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10年後の飲食業界を大胆に予想! 「FOODiT TOKYO」が考える未来の外食産業

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ゼットン・稲本健一会長、串カツ田中・貫 啓二社長など飲食業界をリードする経営者たちが多数参加した

8月22日、トレタ主催のイベント「FOODiT TOKYO 2016」が開催された。これは“外食産業の未来を考える”というコンセプトのもと開催されたイベントで、業界をリードする経営者たちが登壇し、それぞれの知見をもとに飲食業界の未来について語り合った。

じつに13ものセッションが行われたが、なかでも最終プログラムとして開催された「FOODiT 未来総研が大胆予測! 外食産業の10年後はこうなる」というトークセッションは大変興味深い内容で、まさに“飲食業界の未来”を感じさせるものだった。ここではその内容を詳しく紹介していく。

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トークセッション「外食産業の10年後はこうなる」の様子

10年後の飲食業界にはアルコールを出さない居酒屋が誕生する!?

トークセッションに登壇したのはトレタ代表の中村仁氏、『WIRED CAFE』などの運営で知られるカフェ・カンパニー代表の楠本修二郎氏、そして飲食店プロデュースを行っているカゲン取締役の子安大輔氏。

まずは子安氏とトレタのマーケティングチームが予測した“外食産業の10年後”が発表された。以下、配布資料「外食産業の10年後予想レポート」を要約して紹介する。

「すでに日本の外食産業は飽和状態にあるとされている。市場規模は1997年の29兆円をピークに、以降は年々下降傾向。ここ数年はピーク時のおよそ2割減の23~24兆円で推移、2020年には1割、2025年には2割ほどの縮小が予想されている。

では今後、どのような「社会変化」が外食産業の変化の引き金になるのか。トレタでは以下3つの変化が引き金になるのではと予想している。

1、人口動態の変化=総人口の減少、高齢者比率の上昇など
2、移動にまつわる変化=自動運転の実用化
3、健康にまつわる変化=ヘルスログサービスの一般化など

外食産業は今後、以上3つの変化が生み出す人々の意識の変化を嗅ぎ取り、サービスを開発していくことになるだろう。一例として、飲食店の収益の柱になっているアルコールに関する変化を考えてみると、自動運転の普及によって飲食機会が増える反面、リモートワークなどの増加によって“会社呑み”は減少。結果として、飲食機会の減少に伴ってアルコール離れは加速する。また、健康面での意識変化により、嫌アルコール層が社会的に強い発言力を持つ可能性がある。そうなると、タバコがそうであったように、アルコールメニューが存在しない居酒屋という、現在では測れないような業態が誕生するかもしれない」
※配布資料「外食産業の10年後予想レポート」より

アルコールが飲めない居酒屋が誕生するとはなんとも大胆な予想だが、過去10年で喫煙不可の飲食店が急増したことを考えると、社会の動向によってはあり得る話なのかもしれない。

また、今回の予想では、ロボット、IoT、AIの進化によって、外食産業が生み出す商品=「サービス」にさまざまな変化が訪れるとされていた。どのような変化が起きるのか、資料からご紹介したい。

■調理ロボットの進化
調理の下処理のような比較的安易な作業については、どんどんロボットに置き換えられる。熟練技術についても、ベテラン調理人の高度な調理技術をデジタルデータ化することで、ゆくゆくは調理ロボットも再現できるようになる。

■デジタル化された調理情報の販売
高度な調理技術を再現できる調理ロボットが開発され、それが低価格化していくと、今度は家庭への普及が始まる。家庭ではデジタル化された調理情報を購入することで、プロの味が再現できるように。プロ調理人はこの情報を販売することで収益を得ることが可能になる。

■飲食行動をリコメンデーションするサービスが登場
ヘルスログサービスがさらに進化し、最適な食事を教えてくれる「リコメンデーションサービス」の提供が始まる。例えば適量を超えた飲酒を行うと警告が発せられたり、翌日の体調不良を予防するためのアラートが得られたりする。

■飲食店以外の場所で高クオリティーな食事が楽しめるように
調理ロボットなどの進化により、場所の制約なく高いクオリティーの飲食サービスが受けられるようになる。初期段階としてはマンションの共用施設や保養施設のパブリックスペース、コンビニエンスストアなど。やがて一般家庭においても、有名シェフの技術で調理された料理が手軽に食べられるようになっていく。

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カフェ・カンパニー代表・楠本修二郎氏

10年後の飲食業界はテクノロジーの進化によりドラスティックな変化を遂げる

予想レポートが発表されたあとは、上記3名によるトークセッションがスタート。そこで発せられた「未来への提言」をいくつか紹介したい。まずはカフェ・カンパニー・楠本氏が語った人口減少による影響について。

「今、10年後の話をしていますけど、100年後どうなるかを考えたら、総人口でいうと4000~5000万人まで減少してしまうと予測されています。そういう方向に向かっているんだって考えると暗い気持ちになりますけど、一方で外国人観光客の来日数はすごい勢いで伸びているわけです。政府は2020年に4000万人、2030年には6000万人を目指していこうと目標を立てている。これは飲食業界にとってもすごいインパクトになりますよ。人口は少しずつ減っていくけど、でもその分、海外からたくさんのお客様がやってくる。そういう風にポジティブな要素をいかに捉えていくかがこれからは大切ですね」(カフェ・カンパニー・楠本修二郎氏)

確かに人口の減少は飲食業界にとってマイナスの影響を与えてしまうだろう。しかし、悲観して何も手を打たないでいるよりは、ほかのプラス要素を見つけて前向きに攻めた方が未来は明るい。楠本氏が語る通り、ポジティブさを持つことがこれからの飲食業界には求められそうだ。

続いて、ロボットやIoTの進化について。

「調理情報がデジタル化されて、世界中で同じ料理が作れるようになる。これって料理人にとってはすごく夢のある話ですよね。データ化した調理情報を世界中に販売することができるわけですから」(トレタ中村 仁氏)

「音楽でいうとDJという職業がありますけど、今後は“フードDJ”みたいな職業が誕生するかもしれません。データ化された料理技術、データ化された空間を再現してお客様をもてなす。いわゆる食のキュレーションですよね」(カゲン・子安大輔氏)

一方で楠本氏は、テクノロジーの進化が食の世界を変えると認めつつも、同時に意識的に「街づくり」を行っていくことが飲食業界にとって大切だと唱える。

「スペインに人口15万人程度のサン・セバスティアンという街があります。そこに“美食倶楽部”というコミュニティーがあるんですけど、全部で60ぐらいのコミュニティーがあるのかな。一流シェフからビジネスマンまで、みんなフラットな関係性で食を追及するコミュニティーなんですけど、料理を作って、上手くできたらレシピをシェアする。そうやって食の知識や技術を街全体で高めていったんです。すると、現在はミシュランの星を獲得するレストランがたくさん誕生して“美食の都”なんて言われています。テクノロジーの進化や時代の変化についていくことも大切だけど、“この街で何か面白いことやろうぜ!”ってみんなで力を合わせることも大切なんじゃないかな。個店同士で利益を奪い合うより、地域としてブランディングを考えていく。“おらが街”ってことですよ」

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カゲン取締役・子安大輔氏

アンテナを張り、時代の変化を感じ取ることが大切

このトークセッションの中で、カゲン・子安氏は自身が予想した未来についてこのような感想を述べていた。

「今回予想した未来は、10年後ではないにしろ、必ずやってくるものだと考えています。最近は車の自動運転について度々話題になりますけど、飲食業界に携わる方は、これらテクノロジーの進化を自分ごとのように捉えていないような気がします。例えば自動運転が実現すれば、必ずデリバリー市場に影響を与えますし、そう考えると飲食業界にも関係する大切なテクノロジーなんです。これら最新テクノロジーの話を遠い業界のものだと敬遠せずに、ぜひ積極的に感心を持っていただけたらなと思います」

10年前は路上でビラ配りを行っていた店舗が、今ではグルメサイトで集客を行うようになり、また手書きだった予約台帳も、トレタのようなクラウド型予約台帳に進化した。この10年で、飲食店の経営はかなりの変化を遂げている。さらにこれから10年、その変化の速度はさらに増していくだろう。飲食店は毎日の営業が勝負だとはいえども、劇的に変化する未来についていくためにも、常にアンテナを張っておく必要がありそうだ。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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