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口コミサイトの点数なんて関係ない? 一見普通でも大繁盛する飲食店の「ヒミツ」を聞いた

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宴会客を巧みに集客し繁盛する五反田の『居酒屋いもたろう』

あなたの周りに、「一見普通なのに、なぜかモテる人」はいないだろうか。“なんであいつが?”と思いつつも、じっくり観察してみるとそこには必ずモテる理由が見えてくる。飲食店でも同じだ。「一見なんでもない店なのに、いつも繁盛している」という店がある。今回はそんなお店を探し出し、直撃取材を試みた。

まず難しいのが店選びだ。今回は「なぜか」繁盛している店を探したいので、以下の条件を設けた。

■口コミサイトで点数が高くない
口コミサイトで点数が高い店は、すでに客から良い評価を受けており繁盛する理由もわかりやすいため除外。

■料理の特徴がわかりづらい
たとえば「九州料理」や「北海道産直」などを“売り”にした居酒屋は、魅力が明確なので除外。

■個人店である
宣伝に大きな費用を掛けられるチェーン店は除外。

■駅からのアクセスがよくない
駅からすぐ、大通り沿いの店は除外。

これらの条件で繁盛店を探すのはかなり困難だったが、“ここは該当するかも!”という店をなんとか見つけた。五反田駅徒歩5分の『居酒屋いもたろう』だ。

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店内は木を基調にした落ち着いた雰囲気

五反田の喧噪を抜け、目的の店を目指す

早速行ってみることにする。お店のホームページを見ると、内装もキレイだし、入りやすそうな雰囲気ではある。しかし駅から店へと向かう道のりは、お世辞にもいい雰囲気とはいえない。五反田駅東口から繁華街を抜けて向かうのだが、この辺は風俗店が立ち並ぶエリア。その真ん中を突っ切ってネオンが途切れた場所に、その店はある。途中で道に迷うと、少しおっかない。

店はブロックの角にある路面店で、34席とこぢんまりしている。歓楽街の外れにあるこの店に、ふらりと立ち寄る人はいないだろう……という立地だ。一杯いただいてみようと入店したところ、「すみません今日は予約でいっぱいなんです」との声。火曜日18時ごろだったのだが、確かに周囲のテーブルにはすべてキレイにおしぼりや皿がセッティングされている。18時半頃には団体客が来店するということなので、事情を話したところ取材の快諾をいただき、翌日改めて伺うことにした。挨拶をして帰る際には、女子会の団体が到着してすっかり賑やかになっていた。

翌日17時過ぎに、オーナー兼料理長の武田雄氏を訪ねた。

━━今日も宴会の予約でいっぱいのようですね。今年10周年だそうですが、お店が軌道に乗ったのはいつ頃ですか?

今でこそ、この周辺には数軒の飲食店がありますが、当時は全く何もなかったんです。じつは物件を探すとき、五反田駅に近いエリアは予算的に無理でした。それでここを紹介されたんですが、周辺の店に入ってリサーチしてみたら、ソニー本社がこの奥にあり、たくさんのビジネスマンがソニー通りを通っていて。“これならいけるんじゃないか”と、この場所に決めました。そしたら予想が当たって、最初からかなりの人にご来店いただきました。

━━その後ソニーは移転してしまいましたが、跡地にもオフィスができましたからね。ところで、メニューを見ると美味しそうな料理がたくさんありますね。

個人店で仕入れにはあまりお金を掛けられませんから、ごく普通の食材を使っています。でも、美味しさと見た目、それにボリュームにはこだわって提供しています。たとえば、夏のメニューだと「とうもろこしの一本唐揚げ」が人気でした。これからの季節は、店名にちなんだ看板メニュー「いもたろう」、こちらはさつまいもの丸ごと揚げです。厳選したさつまいもを使っていて、焼酎によく合う味です。

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料理のボリュームは繁盛の鍵を握る大切なポイント

宴会需要に応えることで“繁盛店”に

━━宴会の予約は多いのですか?

宴会については開店したときから、とにかく一生懸命やっています。宴会料理は満足していただける味とボリュームを心がけ、料理や飲み物もスピーディーに提供します。自分でも他店の宴会料理を知るために食べに行くのですが、“おいしいけどボリュームが少ないかな”“写真と違うな”など、がっかりしてしまうときがあります。それだけはないようにと考えています。

━━火曜日も水曜日も宴会の予約がいっぱいなのは、すごいですね。ところで、宴会と通常のお客様の客単価はどれくらいですか?

宴会で4000~4500円、通常で3500~4000円くらいです。

━━それは、かなりしっかりと料金をいただけていますね。

うちは値段も特別安くはないんですが、その価格に見合った“満足”をしていただけるように頑張っています。小さな店なので、お客様の顔や名前もできるだけ覚えます。

━━お客様の嫌いな食べ物や好きなお酒も覚えておくのですね。

そうですね。お酒を飲みながら水も欲しいお客様には言われなくても水をお出しするとか。お客様のリクエストに応えて焼酎を仕入れ、それをボトルキープしていただくとか。あとは厨房に余裕があるときは裏メニューを提供したり、できる限りのおもてなしをするようにしています。ほかには、20名様以上で貸し切りができるのですが、これも人気があります。会社の宴会にちょうど手頃のようです。

━━繁盛されていますが、困ったことはありますか?

宴会が多いので、キャンセルになったときが痛いです。特に連絡がないときは困ります。

━━でも、常連さんが多いようですから、他店よりはドタキャンされる確率は低いのではないでしょうか。これから徐々に繁忙期を迎えますので、ますます忙しくなっていきそうですね。今日はありがとうございました。

“なぜ繁盛しているのだろう?”という疑問を持って取材をしたが、その答えは明確だった。一見すると条件の悪い立地だが、じつは客を呼び込める場所だったこと。そして宴会のお客様がリピートしてくれるよう、宴会に力を入れていること。さらに、お客様ひとりひとりにきめ細かく接客していること。

ただ、こう言っては失礼なのだが、“決め手はコレ!”というものはないようにも思われた。しかし来店客にとっては “なんとなくまた行きたくなる”、そんな感想を抱く「丁度よさ」が『いもたろう』にはあるのだろう。これはこれで、繁盛する大切な要素といえるのではないだろうか。

“ぜひ次はプライベートで飲みに来よう”と思いながら、取材を終了した。

『居酒屋いもたろう』
住所/東京都品川区東五反田1-18-5 宮島ビル1F
電話番号/03-5789-9191
営業時間/11:30~L.O.14:00(月~金)、17:00~L.O.23:00
定休日/無
席数/34
http://www.imotaro.jp/

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。