賃貸住宅不況は、物件探しに優位に働く! (第47回)

【店舗物件が増える!?】

 今、全国の賃貸物件大家が悲鳴を上げているのをご存じだろうか?
 賃貸物件の空室率(マンションや貸しビルで空室のある割合)は20%を超え、都道府県によっては30%にも迫ろうとしている。そこで一部の大家の中では「住宅として貸すより、店舗として貸す方が条件が良い」というささやきがもれ聞こえるようになった。
 今回は、賃貸物件大家の苦境による店舗物件拡大の可能性を考えてみたい。



【条件が変わった賃貸住宅】

 一昔前まで、有力な投資法としてマンション投資がもてはやされていた。サラリーマンが投資用の物件をローンで購入し、月返済額以上で賃貸することでその差益を得る上、将来的に物件を売ることでさらに利益を得られるというものだった。成功した大家の中にはどんどん事業を拡大し、ビルやマンションを丸ごと購入する人もでてきた。「利回り12%」などと書き皮算用をし、ウハウハ気分の大家も少なくなかったが、それはあくまで常時満室だった時の話。実際には、前述のような空室率のために、ローンを払うのも一苦労でむしろ仕事を増やさなければ……という人もいる。
 そんな中、賃貸住宅を取り巻く環境も大きな変化を迎えている。数年前まで、徴収することが当然だった「敷金」。それをクリーニングやリフォーム代の一部に充当していたが、一部の勘ちがい大家の非常識な活用が社会問題化。その結果、敷金をリフォームにすら使うことができなくなってしまった。
 最近では、敷金・礼金が無料の物件も登場。さらに、物件を契約すると電化製品をプレゼントしたり、好みのランプシェードに変えることをうたい文句に、何とか契約にこぎつけようと、大家側の必死の試みがなされている。中には、サンキュー価格として、契約月の賃料を3万9000円にするところまででてきているらしい。
 数年前までの大家優位の状況が、まるっきり逆転してしまっているのだ。



【店舗物件は大家にもおいしい】

 そんな現状の中、大きな状況の変化がないものがある。それが店舗物件。契約時には、保証金としてまとまった金額を受け取り、契約に盛り込めば、その中の数割を無条件に受け取ることができる。基本的には、スケルトン状態で戻ってくるため、自分で費用をねん出してリフォームする必要もない。大家にとっては、賃貸住宅として個人に貸すよりも条件が良いのだ。
 しかも、大家としては、中で何をしているのか分からない不安感にさいなまれる事務所より、誰にもオープンに開かれた店舗として貸す方が安心感も増す。
 あるビル大家は「これから一番おいしいのは店舗物件」と言い切る。店舗・事務所・マンションを数百室持つ人物の意見だ。
 「住宅物件の賃貸契約者優位な状況は、もう変わることはないだろう。しかし、店舗・事務所の大家主導の体制は変わらない。持ち物件の1階に飲食店が入ることで、住宅物件のアピールポイントの一つにもつながる。条件さえ合えば、物件を店舗として貸すべきだ」と言い切っている。
 もちろんすべての賃貸物件を、何でも店舗物件にできるというわけではないだろうが、「店舗はトラブルが多い」「物件が汚れる」などの理由で門戸を開いてこなかった大家に、新たな可能性として指し示している。
 実際に彼は複数の物件を店舗用に貸しているが「店がつぶれて、次の人が入ってもなぜか同じ店をやる」という経験値から、より早く次の契約ができるよう、居抜き状態での解約を歓迎している。
 彼は、大家の中でカリスマ的存在と言われる人物。誰より先進的な考えをする人物が発言しているのだから、これからこの考えが大家の中に浸透してくる可能性も低くはないだろう。「飲食店を住宅地で開業したい」。そんな考えをもつ人には、好条件の物件が身近に誕生するかもしれない。




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