飲食店ドットコムのサービス

飲食店経営者の平均年収は600万円台。年収1000万円を超えるために必要な経営のコツ

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

Photo by iStock.com/monkeybusinessimages

『日経レストラン』の調査によると、飲食店経営者の平均年収は627万円だという。これは国税庁が発表した「令和3年分民間給与実態統計調査」で明らかになった給与所得者の一人当たりの平均給与443万円と比べても随分と高い数字だ。しかし飲食店経営者、またはこれから出店を目指そうという方の中には、まだまだ上、例えば年収1000万円を超えることを目標にしている方もいるだろう。

飲食店を経営して年収1000万円を超えるには、どのような方法があるのだろうか。今回は、業態別の平均年収なども踏まえ、飲食店経営者の年収をアップさせるために必要なポイントを紹介する。

飲食店経営者の平均年収は?

実際の飲食店経営者の年収はどうなっているのだろうか? 前述した日経レストランの調査によると、飲食店経営者の個人年収は627万円である。個人店で黒字の飲食店の経営者の平均年収は631万円、世帯年収(同じ店で家族が働いている場合の合計年収)は895万円となっている。

ただし、赤字店の場合の平均年収は当然これほど多くない。赤字の規模にもよるが、経営者の年収は300万円台や200万円台も多く、日々の生活もままならずアルバイトをしたり、副業をしたりといったケースもある。

これらのことからも、個店で年収が1000万円を超えることはハードルが高いことがわかる。

飲食店の業態別における経営者の年収は?

ひと言で「飲食店」というが、業態によっても経営者の年収は異なる。代表的な業態について、経営者の年収について見てみよう。

居酒屋…300万円〜2500万円
レストラン…400万円〜600万円
定食屋…200万円〜300万円
ラーメン店…800万円前後
カフェ…200万円〜1000万円
バー…200万円〜300万円

上記の年収はあくまでも一般的なもので、店舗によって異なる。また前述したように複数店舗を経営するなどで大きくアップすることもできるのが魅力と言えるだろう。

飲食店経営者の年収を上げるには?

飲食店経営者の年収は、店舗の売上とある程度連動していると考えるのが一般的だ。店舗の売り上げが上がれば、経営者の給与、つまり年収を上げることも可能になる。

その一方、かかる経費を圧縮することでも店舗の利益を上げることができる。飲食店を経営する際にかかる代表的な経費は下記の4つがある。それぞれに解説していこう。

家賃…店舗を借りている場合に発生する賃料。固定費となるためできるだけ低く抑えたいが、立地条件によって売上が左右されることもあり、条件の悪い立地は避けたい。そのため、経費を削減するために大家さんに値引き交渉をするといったことも考えられる。

FLコスト…飲食店経営に不可欠な食材費(Food)と人件費(Labor)のこと。通常、売上高に占める割合は、食材費30%、人件費30%が理想とされている。食材費を削るとメニューの質が落ち、時給を引き下げるとスタッフの質が下がる懸念もあるため、FLコスト削減の場合は慎重に行いたい。

光熱費…飲食店を経営する際に必要な電気、ガス、水道代などの費用。単価が安いところと契約したいが限界がある。そのため、スタッフにも節約の意識を持ってもらうように指導することも経営者として大切になる。

広告宣伝費…ポータルサイトやチラシなどの広告媒体を利用する場合は掲載料などがかかる。オープン時などはある程度掲載ボリュームを大きくし、その後はSNSで発信するといった広告戦略で経費を抑えることも可能だ。

売上を上げ、上記の経費を圧縮することで利益率を高まり、経営者の年収アップにもつながる。ただし年収1000万円を目標とした場合、クリアするのはそう簡単ではない。次の項目で詳しく解説する。

画像素材:PIXTA

飲食店経営者が年収1000万円を超えるには?

まず、店舗のPLから年収1000万円をシミュレーションしてみよう。経営者の給料の算出方法はさまざまとあるが、ここではわかりやすい例として、売上から原価と販売管理費を控除した営業利益を経営者の給料とする。仮に営業利益率を10%とすると、年商1億円・月商840万円の店舗が必要となる。昼はランチ・夜は居酒屋といった二毛作で営業できる店舗や、開店から閉店まで行列が続くラーメン店などであれば可能性はあるかもしれないが、個店で月商840万円を売り上げること、そして利益率10%を維持することはなかなか難しいだろう。

となると複数店舗を経営することで、年収1000万円を超えるというのが現実的だと思われる。例えば月商500万円・年商6000万円で営業利益率8%の店舗を2~3店舗経営することができれば、理論上年収1000万円を超えることができる。

このように複数店舗経営で利益が出ていれば、さらなる多店舗化も可能になり、それに合わせて経営者の年収はさらにアップする。例えば、上記のような売上を持つ店舗をさらに2〜3店舗運営できれば、年収は1000万円上積みされて2000万円を突破する。また、月商1000万円・年商1億2000万円で営業利益率が8%の店舗を経営すれば、同様に年収は2000万円となる。

こうして各店舗で利益が出せれば、さらに多店舗化しやすくなり、いずれ年収が5000万円クラス、1億円クラスとなることも夢ではないだろう。

Photo by iStock.com/wutwhanfoto

年収アップにつながる複数店舗経営のポイント

では、複数店舗を経営するためのポイントは何だろうか?

1、複数店舗経営に向いている業態を選ぶ
真っ先に挙げられるのは、当たり前のように聞こえるが複数店舗を経営するのに向いている業態を選ぶことである。経営者や少数の職人の料理技術に頼った業態では、複数店舗の経営は難しいだろう。アルバイトでもある程度の教育時間をとれば料理を提供することができる業態のほうが、複数店舗の経営に適しているだろう。

そのため、最初の店舗を検討する段階で、複数店舗の経営を想定して業態を検討することが必要になってくる。2店舗目、3店舗目を異なる業態で展開していく手法もあるが、同じ業態で複数店舗を経営するほうが人材やノウハウなどの経営資源を有効活用できる。

2、店舗運営を任せられる人材の育成
複数店舗を経営するのであれば、スタッフはもちろんだがお店をある程度任せられる店長クラスの人材を育成する必要がある。経営者自身がすべての店舗の経営を見ることは不可能であるので、経営者の考えやノウハウなども含めて教育して育てていくことが必要になる。併せて、せっかく育てた人材がすぐに辞めないような評価や報酬を与え、モチベーションを保つことも必要になってくる。

3、顧客満足を追求する
どのような飲食店でも言えることであるが、顧客満足を追求することが非常に大事である。ただ満足してもらうだけでなく、また来店してくれる・周りの人に勧めてくれるくらいの満足感が必要になる。自店舗の顧客がどこに満足感を感じてくれているのか、しっかり把握した上で高めていく必要がある。

メニューを例にして考えると、日常的に利用する店舗なのか、非日常的に利用する店舗なのか、主要顧客ターゲットが男性か女性かなどによってメニューの内容や構成が変わってくる。定番の名物メニューがあってそれを楽しむためのお店なのか、飽きられないように短期間でメニューの入れ替えをしていくべきお店なのかも変わってくるため、ターゲット顧客のニーズをしっかり捉えたうえでの打ち手が必要となってくる。

Photo by iStock.com/Rawpixel

店舗の売上を上げる方法

複数の店舗を運営することで飲食店経営者の年収はさらにアップするが、そう簡単に多店舗化できるわけではない。その前にまずは1店舗目の売上増を目指す必要がある。この場合、単純に値上げをすることで売上高を増やすことができる。しかし客離れが起きて仕舞えば本末転倒だ。

例えば、飲み放題プランを導入すると、客は好きな飲み物が好きなだけ頼める一方、お店も売上が上がり、さらに回転数も上げられる。つまり両者にとってメリットがあるのだ。このようにお店も客もウィンウィンとなるようなシステムを導入することで、効果的に売上を上げ、さらにリピートにもつながる可能性がある。この他、下記のような施策が考えられる。

・おすすめ商品の導入
・宴会メニューの導入
・デザートなどプラス1品の充実
・追加オーダーの促進マニュアルの徹底、など

一方、収入源を増やすことも考えてみよう。飲食店の収入源は主にお客さまの飲食代だが、それ以外の収入源として考えられるのがいくつかある。

関連商品の販売…お店で使っているオリジナル調味料や自家製ソースなどを販売する。製造元がある場合は販売代理店として、販売することもOK。
雑貨の販売…デザイナーなどとコラボをして、グラスやエプロンなどのオリジナルグッズを制作して販売する。

この他、テイクアウトやデリバリーへの参入も新たなお客の獲得につなげることができる。また、空き時間を使ってゴーストレストラン(デリバリー専門店)を展開していくことも考えられる。

PL(損益計算書)から自店にふさわしい施策を

PL(損益計算書)とは飲食店の経営状況を測るのに重要な指標のこと。入ってきたお金と出ていったお金を計算する書類のことで、売上を得られるのに原価や人件費、家賃などの費用がいくらかかったのかがひと目でわかる。つまり、PL(損益計算書)を見ることで、経営がうまくいっているのか判断しやすくなり、どこをテコ入れするといいのか、わかるようになる。

料理や接客は得意だけど、財務は苦手という経営者もいるかもしれない。しかし、店舗経営を適切に行うためにも、財務に関しても正しい知識を持つことが飲食店経営者にとって不可欠。年収1000万円超を狙うのに重要な要素といえるだろう。

今回は飲食店経営者が年収1000万円を超えるためのポイントについて考えてみた。そのためには多店舗経営が最適だと考えられるが、その前に自店の売上を上げることが経営者の年収をアップさせる近道だといえる。

飲食店を開業する目的は人によってさまざまだが、努力した分の対価を得たいという気持ちは誰もが持つものだろう。明確な目標を持てば、気持ちや行動にもハリが生まれる。自分に合った目標年収を掲げ、必要な努力を積み重ねたいものだ。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/