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「グルメ漫画」不朽の名作10選。美味しんぼ、深夜食堂、夏子の酒……。

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Photo by iStock.com/Manakin

漫画の中でも人気のジャンルが、食をテーマにした「グルメ漫画」だ。専門的な知識が豊富に盛り込まれた作品は、飲食店関係者の目から見ても参考になるだろう。今回は、グルメ漫画がジャンルとして確固たる地位を築くまでに生み出されてきた、数々の名作を中心にご紹介したい。

数多くの漫画やテレビ番組に影響を与えた、グルメ漫画の原点

『包丁人味平』(集英社) 原作:牛次郎 作画:ビッグ錠
1970年代に『週刊少年ジャンプ』に連載された、料理漫画の先駆け的存在。料理人の対決と識者の解説という形式は、その後の料理漫画やテレビ番組に多大な影響を与えた。次々に現れるライバルとの対決や、勝利をつかむための特訓はスポ根的なアプローチで、少年漫画としての醍醐味も満載。グルメ漫画の原点に触れる一作だ。

さまざまな料理を取り上げ、食を俯瞰することのできる二冊

『美味しんぼ』(ビッグコミックス) 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ
1983年の連載開始から現在まで、多くの読者に親しまれているグルメ漫画の定番。新聞社に勤める主人公と、美食倶楽部を主宰する父親とはライバル関係にあり、「究極のメニュー」をめぐって親子の対決が描かれる。時には食を取り巻く社会問題にまで鋭く切り込み、漫画を通して様々な問いを投げかけるのが魅力。シリーズは100冊以上あるが、テーマごとに完結するので気になる話題から読んでみるのもおすすめだ。

『孤独のグルメ』(扶桑社) 原作:久住昌之 作画:谷口ジロー
松重豊主演でドラマ化された人気作。高級店の一流料理ではなく、主人公の井之頭五郎が仕事の合間に立ち寄る大衆食堂など庶民的な店が取り上げられる。セリフのほとんどが主人公の一人語りで、メニューの優れた点や特筆すべき点が細かくあげられるため、料理人の視点からも楽しめる作品ではないだろうか。今年、作画を担当されていた漫画家の谷口ジローさんが亡くなられたが、ドラマは継続する模様。4月7日からテレビ東京にて『孤独のグルメSeason6』がスタートする。

和食の“粋”に触れ、日本文化の学びを深める二冊

Photo by iStock.com/f3rd14n

『味いちもんめ』(小学館) 原作:あべ善太 作画:倉田よしみ
こちらもドラマ化で話題を呼んだグルメ漫画。料理学校を卒業した主人公が、板前として成長していく人間ドラマを中心に、厳しいすし職人の世界や板場のディティールが細かく描かれている。

『江戸前の旬』(日本文芸社) 原作:九十九森 作画:さとう輝
銀座「柳寿司」の三男・柳葉旬が、寿司職人としての才能を開花させ、一人前になっていく様を描いた作品。作中にたびたび登場する魚介類の知識や、日本文化へ造詣の深さが食に関する学びにつながるだろう。

酒の奥深さに触れる三冊

Photo by iStock.com/donfiore

『Barレモン・ハート』(双葉社) 著:古谷三敏
「レモン・ハート」というバーで繰り広げられる、マスターと客との会話を中心に、様々な酒のうんちくが学べる作品。バーで出されるウイスキーやカクテル、ブランデー、バーボンなどの洋酒はもちろん、ビール、日本酒、焼酎、中国酒まで多岐にわたる酒が紹介されている。

『焼酎ぐるぐる』(メディアファクトリー) 著:太田垣晴子
著者自ら九州を旅し、28の蔵元を回った様子を漫画イラストで綴った一冊。ほのぼのとした、しかしディテールの細かいイラストが焼酎の魅力をわかりやすく伝えてくれる。著者いわく、「酒好きだけれど、酒グルメではない」という視点からとらえた焼酎の描写が新鮮で、一気に読み進めてしまう魅力がある。

『夏子の酒』(講談社) 著:尾瀬あきら
1988年から1991年にかけ『モーニング』に連載され、日本酒ブームを引き起こした作品。実家の造り酒屋を舞台に、亡き兄の遺志を継いだ夏子が幻の酒米を復活させるというストーリーだ。日本酒をまったく知らない、飲まないという方でも入門書として楽しめる。同作を詳しく解説した『夏子の酒読本』を併せて読むと、酒業界特有の用語や文化、しきたりがより深く理解できる。

「食べること」の原点を考えるきっかけになる二冊

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『山賊ダイアリー』(講談社) 著:岡本健太郎
猟師で漫画家という著者が綴る、狩りと食の体験記。狩りの方法はもちろん、実際に仕留めた鳥や獣のさばき方までしっかりと記録されていて、生き物を“食べること”には、当たり前だけれどこうした過程が必ずあるのだということを思い出させてくれる。サバイバルに役立つ豆知識もあり、山の暮らしが自然に学べるのも楽しい一冊だ。

『深夜食堂』(小学館) 著:安倍 夜郎
深夜から明け方にかけて営業している食堂を舞台にした作品。メニューには豚汁定食しかないが、注文すれば何でも作ってくれる。故郷の母を思い浮かべながら、ポテトサラダを注文する男、タコさんウィンナーを山盛りでオーダーする暴力団の幹部、試合で勝ったら必ずカツ丼を食べるボクサー。「食べる」という何気ない行為から、その人の人生が垣間見えてくる。特別な料理は何もないが、人の心とお腹を満たす、食堂のあるべき姿を示唆してくれる。

進化し続ける漫画の世界。ひとくちにグルメ漫画と言ってもその切り口は様々で、綿密な取材や調査をもとに描かれた作品も数多くある。読むことで新しいメニューやサービスのインスピレーションが得られるかもしれない。この機会にお気に入りの一冊を探してみてはいかがだろうか。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。