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2017年の外食トレンドを大予想! 今、飲食店に求められる5つのキーワードとは?

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飲食業界は今年もさまざまなトレンドが生まれた。いまだ衰えを知らない肉ブームはさらに深化、大衆居酒屋や横丁の人気が高まったのも今年の特徴だといえるだろう。また、「東急プラザ銀座」や新宿「ニュウマン」など新たなランドマークも相次いでオープンし、日本初上陸の海外人気店も話題を呼んだ。2017年は、どんなトレンドが生まれるのか、今回はその傾向を探ってみたい。

フレンチ、イタリアンは「本格志向のカジュアル店」が急増中

フレンチ、イタリアンなどの業態では、老舗や名店で修行したシェフが相次いで独立し話題を呼んだ。高級店のクオリティはそのままに、価格を6,000~8,000円台とリーズナブルに抑えたカジュアルさが特徴で、気負いなく本格的な味わいが楽しめるとして幅広い世代に支持されている。

代官山の焚き火イタリアン『ファロ』、広尾の『メログラーノ』、麻布十番のフレンチ『タストゥー』などがその代表だ。本格志向のカジュアル店は来年以降も増えそうなので、同業態の店舗はより個性を強めるなどして差別化を図っていく必要がありそうだ。

2016年、話題をさらった代官山『ファロ』

「ローカルエリア」はまだまだ開拓の余地あり!

個人店や専門店の盛り上がりは、ローカルエリアの地域性とも強い結びつきがあり、店と街の相性によってさまざまな可能性を生んでいる。古さと新しさが融合した「松陰神社前」、幅広い業態で名店を量産している「代々木上原」や「錦糸町」、大衆居酒屋ブームとともに再注目された、せんべろの聖地「立石」など、すでにイメージが定着しているエリアも多い。

これから注目したいのは「学芸大学」で、ビオワインや本格的なイタリアンをリーズナブルに楽しめる『リカーリカ』や衣食住のコンセプトショップ『CFPD』など、徐々に注目店も増え始めている。こうして街単位でいかにイメージを作っていくかが、これからの飲食店にとって大切な課題になるだろう。

学芸大学『リ・カーリカ』の堤 亮輔シェフ

広がりをみせる「クラフト」の世界

ここ数年、飲食業界の話題として「クラフト」というキーワードがよく挙がっている。定番となった「クラフトビール」や「クラフトチョコレート」に続き、今年は京都に日本初のクラフトジン蒸留所『京都蒸留所』ができたり、肉ブームの一端を担うシャルキュトリーも店オリジナルのものが増えつつあるなどクラフト化の動きは広がりをみせている。

こうしたクラフト化の動きは、個人店や専門店の大きな強みとなると同時に、“食”へのリテラシーが高まりつつある消費者のニーズにも見事にマッチした。食材やプロセスを尊重し、それに見合った対価を払って食事を楽しむといった気運は今後も高まりそうだ。

人気クラフトビール店、五反田『クラフトマン』

「感動や体験」を与えられる飲食店の台頭

飲食店の料理やサービスが多様化、洗練されていく中で、消費者は“美味しさ”とともに“エンターテイメント性”も求めるようになってきた。

業態としてはワイガヤ系の大衆酒場、客同士のコミュニケーションも楽しめる横丁、そして立ち飲み酒場といった具合に「酒と会話が楽しめる店」が人気を高めた。いわゆる「古き良き酒場」の雰囲気を持つ店が、中高年だけではなく若い世代にも受け入れられ始めた結果だろう。

またメニューでは、ぐるなびが主宰する『今年の一皿』で特別国際賞を受賞した「シュラスコ」が良い例だ。客の目の前で肉を切り分ける独特な供し方は高いエンターテイメント性を持っており、これを目当てに店を訪れる客も多い。今年人気を博した日本酒専門店『ジェム バイ モト』の「燗酒」もそうだ。店主である千葉麻里絵さんが客の目の前で燗酒をつける様子はライブ感たっぷりで、日本酒の奥深さを視覚的にも味わわせてくれる。こうした驚きや楽しさを与えるメニューはSNSでも反響を得やすく、それがブームに拍車をかける要因にもなっているようだ。

美味しさにプラスして“感動”や“体験”を提供できる店づくり、メニューづくりをいかに行っていくかが、2017年は大きなキーワードになっていきそうだ。

北千住の老舗酒場『千住の永見』

「中食」分野のクオリティもさらに進化の予感

共働き家庭の家事負担を軽減したり、外食より価格的にも手軽な点から、徐々に需要を伸ばしている中食分野。最近では「UberEATS」をはじめとしたデリバリーサービスが少しずつ普及し始め、飲食店でもテイクアウトに力を入れる店舗が増え始めた。その勢いは今後も加速していくだろう。

ちなみにアメリカでは、調理前の食材がすべてパッケージされ、手順どおり作ると本格的な料理が自宅で簡単に楽しめる「ミール・キット」が大人気のようで、2017年には日本でも流行ると予想されている。つまり飲食店の中食参入に“ライバル出現”というわけだ。こうした状況の中で飲食店がどのような価値を提供していけばいいか、中食分野へ参入する・しないに関わらず考えていく必要があるといえそうだ。

2017年の食トレンド、その特徴はクオリティの底上げではないだろうか。消費者からは質の高い料理をリーズナブルに提供してほしいという難易度の高い要求がなされるようになり、飲食店としてはそうした要求に応えつつ、さらに個性も打ちだしていかなければならない。どのような戦略が繁盛の道にたどり着くのか、今一度、自店の今年1年を振り返り、来年の経営に向けてブラッシュアップしてみてはいかがだろうか。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。