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食×カルチャーが集客に繋がる!? 「映画」や「鉄道」を武器に店づくりを行う良店が増加中

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『蔦屋書店』が代官山にオープンしたのは約5年前。通常の書店では過度な立ち読みは敬遠されるのが常識だが、それを覆し、購入前の本を読みながらお茶を飲めるスペースを作ったことは画期的だった。“本×飲食”という新たなムーブメントを作り、今や“滞在型書店”の先駆けとして全国にその名を轟かせている。

ここ数年、書店に限らず、動物と触れ合えるカフェや、イベント・セミナーを受講できるカフェなど、食とカルチャーを融合させた飲食店が増えてきた。今回は、こうした“食×カルチャー”をコンセプトにした飲食店にフォーカスし、そのコンセプトやスタイルから今後の飲食店の可能性を考えてみたい。

業態としてはカフェが適している?

■ものづくり×飲食店
近年、創作スペース+カフェというスタイルの店舗も増えてきている。『Fab Cafe Tokyo』では、個人で所有することが難しいレーザーカッターや3Dプリンタなどの機器を設置し、創作アトリエとしての機能を備える一方で、本格的なコーヒーやスイーツなどを楽しめるスペースも併設。人気クリエイターのワークショプや講演なども開催し、クリエイターとファンとの交流の場所としても機能している。

ほかにも、仙川の『ミシンカフェ&ラウンジnico』は、ロックミシンや職業用ミシンなど本格的なミシンを多数用意。ミシンの貸し出しだけでなく、生地やボタンの販売や、必要であればアドバイザーのアドバイス付きのプランも選べるなど、ものづくり×飲食店の可能性を感じる店舗ではないだろうか。

■映画×飲食店
映画館で映画を観るときは飲食や私語を控えなければならないイメージだが、映画を観ながら食事ができるシネマカフェや、夏場ならではの野外シネマなど、食事や会話とともに映画を楽しむスペースが徐々に増えつつある。なかでも三田の『Cafe WASUGAZEN』は、映画の予告編を制作する会社がプロデュースしているカフェ。映画の本編ではなく、最新映画の予告編が見られるユニークなカフェとして人気だ。

■鉄道×飲食店
根強い人気を誇る鉄道関係のカルチャー。「撮り鉄」「乗り鉄」など、ジャンルに名称が生まれるほどの幅広さも魅力の一つかもしれない。鉄道関係のカルチャーと飲食店の関係はこれまでにもさまざまな形で存在してきた。鉄道模型のジオラマが店内を駆け巡るレストランや、実際の列車のシートに座って食事ができる飲食店など、趣味としての幅の広さが飲食店との融合の形にも広がりを見せているのではないだろうか。

かつての「万世橋駅」の面影をそのまま生かした商業施設「マーチエキュート神田万世橋」にある『N3331』は、ガラス張りの店内の両側に列車が走る姿を間近に見ることができる“世界で最も電車に近いカフェ&バー(『N3331』ホームページより)”だ。他にないロケーションは趣味人でなくとも一度は観てみたい光景といえる。ロケーションは飲食店にとって重要な要素の一つだが、高層ビルからの夜景だけではない斬新なロケーションの形が今後も拡充するかもしれない。

“専門性の高さ”が集客に繋がる

■インテリア×飲食店
さきほどの『Fab Cafe Tokyo』や『ミシンカフェ&ラウンジnico』のように、わざわざその場所に行って使いたいものがその店舗の看板になるというケースは他にもある。渋谷のカフェ『Seat mania』は、世界各国の名作と呼ばれる椅子を集めたカフェ。美術館に並ぶような名作の椅子に実際に座りながら、食事を楽しむことができる。カフェとインテリアは最も自然なかたちのカルチャーと飲食店の融合と言っても良いかもしれないが、『Seat mania』のように、ある一点にフォーカスして趣味性を高めることが、店舗の個性として生きる場合もある。椅子に限らず、こういったこだわりは店づくりのヒントになるのではないだろうか。

■アウトドア×飲食店
ランニングや登山、サイクリングなどのアウトドアカルチャーにも飲食店が徐々に参画し始め、人気が定着し始めている。レンタルサイクルができる渋谷の『Pillar Café』は、カフェでの利用料金に応じてレンタル時間が決まるユニークなシステムや、さまざまなタイプの自転車を選ぶことができるのも魅力。またアウトドアをコンセプトにした水道橋の『Base camp』はダッチオーブンを使った料理や自家製ベーコンなどアウトドア感満載の料理が食べられるほか、食事と共にフライフィッシングに欠かせない毛ばりを作れるユニークなイベントも開催。趣味を通してさまざまな人の流れを生むことができそうだ。

さて、今回は“食×カルチャー”をコンセプトにした飲食店をいくつか紹介した。映画や音楽などの上映には著作権の許諾申請が必要であったり、機材等のレンタルが必要なケースもある。場合によっては大きなプロジェクトとして綿密な計画を練り、また専門家のアドバイスが必要なものもあるだろう。しかし、趣味の領域を飲食店という空間に落とし込むかたちで店舗の個性を活性化させることは決して難しくないだろう。まずは単発イベントを企画してみるなど、カルチャーというキーワードを今後の店舗づくりに生かしてみてはいかがだろうか。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。