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飲食店の事業計画書を作成する際のポイント。融資を受ける際、自己資金はどれぐらい必要?

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Photo by iStock.com/reorange

飲食店を出店する際に作成する事業計画書。出店をスムーズに進めるため、そして資金調達をするうえでも欠かせないものだが、一体、何を書けばいいのかわからない方もいるのではないだろうか。ここでは、飲食店の事業計画書を作成するときに必要なポイントを説明する。

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そもそも事業計画書とは?

飲食店を出店するまでに必要な準備は多岐にわたる。なるべく不足点がないように綿密に計画を立てるとともに、いつでも確認できるように書類にまとめておく必要がある。この計画をまとめた書類を事業計画書という。

事業計画書には大きく2つの役割がある。1つは、融資や周りからの協力を得るための説明資料としての役割である。飲食店を出店するには大きな費用がかかるため、金融機関に融資を依頼するケースが多い。金融機関は事業計画書を見て、出店にはいくら必要で、そして貸したお金を返せるかどうかを判断する。また、業者と取り引きをする場合や家族・友人の協力が必要な場合にも、事業計画書に書かれているような内容の説明が必要になってくる。事業計画書は説明資料として大切な役割を担っているというわけだ。

もう1つは、全ての事業内容を把握し、事業を順調に進めるための道標としての役割である。出店前も出店後も事業計画書をチェックしながら、順調に進んでいるか、何が足りないかを確認するためのツールとなる。

日本政策金融公庫で1,000件以上の創業支援融資を手がけてきた石原文彦氏は、過去に行った『Foodist Media』の取材に対してこのような解説をしている。

「事業計画書は、飲食店の事業プランを整理した文書です。融資を申し込む直前になってから作成するのではなく、開業準備を始めた早い段階から作り始め、準備を進める中でブラッシュアップしていけばいいのです。そうすれば、この計画書が店の経営指針になっていきます」

Photo by iStock.com/utah778

事業計画書に書くべき内容は?

事業計画書に必要な項目は、大きく分けると事業コンセプトと数値計画である。事業コンセプトは、どのような顧客(ターゲット)に、欲しいと思う商品・サービス(ニーズ)を、どのように提供するか(独自性)、という3つの軸で考えるといいだろう。

数値計画は、事業を始めるにあたりいくら必要か(投資計画)、どれくらいの客数と客単価を考えて売上はいくらを見込んでいるか(売上計画)、利益はいくらくらいになりそうか(収支計画)、投資計画に則って投資をするためにどのように資金を調達するか(資金調達計画)、調達した借入金をどのように返済するか(返済計画)、などがある。1つずつ順番に計画を立てていくのではなく、それぞれの計画において互いに矛盾が無いように考えることがポイントになる。

最後に特に検討項目が多い売上計画と資金調達についてもう少し説明する。

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売上計画の立て方

売上は客数×客単価で計算するのが基本である。客数は新規客とリピーター、客単価は商品単価と買上げ点数のように細分化できるので、業態に合わせて詳細に検討してもいいだろう。注意点としては、飲食店には店舗の面積、席数などに制限があることだ。売上の計画値と坪当たりの売上や席の回転率などに無理が無いように売上計画を立てることが必要である。

また、業態や立地によっては、時間ごと(例えばランチタイムとディナータイム)や曜日ごと(土日のほうが売上が高いのか、平日のほうが高いのか)、月ごとの繁閑の差(季節指数。例えば夏に売れるのか、冬のほうが売れるのか)なども考える必要がある。条件を考えれば考えるほど、売上計画の精度は上がるはずなので、慎重に検討しよう。

資金調達のポイント。融資を受ける際、自己資金はどれぐらい必要?

事業を始めるための資金は大きく分ければ自分で用意する自己資金、そして融資や出資など他人から集めた資金の2つがある。飲食店の場合、初期投資が大きいので全額自己資金というケースは少ない。日本政策金融公庫は、信用や担保などの面で一般の金融機関から借りることが難しい個人や小企業でも利用しやすい条件となっている。このような公的融資を検討するのもいいだろう。

日本政策金融公庫の石原氏は「最低でも開業資金の3割は自分で用意する気持ちが必要です。自己資金に『どうしても開業したい』という気持ちが表れるからです。さらに各種支払いの支払い状況も審査の材料になります。きちんと支払いをすることは信頼関係の土台になることですから、これがルーズになっているのは大きなマイナスになります」と解説している。

今回は事業計画書の基本知識について説明した。すべてにおいて矛盾がない事業計画をいきなり作成しようとして難しいだろう。一度作成して終わりではなく、ブラッシュアップを続けながらより良い計画書を作成してほしい。

ちなみに事業計画書は日本政策金融公庫のホームページで記入例を閲覧することができる。出店希望者は一度チェックしてみるといいだろう。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/