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ファミリー客に選ばれる飲食店はどこが違う? 「子連れOK」のフレンチ店に対策法を聞いた

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子ども連れもOKなフレンチレストラン『ル・クロ・ド・クロ』

小さな子どもを連れた家族は、周囲への気兼ねから外食を控える傾向がある。しかし「たまには家族みんなで外食したい」「お祝いの席をみんなで囲みたい」という潜在的なニーズは高い。そこで今回は、“赤ちゃんからお年寄りまで通えるフレンチ”として定評のある大阪の『Le Clos de Kuro(ル・クロ・ド・クロ)』を取材。店舗マネージャーの山口幸也さんに、その施策を伺った。

きめ細やかな心遣いで、家族全員で食事を楽しめる機会を提供

『ル・クロ・ド・クロ』は「お箸で楽しむ、ニッポンのフレンチ」がキャッチフレーズで、乳幼児から年配客までが長時間ゆったり過ごせる店を実現している。こうしたお店作りの原点は、創業者の黒岩 功さんが、乳児を連れて外食に行ったときに、泣き声を注意され居心地の悪い思いをしたことにある。「子連れでは料理を楽しめないのか」ということに疑問を感じ、老若男女、誰もが楽しめる店を目指した。創業当初は、夫婦で0歳児を背負いながら店を切り盛りしたという。現在店舗を任されている山口さんも、3人の子を持つ父の目線で、さまざまな工夫をこらしている。具体的にはどのような施策があるのだろうか。

「当店の3階には、靴を脱いで入る和風の個室があり、そちらはファミリー客向けの作りにしています。テーブルごとにパーテーションで区切って目隠しをしているので、授乳の際にも安心ですし、周囲もファミリー客なので気兼ねなくご利用していただけます。またソファを2つ並べた簡易的なベビーベットも用意しているので、お子様を寝かせて食事することもできます」

6階建てという規模を生かし、接待などのビジネス利用客とは階層を分けることで、それぞれの話に専念できる環境を整えているのだ。フレンチレストランには珍しく、料理にお箸を添えている理由はなんだろうか?

「赤ちゃんを抱きながら、ナイフとフォークを使うのは難しいですよね。そこで、料理は食べやすいよう切り分け、箸を添えるスタイルにしています。ご年配の方にも、食べやすいと好評です」

子どもの食事はどうしているのだろうか?

「ご予約の時点で、お子様の月齢や、苦手な食材、好きな食べ物を伺い、ご要望にあわせて、キッズプレートを作っています。お子様は料理が出るのが遅いと、泣いてしまうことがありますよね。先にオーダーを聞いておくことで、お待たせせずに提供することができるのです。お子様が好きなものをたくさん用意することで『どれから食べよう?』とワクワクしてほしいと考えています。栄養にも気をつかっていますが、いちばん提供したいのは、食べる喜びや楽しさです」

子どもだけでなく、大人から来たリクエストも注文伝票に書き留め、パソコンに入力し、次回の来店時に備えるという。「おもてなし」を大事にしている同店らしい施策だ。

子ども用プレートには好物をズラりと用意する

託児付イベントを開催することで認知度アップにつなげる

同店では、月一回程度「株式会社ここるく」と提携し、託児付のイベントも開催している。6階のVIPルームをキッズルームにし、プロの保育士が子どもを預かる。その間母親に食事を楽しんでもらったり、育児相談したりする場をつくっている。どうしてこのようなイベントを始めたのだろうか。
「母親の中には、育児で孤独を感じたり、家に引きこもることでネガティブな考えを持ってしまったりする方もいます。そこで、ゆったり食事やおしゃべりを楽しめる場を提供しようと考えたのです。ここるくさんのイベントページで紹介してもらうことで、認知度も上がってきていると感じています。また、お預かりしたベビーカーが入り口にずらりと並ぶことで、通りすがりの人にも、『乳幼児歓迎なんだ』と知ってもらえる効果も実感しています」

イベントの効果もあり、平日昼の時間帯も、母親同士の集まりで埋まりやすくなったという。まず店を知ってもらう第一歩として、イベントを開催し、告知するという方法も参考にしたい。

お話を伺った山口さん(中央)とスタッフの方々。優しい笑顔で子どもたちを迎える

小さな子連れのファミリー客を集客するメリット

乳幼児のいるファミリー客を歓迎することが、経営上どのようなメリットを生んでいるだろうか。

「やはりファミリー客が増えたことですね。平日の昼や、金土日が予約で埋まりやすくなりました。また、妊娠中から来てくださったお客様が、ハーフバースデーや一歳の誕生日など、お子さんの成長とともにリピートしてくださるのが嬉しいです。結婚記念日や家族のお祝いの日に、3世代で来られる方も多いので、長い目で見ると平均単価が上がっていると感じます」

『ル・クロ・ド・クロ』のように、小さな子どもも優しく受け入れると、両親や祖父母、その友人も安心して店を訪れることができる。子どもを連れて気兼ねなく過ごせる店だと認知されれば、3世代に愛される繁盛店になるかもしれない。ベビーチェアやバウンサー、子ども用の食器を用意するだけでも喜ばれるし、店の前に「お子様連れ歓迎」の貼り紙があれば、通りすがりのファミリー客が入店しやすくなるだろう。これからファミリー客を呼び込みたいという店は、できることから少しずつ変えてみてはいかがだろうか。

『Le Clos de Kuro(ル・クロ・ド・クロ)』
住所/大阪府大阪市中央区東心斎橋1-17-9
電話番号/06-6244-9696
営業時間/11:30~14:00、18:00~22:00
定休日/月曜
席数/50
http://www.le-clos.jp/

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。