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10月に実施される「最低賃金の引き上げ」。飲食店への影響と、その対策法を考える

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12月の繁忙期に向けて人材確保が始まりつつあるこの時期、一方で気になるのが10月から改正される最低賃金引き上げのニュースではないだろうか。過去最高の値上げ幅と言われている今回の引き上げは、東京都で時間額907円から932円へと大幅なアップになる。

「雇用促進による経済効果」という当初の目的が果たせるか否か、各方面でさまざまな論議が繰り広げられているところではあるが、今回はより具体的に、飲食店への影響にフォーカスし起こりうる事態とその対策について考えてみたい。

働く側にとっても悩みどころ、「103万円の壁」をどう乗り切るか

働く側の視点で考えると一見嬉しいニュースにみえる最低賃金の底上げだが、例えばこんなケースも考えられる。扶養範囲内で働く主婦層にとっては税金控除のボーダーとなる、いわゆる103万円、130万円の壁をより気にしなければならなくなるのだ。

時給が上がれば、当然収入も上がる。「103万円、130万円の壁」を気にして、やむなくシフトを減らさなくてはいけないケースも出てくるだろう。そうすると雇用する側にとってみればランチタイムの有力な働き手が減ってしまう結果にもなりうる。現在、そうしたスタッフをアルバイトとして雇っている店舗は、早めにコミュニケーションをとり今後のスケジュールを調整したり、必要であれば繁忙期前に向けて新たな人材を確保しておきたい。

FLコストのバランスが崩れる懸念

飲食店経営の鍵を握るFLコスト。食材費と人件費の2つから構成されるFLコストだが、賃金アップによって人件費がかさむと、もう一方の食材費を圧迫することになる。そしてコストカットを意識するあまり仕入れる食材の質を落としてしまうと、提供する料理の質にも影響してしまい、客足が遠のいてしまうことに繋がりかねない。この悪循環に陥る前に、しっかりと対策を練っておくことが求められそうだ。

大切なのはFLコストの質を考えること。例えば、食材の仕入れも、単に安価なものを仕入れてコストカットするのではなく、日々のオーダーの傾向からメニューを精査し、不要な食材を減らしたり、仕入れのロットを見直してフードロスを減らす努力をするのも一案だろう。一方、人件費は費用をかける分だけ優秀な人材を集められるチャンスだと捉えてみてはいかがだろうか。給与の高さは働く側のモチベーションになる。この機会にきちんと人材育成をし、無駄の少ないシフトを組めるカタチを整えることができれば、余分なコストがかさむ事態を防げる。サービス向上にもつながるだろう。

業務効率化ツールを賢く使って人で不足を乗り切る!

今回の最低賃金の引き上げにより、パートやアルバイトのスタッフを早上がりさせる店舗も出てくるだろう。しかし、スタッフを減らしたことでオーダーまでに時間がかかりすぎたり、会計時のタイミングが遅かったりとマイナスポイントが露出してしまっては元も子もない。

こうした事態を防ぐために考えておきたいのが、人手不足を補ってくれるシステムの導入だ。オーダーシステムや予約システム、売上管理システムなどを導入しておけばイージーミスが減り、開店時間外の業務の時間短縮にもなるだろう。この機会に、店舗に合ったシステムの導入を検討してみてはいかがだろうか。

最低賃金の引き上げは、飲食店にとって考えるべき要素が多い。今後も格差是正を目的とした賃金アップは続くと思われ、現時点では2020年までに最低賃金を時間額1,000円まで引き上げる目標が掲げられているそうだ。

その都度経営者は悩ましい事態に直面することになるだろうが、先ほども述べたフードロスヘの取り組みや、システムの導入、人材育成など、努力と工夫次第で、コストバランスを整え売上向上に繋がるようにすることは十分に可能だ。今回の賃金引き上げを機に改めて各コストのかけるべきところと省くべきところとを考えてみてはいかがだろうか。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。