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グルメンピック問題で被害者「泣き寝入りしない」。27歳女性店主と大東物産とのやり取り

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大東物産の債権者集会に参加した『焼麦大郎』の木村麻友香さん。「本当に腹立たしい」と語る

食のイベント「グルメンピック」を企画した「大東物産」(東京都中野区)が飲食店から出店料を集めた後に破産開始決定を受け、集めた約1億3000万円が返済されない問題で5月23日に都内で債権者集会が行われた。同社の中井冬樹社長らは詐欺ではないと主張したが、出店料を支払った債権者は納得する様子はなく、刑事・民事で責任を追及する方向だ。

被害は508店舗、総額1億3000万円に

大東物産は2月に「味の素スタジアム」(東京都調布市)、「舞洲スポーツアイランド空の広場」(大阪市此花区)で「グルメンピック」を開催するとして約500店舗から出店料1億3000万円を集めたが、最終的に開催されなかった。出店料は返還されないまま同社は2月20日に東京地裁に破産を申請し、同日開始決定を受けた。

この問題について出店料を支払った店舗のオーナーらは「被害者の会」を結成。現在、確認できる被害者は508店舗という。中野区でダイニングバー『4 Seasons LDK』を経営し、被害者の会の会長を務める鈴木亮平氏(34)は債権者集会の様子をこう語る。「破産管財人が私たちの心情に配慮してくれたので、怒号が飛び交うような集会ではありませんでした。ただ、債権者からの質問に中井社長が話を始めようとしたら『まずは詫びを入れろ!』という声が出ました。それに応えて『すみませんでした』と言ってましたね」。

イベントが中止になってから4か月経っているせいか債権者も比較的冷静だったというが、それでも大東物産側の態度を見て怒りの声が出た。債権者集会の前日に中井社長はテレビ局の取材に答え、100万円の報酬をもらって社長に就任したという、常識では考えられないような説明をしたことも債権者の神経を逆なでしたようだ。

被害者の会の会長を務める鈴木亮平氏

27歳女性店主が語る、大東物産のやり方

松戸市でお好み焼き・もんじゃ焼きの『焼麦大郎』(むぎたろう)を経営する木村麻友香さん(27)も出店料20万円を支払っており、この日の債権者集会に出席した。「中井氏は自分も被害者というような言い方をするんです。『僕は言われた通りにやっただけです』『経営の能力はないです』『お金の流れも分かりません』とか。指示を出した人のことを“オーナー”と言って、『オーナーと信頼関係があったから、まさか自分は詐欺をやっていると思わないし、今でも詐欺だと思っていません』と言ってましたね」と呆れたように話す。

そもそも木村さんがグルメンピックへの出店を考えたのは、大東物産からの電話がきっかけだという。

「去年(2016年)の7月頃に店に電話がかかってきて出店の誘いがあり、10月に会社名義の銀行口座に20万円を振り込みました。それで今年2月の開催に向けて味の素スタジアムの近くのホテルを予約していたのですが、1月17日にそのホテルから『イベントがキャンセルになりましたけど、宿泊予約はどうしますか?』という電話が入ったんです。それで初めてグルメンピックが中止になったことを知りました。

翌18日に大東物産に電話をしたら最初は『やる』と言ってたのですが、問い詰めたら『延期になりました』と。『延期されたイベントには出店しないから、お金を返してください』と言うと『1月末に返金します』と言っていたのですが、1月23日になって『1月末は無理なので2月末に』と言われ、そのまま連絡が取れなくなりました」。

こうした経緯があるだけに、木村さんの怒りは収まらない。「20万円は、飲食店からすると大きな金額です。私たちの仕事は毎日一生懸命働いて5万、6万という売り上げを積み重ねていくんです。そこで20万円という利益を出そうと思ったら、100万円を超える金額を売り上げないといけません。23歳から飲食店を経営して騙されるという経験がなかったので『世の中にはそういう人がいるんだな』という感じです。本当に腹立たしいです」。

「20万円は、飲食店からすると大きな金額」と木村さん

被害者の会「絶対に泣き寝入りしない」

中井社長以下、責任がないことを強調する大東物産側だが、被害者の会では追及の手を緩めない。グルメンピック被害対策弁護団と相談して民事上の責任を追及するとともに、詐欺罪(刑法246条1項)で刑事告訴する準備を進めている。もっとも詐欺罪は非親告罪のため、刑事告訴がなくても公訴提起は可能だ。「警察は動いているようです」と前出の鈴木氏は語っており、捜査のメスが入る日は案外、遠くないかもしれない。

「われわれ被害者の多くは、民事より刑事責任をとらせたいという思いを持っています。飲食店に関して、これだけの被害が生じたのは初めてでしょう。絶対に泣き寝入りはしません。大東物産側は言い逃れをしていますが、多数の被害者から集めた状況証拠が揃っているので言い逃れはできないと思います。既に私たちの中では主犯は誰か明確になっていますし、彼らには早く刑務所に入ってほしいと思っています」と鈴木氏はしゅん烈な被害者感情をのぞかせる。

ポイントは責任逃れをする経営陣に「詐欺の故意があるか」という点と、中井社長が「オーナー」と呼ぶ、裏で操っていた主犯とも言える存在まで捜査の手が及ぶかという点だろう。次回の債権者集会は9月12日に予定されているそうだが、それまでに司直の手が及ぶのか。しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/