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PL管理とは? 飲食店経営に欠かせないPL(損益計算書)の作り方、BSとの違いも

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飲食店の経営状態を測るためにはさまざまな指標があるが、なかでも重要とされているのが「PL」だ。PLはProfit and Loss statementの略称であり、損益計算書と呼ばれている。簡単にいうとお店がどれだけ儲かっているかがわかるもの。アフターコロナの今、利益を上げていくために改めて理解しておきたい。

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PLがなぜ重要かというと、店舗がどれだけ儲かっているかを把握でき、かつ次にどのような行動をとるべきかを判断できるからだ。たとえば目標としていた利益を上げたとしても、その利益の上げ方には以下のようにさまざまな形がある。

・売上と経費も計画通りだった
・経費が多くかかったが、売上がそれ以上に多かった
・売上が少なかったが、経費も抑えたから利益がでた

こうして利益がどのように生まれているかをしっかりと把握することで、経営をさらに効率化できるというわけだ。とりわけアフターコロナにおいては、「売上は少なかったが、経費を抑えたことで利益が出た」という流れをつくることはひとつの策となる。まずはPLの構造とその数字が意味することをしっかりと理解するため、詳しく説明していく。

まずは改めて、「収益」と「利益」の違いを理解しておこう。「収益」は入ってきたお金、「利益」は「収益」からさまざまな「費用」を差し引いた手元に残るお金である。企業の経営状況を判断する指標として使われる「売上高〇〇円」は、収益を指している。

続いて PLの中身について解説する。企業の経理業務では会社の利益や損失を計算し、財務状況を把握する「PL」を作成する業務を行っている。具体的には、企業の収益と損失を比較して表示し、一定期間の経営状況・経営成績を表す。

記載される項目は大きく分けて収益・費用・利益。会社の利益と損失をまとめているため、PLの作成により、会社の経営状況の把握や株主・顧客などへの報告が可能となる。

損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)の違いとは?

経理業務では財政状況を示す「貸借対照表」(BS)も作成するが、これは似て非なるものといえよう。貸借対照表とは会社の資産と負債のバランスをまとめた書類であり、バランスシートとも呼ばれる。
PLは一定期間の利益と損失をまとめたもので企業の経営成績を表すが、BSはその時点での企業の財政状態を表している。BSは資金をどのように調達したのか、調達した資金はどのような資産に使われているのかなどの把握が可能な書類であり、その企業の財務状況が健全かどうか判断することができる。

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PL管理(損益管理)とは?

PLによって損失と利益を把握したら、次のステップは望ましい状態へ改善することだろう。管理会計の手法のひとつに、サービス別、部門別、製品別などセグメント別に損益を管理するというものがある。企業の中で利益が出ているセグメント、逆に利益率の低いセグメントを確認することが、原因を特定しやすくし、適切な経営判断の材料となる。

PLで特に着目すべき項目・数値は?

PLは下記の要素で構成される。
・売上
・原価
・売上総利益
・販売管理費
・営業利益

原価は売上を獲得するために使った食材の金額である。売上から原価をマイナスしたものを売上総利益または粗利という。人件費や賃料、光熱費など営業のために使った経費を販売管理費、略して販管費といい、売上総利益から販管費を引いたものを営業利益という。下記にある飲食店のPLの例を掲載する。

■ダイニングカフェA店のPL
売上……………3,000,000円
原価………………750,000円
売上総利益……2,250,000円
人件費……………900,000円
賃料………………360,000円
その他経費………540,000円
販管費合計……1,800,000円
営業利益…………450,000円

では、PLにおいてどの数字に注目すればよいのだろうか? まず、注目すべきは売上に対して原価の占める割合である。この「原価÷売上」を原価率という。A店の場合は75万÷300万=25%となっている。原価率は飲食業で平均すれば30%程度といわれるが、同じ飲食業でもビジネスモデルによって変わってくる。原価率を20%程度に抑えて他の付加価値(例えば居心地のいい客席など)を提供する店舗もあれば、原価率を60%程度に設定して客数を多く獲得して利益を上げる店舗もある。計画通りの原価率になっているか、直近の月と比較して予定外に原価率が高い、あるいは低くなっていないか確認しよう。

次に注目すべきは、社員やアルバイトの給料である人件費だ。「人件費÷売上」を人件費率という。飲食業ではFLコストと呼ばれる用語がある。FLコストは「原価+人件費」のことで、このFLコストが売上の60%以内におさまると、利益が出ると言われている。逆に65%を超えると赤字の可能性が高くなると言われているので目安になるだろう。A店の場合は「(75万+90万)÷300万=55%」となっている。

販管費には、人件費以外にも賃料や光熱費・広告費などがある。コロナ前であれば大きな見直しはできない項目とされることが多かったが、アフターコロナの現在は積極的に見直すべきだ。賃料の交渉に応じる家主は増えており、10~20%程度の減額の相談はしやすくなっている。また、広告費については、「なんとなく」で掲載を続けている媒体は費用対効果を確認したい。Go Toイートでの予約来店を見込んでいる媒体については、食事券の有効期限を鑑み、掲載の有無を検討するとよいだろう。

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損益分岐点、目標利益達成売上を計算するには?

PLを使って、損益分岐点売上と目標売上を計算することができる。損益分岐点売上とは利益がゼロとなる売上であり、赤字の店舗はまず損益分岐点売上を超えることが目標となる。一方、目標利益達成売上とは目標の利益を獲得するための売上を計算することである。下記にその計算方法を説明する。

まずは、変動費と固定費という概念を知る必要がある。変動費とは、売上に応じて変わるコストのことである。例えば、原価である。一方の固定費とは、売上が変わっても変わらないコストである。月額固定金額の賃料がこれにあたる。細かく言えば、人件費や光熱費などは売上に応じて変動するコストであるが、飲食店の損益分岐点を計算するにあたっては、変動費=原価、固定費=販管費と覚えていいだろう。

1、損益分岐点売上
損益分岐点売上は以下の式で計算する。

損益分岐点売上=固定費÷(1-変動費率)

変動費率とは売上に占める変動費の割合であり、変動費=原価とするならば変動費率=原価率である。A店を例に計算すると、「損益分岐点売上=180万÷(1-25%)=240万」となる。つまりA店は売上が240万未満になると赤字になってしまうということである。

2、目標利益達成売上

次に、目標利益達成売上は下記の式で計算する。

目標利益達成売上=(目標利益+固定費)÷(1-変動費率)

ここでもA店を例に説明しよう。上記PLで45万の利益が出ているが、60万円の利益を目標にしたとする。その場合の達成すべき売上は、「目標利益達成売上=(60万+180万)÷(1-25%)=320万」となる。

以上、PLの見方の基礎について説明した。大切なことはただ数字をみるだけでなく、計画や前年同月、前月などと比べてどういう違いがあるか、目標とする売上とどれくらい差があるのか、どのようなアクションをとらなければいけないか、を考えて実践することである。ぜひ今回の知識を店舗経営に生かしてほしい。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/