立地にこだわりすぎた 掘り出し物件の意外な姿 (第54回)

【みんなが狙う掘り出し物件】


 誰もが欲しい掘り出し物件。中でも重視したい条件は「立地」。できれば駅前や人通りの多い所がいい。そして、もちろん予算内に収まることも重要だ。しかし、そんな願ったりかなったりの物件は、そう簡単に出てくるものではない。たまに情報が来ても、すぐに決断しなければ他の人が契約してしまう。なぜなら、みんな掘り出し物件を狙っているからだ。
 今回は、掘り出し物件で失敗した飲食店オーナーの話を紹介したい。


【すぐに見つけた駅徒歩0分】


 Aさんは、大手の外食チェーンに勤めていた。スーパーバイザーとして全国を飛び回る中「大きな売上げを上げるには、立地の良さと物件が大きいことが絶対条件だ」と考えていた。実際、彼が担当する店舗は、駅前繁華街の大型店舗ほど売上げ規模が大きく、他の一般的な店舗の数倍の売上げを上げていた。駅前でチラシを配れば、その量に比例して来客数が増え、売上げのコントロールもしやすかったため「自分が独立する時も、絶対に繁華街の物件で」と決めていた。
 独立を決めたとき、20〜25坪の物件を探し始めた。その矢先に、駅徒歩0分という物件が出てきた。乗降客数も決して少なくない中規模の駅。改札が2階にあり、左右に出口があるのだが、その片方の階段を下りた目の前のビルの1階。広さは24坪。駅前ということで、保証金も家賃も安くはなかったが、大きく予算オーバーと言うわけでもなかった。
 Aさんは仕事帰りに物件を見に行き、一目で気に入った。見たときは夜だったため、外壁などはよく見えなかったが「特に問題はない」と不動産屋からもお墨付きをもらっていた。周りにある数件の居酒屋やバーはどこもそれなりの来客があるようで、立地としても申し分なし。
 経験から、掘り出し物件はすぐに契約しなければチャンスを逸してしまうことを知っていたため、物件を見たその場で契約をした。




【デザイナーからの意外な連絡】

 会社への退社手続きを進めながら、開業に向けての準備をスタート。知り合いの店舗デザイナーと、毎晩のようにあれこれ話をしながら具体化していった。そんなある日、デザイナーから連絡が入る。
 「日中は工事車両が店前に停められず、資材の運搬に支障が出るかもしれない」
 Aさんは言われている意味が分からず、デザイナーに事情を聞いた。
「自転車があって、車を入れられない。早朝か夜にするしかない」
 Aさんは思ったそうだ。「自転車くらいどかしてしまえばいいじゃないか」と。そして直接指示を出そうと、翌日仕事の合間を見て物件に行き驚いた。
 線路の塀と店のあるビルの間の細い道には、200台を超える自転車が停められていた。朝8時頃になると、通勤や通学で駅を利用する人が次々と自転車を停めていく。台数はみるみるうちに増え、まさに無法地帯に。駅の逆側に立派な駐輪場があるのだが、月1000円の使用料がかかる上、踏切を渡らなくてはならない。朝のラッシュ時は、開かずの踏切となるため多くの人が敬遠していた。
 買い物客はあまりの自転車の多さにその道を避け、1本先の住宅地の中を抜けていくほどで、日中は人通りすらなくなってしまう。
 Aさんが物件を見に行ったのは、夜遅い時間と仕事前の早朝。確かに自転車はあったが、気になるほどではなかった。しかしそれは、自転車を停める時間帯ではなかったから。よく見れば確かに周りの飲食店は、夕方からオープンの居酒屋やバーばかり。急きょ夜型の業態に変更し、割高の費用を払って夜間に資材を搬入してもらった。
 掘り出し物件は即決が求められるが、だからと言って後悔したのでは意味がない。時間がない中でも、不動産屋や周りの人に話を聞くなど、最低限のセオリーは守りたい。大きな決断だからこそ、焦りと思い込みは禁物なのだ。






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