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グーグル出身者が作る最先端カフェがすごい理由。ITの力で提案するコーヒーショップの未来

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『アルファベータコーヒークラブ』代表・大塚ケビンさん。「ニトロ」を淹れるサーバーの前で

今年5月、IT技術を積極的に取り入れたカフェ『Alpha Beta Coffee Club(アルファベータコーヒークラブ)』が誕生した。テクノロジーの力でコーヒーの美味しさを管理し、また米国で流行の「定額制サービス」も導入しているという。コーヒーショップの“未来のカタチ”を提案する話題店だが、オペレーションやシステムはどのようになっているのだろうか。同社CEO、大塚ケビンさんを取材した。

グーグルで「コーヒーが人と人をつなぐ面白さ」に目覚める

『アルファベータコーヒークラブ』は自由が丘駅から徒歩2分の場所にある。テラスから自然光が差し込む明るい店内には、アーティストの作品や、提携するロースターを紹介するカードが飾られ、とてもフォトジェニックだ。ここをプロデュースした大塚ケビンさんは、米グーグルでアジア太平洋地域のデジタルマーケティングを担当していた経験を持つ。一見結びつかない「グーグル」と「コーヒー」の接点は何だろか。

「グーグルの社内にはたくさんのコーヒーメーカーがあったんです。僕はもともとコーヒーが好きだったので、ラテアートを勉強して、会社のみんなに作ってあげていました。日本で『お茶しない?』と言うのと同じように、アメリカでは『get a coffee?』と言ってコーヒーを楽しむ文化があります。コーヒーを通してたくさんの人とつながりができたし、先輩からもすごくいい話が聞けました」

一杯のコーヒーを通じて、大勢の人とつながる面白さに目覚めていった大塚さん。本社から日本に移ったときにはちょうどサードウェーブコーヒーがブームになり始めていた時期で、『ブルーボトルコーヒー』をはじめとするさまざまなカフェを巡ったそうだ。

「当時、周囲から『どこのコーヒーが美味しいの?』と聞かれることがとても多くて。そこで『美味しいコーヒーを紹介することがサービスになるかもしれない』と考えるようになりました。スペシャリティコーヒーは本当に需要があるのか、まずはオンラインにフォーカスして試してみることにしたのです。それが通販サイトの『ABC coffee』です」

まずは通販サイトでスペシャリティコーヒーの需要を測ったと語る大塚さん

彼が2014年にサイドビジネスとして始めた『ABC coffee』は、スペシャリティコーヒーに特化し、毎月3種類の豆をセレクトして届ける定期購入型のサービスだ。「一杯のコーヒーを通じて、人と人を繋げ、地域コミュニティの絆を深める」ということをコンセプトに、全国のロースターが焙煎したコーヒー豆を発送する。このビジネスが軌道に乗ったことで、グーグルを退社し、リアル店舗の出店を決意した。

「通販サイトでは、コーヒーの味がわからないので注文し辛いというハードルがありました。今後はリアル店舗でコーヒーの味を楽しみ、気に入った人がオンラインのサービスを利用するという流れを作りたいと思っています。お客様への教育も大切です。もともとコーヒーに関心の薄い人は、オンラインで豆を買おうとは思わないですよね。カフェを通して、コーヒーの産地やロースターの焙煎の違い、抽出方法などに興味を持ってもらえたら、業界の裾野もどんどん広がっていくのではないでしょうか」

店舗ではオンライン同様に、月替わりで3種類のスペシャリティコーヒーを提供しているほか、樽に入れたコーヒーを窒素ガスとともに注入することで黒ビールのような泡が楽しめる「ニトロ」も用意。コーヒーのワークショップやテイスティングイベントなども行い、コーヒーの体験価値を高める工夫をしている。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。