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人件費率は驚異の20%。繁盛店『ビストロ・ヴァンテオ』に聞くコスト削減術

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人気メニュー「岩手短角牛熟成肉ステーキ」は100g・1000円と、コスパ抜群のメニュー

渋谷『ビストロ・ヴァンテオ』の成功を皮切りに、中目黒『2ヴァンテオ』、新橋『3ヴァンテオ』・『4ヴァンテオ』、そして恵比寿『ガレットスタンド』と、順調に店舗拡大を続ける「ヴァンテオグループ」。オーナーの仲道敏夫氏は、老舗フレンチ『シェ・イノ』や『ボン・ファム』で修業を重ねてきた人物。一流の味を提供できる腕を持ちながら、“もっと気軽にフレンチを楽しめる店を”との想いから、価格帯を抑えたバルスタイルの店で独立した。

価格は控えめでも味は本格的。中目黒や恵比寿ではグルメ志向の強い高感度な人たちに選ばれ、一方新橋ではサラリーマンの支持を集めることに成功。いずれも支持を得た理由には、そのコストパフォーマンスの良さが挙げられる。

いかにしてこの抜群のコストパフォーマンスを実現しているのか? 恐らく削るべきコストをしっかりと削り、そのうえで「低価格・高品質」を実現しているはずだ。その秘密を探るべく、渋谷『ビストロ・ヴァンテオ』で仲道氏に話を伺った。

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オーナー・仲道敏夫氏

一番コスト削減ができているのは「人件費」

━━今回は『ヴァンテオ』がなぜ抜群のコストパフォーマンスを実現しているのか、「コスト削減術」を中心にお話を伺いたいと思います。お店の料理を確認すると、『ビストロ・ヴァンテオ』の「岩手短角牛熟成肉ステーキ」が100g・1000円だったり、『3ヴァンテオ』『ガレットスタンド』の国産そば粉ガレットが500円だったりと、上質な素材をリーズナブルに味わえるので、食材についてはコストをしっかりと掛けていることがわかります。食材以外の経費の中で、コスト削減に力を入れているものはありますか?

人件費ですね。

━━なるほど、具体的にはどのように削減しているのですか?

うちは、スタッフ全員が料理をします。厨房スタッフとホールスタッフの区別がないんです。このことにより、他店なら3人程度のところを2.5人平均でやっています。

━━その人数で、忙しい時間帯は大丈夫なのですか?

こちらの渋谷店の場合は26席と小さめなこともあり、厨房からフロアにも目が届きます。3人いれば十分にサービスも回していけます。

━━スタッフの方は大変な部分もありますが、料理とサービスを同時に習得することができ、将来の独立を目指す人には望ましい環境といえそうですね。

そうですね。私と一緒に渋谷店で働いたスタッフたちが、2店舗目以降の店長となっています。

━━ちなみに支出のうち、人件費に掛かる割合はどれぐらいですか?

20%です。

━━通常25~30%とされているのに凄いですね!

切り詰められる部分は徹底して節約

━━食材については最後にお聞きすることにして、その他の経費について伺います。光熱費などはいかがでしょう?

光熱費、消耗品費などは意識をしていないと意外にかさんでしまいますので、水道・電気・ガスはムダ使いがないようにスタッフにも徹底してもらっています。その他の経費についても、細かいところまでチェックしてできる限り節約しています。

━━削減できる部分はとことん切り詰めるのですね。家賃についてはいかがですか?

家賃については店によって異なります。新しいビルに入っている中目黒と恵比寿は少し高くなっていますが、他の店舗は抑えています。特に新橋店は、相場よりもいい条件で借りることができたと思います。

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『ガレットスタンド』のガレットは店内の石臼で挽いたそば粉を使用

食材コストは店舗数が増えたことで減らせるようになった

━━『ヴァンテオ』はお肉のメニューが非常にお値打ちですが、食材仕入れの工夫はありますか?

店舗数が4店舗になってから、牛肉の一頭買いができるようになりました。しかし以前は、いいものを安く仕入れるために非常に苦労していました。いい食材を探し回ったり、スポット買いをしたりしていましたが、思うように仕入れられないこともありました。

━━4店舗になってようやくスケールメリットが出てきたのですね。

そうですね、ワインなどのドリンク類も、まとめて安く仕入れられるようになりました。

━━ほかに、複数店舗になって変わったことはありますか?

渋谷店をセントラルキッチンとして機能させ、シャルキュトリーなどをまとめ作りして各店舗に届けています。

━━余った食材の活用はどうしていますか?

ランチをやっているので、余った肉はハンバーグで提供しています。

━━それぞれの店舗で「熟成肉」「牡蠣」「ガレット」など、“売り”となる料理がはっきりしている分、メニューの品数は少なめに絞り込んでいるように感じます。ちなみにメニューの価格構成についてはどのような方針ですか?

安いものは安く適正価格で提供し、「熟成肉のステーキ」のような食材費が高いメニューも、できるだけ価格を抑えて提供しています。メインディッシュの注文は、大体1テーブルに1皿。もちろん、ほかの料理やドリンクも注文されますので、それを見込んでメインディッシュの価格を設定しています。

━━現在の原価率はどれくらいですか?

35%から40%、もしかしたら40%以上かもしれません。

━━一般的な数値と比べるとやはり高いですね。人件費や光熱費などの抑えるべき経費は抑え、食材にはしっかりとコストを掛ける。「ヴァンテオグループ」のコスパの良さはこうして成り立っているのですね。お客様の満足度が想像できます。今日はありがとうございました。

■標準的な店舗のコスト構成と「ヴァンテオグループ」との比較
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“新橋×ワインコイン×ガレット”といった意外性のある戦略が話題となり、ますます勢いに乗っている「ヴァンテオグループ」。新しいチャレンジで一躍、注目を集めるオーナー仲道氏だが、その裏には「食材にはしっかりとコストをかける」「その他の経費はできるだけ節約」など、コストに関する明確な指針があった。「低価格・高品質」を実現させる好循環が生まれているようだ。次はどこに、どんな“ヴァンテオ”が登場するのか、今後の店舗展開が楽しみだ。

『ビストロ・ヴァンテオ』
住所/東京都渋谷区道玄坂1-14-9 ソシアル道玄坂101
電話番号/03-3463-9331
営業時間/18:00~L.O.23:30
定休日/無休
席数/26席
http://vintheo.com/

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ほんだこはだ

ライター: ほんだこはだ

グルメ、ライフスタイル、旅、恋愛、まちづくりなどの記事を各種サイトに執筆中。大手グルメサイト、ローカルビジネスサイトで多数の飲食店取材を経験。オシャレ食材を家庭料理にして食べるのが趣味。