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飲食店の資金調達に新たな手段。今年注目を集める「ソーシャルレンディング」とは?

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Photo by iStock.com/Dutko

まだまだ知名度は低いが、2017年に急成長するのではないかと見込まれている「ソーシャルレンディング」をご存知だろうか。ソーシャルレンディングとは、お金を貸したい投資家と、借りたい企業をオンラインでマッチングさせる新しい金融サービスだ。インターネットを通して、投資家から短期間で資金を集めることができるのが特徴である。

世界におけるクラウドファンディング市場の中でも、ソーシャルレンディングの占める割合は7割近くまで達しており、国内でも「キャンプファイヤー」などの有名企業が続々と参入し、今後数千億円規模への拡大が見込まれている。

ソーシャルレンディングの仕組み

ソーシャルレンディングは、「借り手」と「貸し手」、そして双方を結びつける「ソーシャルレンディング事業者(仲介業者)」で成り立っている。お金を貸し借りする仕組みは、仲介業者によって少しずつ異なるが、基本的な流れを説明する。

1、お金を借りたいという人は、仲介業者に融資の申し込みを行う。
2、仲介業者は提出された書面や指定信用情報機構などのデータを基に審査をする。
3、審査を通過した場合、募集金額や用途、金利、返済期間などの条件がネットに公開され、募集が開始される。
4、貸し手は、条件を見て、どの借り手にいくら融資するかを決める。必要な額が集まるか、募集期間が終了すれば、集まったお金が借り手に融資される。
5、借り手は、返済期間中、締結した金銭消費貸借契約に従って毎月返済を行う。
6、貸し手に対して、手数料と源泉徴収の引かれた元本と利息が分配される。

以上が一連の流れである。ネットでお金を集める「クラウドファンディング」の一種であるため、「融資型(貸付型)クラウドファンディング」とも呼ばれている。

Photo by iStock.com/Sean_Kuma

ソーシャルレンディングの特徴

ソーシャルレンディングは、銀行に依存しない新しい資金調達法として期待されている。たとえば、起業したばかりの会社や、不動産担保を持たない会社、借りたい金額が少額の会社などは銀行から融資を受けるのが難しい。その場合、金融機関を通さずに投資家からお金を集めることができるのがソーシャルレンディングの強みだ。

また、比較的低金利でお金を借りることも可能である。一例としてmaneo社の「貸付条件表」をあげると、貸付利率は年率15%以内。事業が抱えるリスクや、不動産などの担保の有無によって決定される。返済期間は60か月以内で、基本的に毎月返済。投資家に優待券などを配布することもある。

日本と外国の大きな違い

日本と外国のソーシャルレンディングには大きな違いがある。それは「匿名性」だ。米国のレンディングクラブ社では、借り手の年収や職業、個人の信用度といった属性を、投資家がチェックして融資するかどうか決めることができる。

だが、日本では賃貸業者ではない一般人が企業にお金を貸すことは、賃貸業法上違法となる。そのため、監督官庁によって「借り手を匿名化すべき」という指導が行われた。融資先も出資者も匿名にせざるを得ないため、日本では仲介業者が間に立って出資金を集め、貸し出すという形にしているのが特徴である。

Photo by iStock.com/Pinkypills

AI化されつつある審査

融資先の情報が非公開なので、出資者がリスクとリターンを計算するのは難しい。お金を貸す相手が信用に足るかどうか判断するのは、仲介業者にとって重要な役割だ。ソーシャルレンディングの草分け的な存在であるmaneo社の場合は、提出された賃貸対照表や、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を審査したり、会社を訪問したりして、融資の可否を判断する。融資される確率は20%前後だという。

2016年4月にサービスを開始し急成長している「みんなのクレジット」は、ITの技術開発に力を注いでおり、2017年9月からはAIを使用した自動融資審査システムへの移行を予定。1,000 項目に及ぶスコアリングモデルシートを作成し、ディープラーニングを使用して審査を実施するという。過去の膨大なデータを基に分析し、融資額と金利水準を設定するようだ。

また、クラウドファンディング大手の「キャンプファイヤー」も、2017年の春からソーシャルレンディング事業に参入するため、AIを活用した審査やデータ分析などの研究開発に着手している。AIを使うことで、審査時間の短縮や、人的コストの削減、プロジェクトの達成率予測の実現などを目指している。

ソーシャルレンディングは飲食店の新たな資金調達方法になり得るか?

類似サービスであるクラウドファンディングは飲食店の資金調達方法としてすでに定着しつつあるが、ソーシャルレンディングも飲食店経営のようなスモールビジネスに適しているのではないかと考えられている。2017年は新サービスのリリースもいくつか予定されており、ソーシャルレンディング業界はにわかに活気づいてきた。これらの新サービスが飲食業界にどのような影響をもたらすのか今後の進展にも注視していきたい。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。