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世界の外食トレンドを9か国4,600人のアンケートから紐解く。飲食店が業績を伸ばすために必要なことは?

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Photo by iStock.com/pcruciatti

アメリカのコンサルティング会社、アリックスパートナーズが『世界外食産業展望:グローバル消費者層のニーズに応える』というレポートを発表した。今回の調査では、消費者が「いつどこで何を食べているのか」「食事に対して2017年はどのような計画を立てているか」をリサーチ。

ブラジル・中国・フランス・ドイツ・イタリア・日本・韓国・英国・米国の9カ国で4,600人の飲食店利用者を対象にアンケートを行ったところ、世界の外食市場には5つの大きなトレンドがあることが分かった。その内容を紹介しながら、本レポートを作成したアリックスパートナーズ・伊藤隆氏にも話を聞いたのでご紹介したい。

お話を伺ったアリックスパートナーズ・伊藤隆氏

世界的に「食品の品質」に対する関心が高まっている

「飲食店を決める際に重視していることは?」という質問に対して、回答者の3分の2以上が「新鮮な地元の食材を使い、その場で調理した料理を提供しているかどうか」を最も重視すると回答。また、回答者の半分が、人工成分や防腐剤を使った食品は摂取したくないと考えていることがわかった。世界的な有名店の中にも、食品の品質に対する要望に対応している店は多く、先日グローバル展開する飲食チェーン「タコベル」と「アップルビー」が「放し飼いの鶏しか使わない」と宣言したのは記憶に新しい。

価格感応度が上昇

世界的な傾向として、一度の外食にかける費用は10ドル以下となっている。回答者はクーポンの利用や手頃な値段の店で食事することによって節約を図っているようだ。また、回答者の多くは、「来年はさらに節約を心がける」と答えている。米国と韓国では、「外食の回数そのものを減らす」と答えた回答者が最も多かった。

日本はどうだろうか? アリックスパートナーズ・伊藤隆氏に聞いてみた。

「グローバルで見ると、外食支出を控えるという傾向にあります。しかし、日本は外食支出を増やすと考えている消費者の方が、支出を減らすと考えている消費者よりも7%多いです。また、外出頻度を増やす消費者が、減らすと答えた消費者より7%多いというデータもあります。外食支出を減らすと考えている消費者は、その理由として主に『家計が苦しくなると予想されるため外食費を抑えたい』『将来が不安である』『健康的な食事をとりたい』と答えています。外食費を削減するために、『より安いレストランに行く』あるいは『安いメニューをオーダーする』といった対応を図るようです」

Photo by iStock.com/StephanieFrey

外食時の健康およびウェルネスに対する関心が高まる

外食で「どこで何を食べるか」を決める際に、50%を超える回答者が、メニューの内容が健康的であるかどうかは「ある程度重要」だと答えている。特にイタリアと中国の回答者は健康的なメニューが「極めて重要」または「非常に重要」であると述べた。一方英国と日本では、健康的なメニューに対する関心が最も低かった。

諸外国の消費者がレストランを選択する際に重視する点は「食品の品質」「価格」「メニューのバラエティ」であり、各項目を62%、44%、25%の人が「重視する」と答えている。日本の消費者は、それぞれ50%、48%、26%の人が「重視する」と回答しており、「食品の品質」と「価格」に対する関心が拮抗している。

日本で求められていることは何か伊藤氏に尋ねた。

「日本の消費者は品質も価格もバランスよく高い水準で満たすことを期待している、と解釈しています。日本の消費者の期待に応えるためには『その場で調理されていること』『地場の新鮮な食材を使用していること』『添加物・化合物フリーであること』といった条件を満たしつつ、『料理の質』と『全体的な値段』をバランスよく保つ必要があると考えます」

グローバルに比べると健康的な関心が突出して高いわけではないため、それだけではレストランを選ぶ際の決め手になりにくい。健康的な要素も大事にしつつ、食材の品質やメニュー、値段とのバランスする必要がありそうだ。

消費者が期待するサービスの要素が、業態により異なっているのも特筆すべき点である。コンビニ業態に対しては「低価格や値下げキャンペーン」、ファストフード業態には「食材品質の向上」や「セットメニューの充実」に対する期待が高い。カジュアルダイニング業態に対しては、「ヘルシーメニュー」や「高付加価値メニュー」「キッズメニュー」の充実が求められている。

Photo by iStock.com/Prykhodov

多忙なライフスタイルにより食習慣が変化

人々のライフスタイルが多様化していることが、外食産業に影響を与えているようだ。今や全世界の食事の30%が「持ち帰り」で賄われており、中食分野は2021年までに3%成長すると予想されている。

食事の宅配サービスが世界的に拡大していることも、人々を外食から遠ざける原因の一つである。Doordash、Deliveroo、Foodpandaといった宅配業者の出現によって、消費者はスマートフォンで温かい食事を注文できるようになった。米国では2010年から2015年の間に、食事の宅配サービスを毎週利用する人が倍増。また、インドでは食事の宅配が20%まで拡大、ブラジルでも近年テイクアウト食品が20%増加した。さらに英国では、2020年までに宅配食市場が3倍になると予想されている。

市場の急激な拡大とともに、新規ベンチャーや宅配サービスの開発を目的としたフードテックへの投資が続いており、昨年度はフードテック分野の新規企業に対する四半期ベースの投資額が10億ドルを超えたそうだ。

一方で、日本では「外食費の12%程度が持ち帰り消費となる」と想定している。この割合は中国の34%、韓国の30%、米国の29%と比べて著しく低く、グローバル平均の24%の半分程度である。日本ではまだまだ持ち帰りやデリバリー事業の普及率が低いようだが、今後どうなるだろうか?

「持ち帰りまたはデリバリー機能を備えた飲食店や、専門店の数は相応に増えると考えています。これらを活用したいと考える消費者の数が増えてきていますし、出店を考えている事業者も多いでしょう。今後、人口動態に合わせる形で、東京をはじめとした都心部への出店が増えると思います。家賃の高い都心部で事業採算性を担保するためには、費用をかけずに売上を伸ばす、あるいは費用を低減させつつ効率的に事業運営を行うことが必要です。スマホ発注による持ち帰り・デリバリー事業は、追加費用を抑えながら売上を拡大する施策の一つなので、同業態の店舗数は拡大すると考えています」と伊藤氏。

今後、テクノロジーの力を借りてますます発展していきそうなデリバリー事業。参入を検討している飲食店は、熾烈な競争が始まる前に手を打っておきたいところだ。

Photo by iStock.com/MichaelJay

グローバルチェーンがローカライゼーション(現地化)に成功

世界的なレストランチェーンが各国市場で勢いを増している。その理由の一つとして、彼らが現地の市場で成功するために欠かせない要素を見逃さなかったことが挙げられる。たとえば、マクドナルドはメニューの現地化に成功しており、イタリアでは客の78%がイタリア向けにアレンジされたメニューを希望するという。インドのドミノピザは、列車にピザの宅配を行うとともに、ベジタリアンメニューの提供を始めた。今やローカリゼーションの波はメニューだけでなく店舗の形態から人員構成、原料調達にまで拡大しているようだ。

日本の飲食店がさらに業績を伸ばしていくためには?

日本の飲食店が業績を伸ばす策として、このレポートでは以下のようなポイントを挙げている。最後に紹介したい。

■地産地消の推奨、食材のサステイナビリティ(持続可能性)に訴求した取り組みを強化すること
■持ち帰り、デリバリー需要を取り込むこと
■チェーンの地域拡大においては、ローカリゼーションを意識すること

時代の流れとともに、消費者が飲食店に求めることは少しずつ変化していく。そのトレンドを敏感にキャッチすることで、ライバル店に先駆けて需要を取り組むことができる。自分の店にとって変えられないコアな部分は守りつつ、変化に対応できる部分については可能性を検討してほしい。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。