個性豊かなシェフたち

『銀座レカン』の創業は1974年。初代料理長はロベルト・カイヨ氏、2代目は現在『シェ・イノ』のオーナーを務める井上旭氏とそうそうたる顔ぶれだ。そして3代目の城悦男氏は、弱冠30歳にしてレカンのシェフに就任。バブル時代には『マキシム・ド・パリ』と並ぶ“予約の取れない店”に押し上げた立役者だ。TV番組「料理の鉄人」では鉄人を破り、“ソースの城”という称号も得た。

『レカン』のシェフを16年間務めた城シェフは、その後、六本木『ヴァンサン』のオーナーシェフとなり、これまで培った正統派フレンチを提供し続けている。

一方の城シェフの弟子たちはどうか。『レカン』時代は、仕事に厳しくスタッフにも常に最高の仕事を要求したというが……。

■高良康之氏……『レカン』現料理長として厨房を預かる。正統フレンチに加え、「鮎のリエット」といった日本独自の食材を用いたメニューでも高い評価を得る。

■横山浩氏……『ブラッスリーレカン』料理長。正統派フレンチの基本をふまえたカジュアルフレンチを提供している。価格を抑えた分、シェフの遊び心もときおり垣間見える。

『レカン』出身のシェフで活躍中の方はまだまだいる。何名かご紹介しよう。

■十時亨氏……『GINZA TOTOKI』オーナーシェフ。1992年から11年レカンの料理長を務めた。伝統を基礎に、国産干しアワビやジビエなどの素材を主役に現代的なアレンジを施し、『レカン』時代よりもトガッた個性を打ち出している。

■橋本新一氏……『レストラン ハシモト』オーナーシェフ。フォアグラ、鴨などを用いた正統派フレンチをリーズナブルに提供している。

■小山英勝氏……『ストラスブール』オーナーシェフ。お値打ち価格のフレンチを堪能できる人気店を経営。

『レカン』出身のシェフたちはそれぞれに独自のスタイルで活躍しているが、“妥協のないソースの味”はレカンのDNAを感じさせる共通点といえる。

王道フレンチ『アピシウス』からも名シェフが続々と誕生

『レカン』と同じく銀座にある『アピシウス』。『レカン』が“時代を牽引した名レストラン”であるのに対して、『アピシウス』は“常に王道を歩み続けている老舗店”といえる。その礎となったのは、「ウミガメのスープ」をはじめとしたスペシャリテを創出した故・高橋徳男シェフ。現在、同店料理長を務める岩元学シェフは、伝統の味とレシピを忠実に再現するとともに、「ブイヤベース アピシウス風」など新たな一皿も開発している。

では、『アピスウス』出身のシェフを何名か紹介していこう。

■北岡飛鳥氏……『ラ・カンパーニュ』シェフ。野菜を自在に操る人気シェフである北岡氏も『アピシウス』で修業した一人。

■小林定氏……『レゼールデカー』オーナーシェフ。『アピシウス』で料理長を務めたあとにこの店をオープン。ここには同じく『アピシウス』出身で若手の渋谷恭平氏も在籍。老舗店での経験を踏まえ、脂の乗り切った腕前を存分にふるい、“本当に表現したかったフレンチの姿”を体現している。

『カンテサンス』からは岸田イズムを継承する若手シェフが!

9年連続ミシュラン三ツ星獲得の超人気フレンチレストラン『カンテサンス』。そのオーナーシェフとして腕をふるう岸田周三氏は、まだ40代前半。同店オープン翌年、ミシュラン三ツ星を最年少で獲得したときは30代前半の若さだった。

『カンテサンス』のフレンチの特徴を端的にいえば、“イノベーション”だろうか。今も岸田氏の料理は立ち止まることなく進化し続けている。自分に厳しく、求道者のように日々仕事に打ち込み、スタッフへの要求も高いため、長続きしないスタッフも多いという。そんな環境で鍛えられ、師匠と同様に30代前半で独立の道を歩むシェフも少なくない。

■目黒浩太郎氏……『アビス』オーナーシェフ。30歳までに独立を目指し、渡仏修業の後『カンテサンス』を経て2015年に『アビス』をオープン。「魚介フレンチ」で新境地を拓いている。

■加瀬文也氏……『オルグイユ』オーナーシェフ。シャンパーニュを主役に、お任せのコースを提供。ひとつの素材に対して異なる火入れ・調理を施した料理を一皿のなかに盛り付けるという革新性を発揮しつつ、多くの美食家たちを虜にしている。

■後藤祐輔氏……『アムール』シェフ。四季の素材を活かした華やかなフレンチが得意。

■川手寛康氏……『フロリレージュ』オーナーシェフ。和の素材と意匠をふんだんに取り入れたフレンチで予約困難店の地位を確立。

『カンテサンス』出身のシェフの共通点は、師匠・岸田氏の妥協なく高みを目指す姿勢に強く影響を受けていること。そして、どの店舗もしっかりと成功を収めているところはさすがだ。これからも日本のフレンチ界のけん引役となっていきそうだ。

さて今回は、フランス料理における師匠と弟子の系譜をご紹介した。最近は高級店で学んだ料理人が少しカジュアルな店を開くという傾向も見られる。この辺はまたの機会に詳しく紹介していきたい。

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。