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スタッフの「定着率アップ」につながる教育方法は? 飲食店経営者に実践方法を聞いた

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Photo by iStock.com/Wavebreakmedia

飲食業界の人手不足が叫ばれる昨今だが、人材確保と切っても切れないのが「スタッフ教育」だ。教育をしっかりと行えばサービスの質が上がるのはもちろん、スタッフの定着率も向上する。スタッフが定着すれば、常に人材不足に悩むという事態は避けられるだろう。

弊社では「スタッフへの教育で、工夫していることや課題は?」をテーマに飲食店経営者へアンケート調査を行った。その内容を解説していこう。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:117名
調査期間: 2017年8月9日~2017年8月17日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果はこちら

回答いただいた飲食店のスタッフ数は「3~5名」が42%、「6〜10名」が26%と、比較的小規模の店舗が多数。ならびに「スタッフへの教育者」は、「オーナー/経営者」が58.1%、「店長」が28.2%、「社員」が12.8%、「アルバイト」が0.9%という結果になった。回答店舗に個人店が多いため、店長以上の、経営に責任のある層が教育を行っているケースが大多数である。

回答者は小規模店が多いため、ほとんどの店舗が経営者、もしくは店長がスタッフ教育をしているようだ

マニュアルを使わないOJTが大半

まず、「スタッフへの教育において利用しているもの」を聞いた。最も多かった回答は、「特に利用しているものはない」で63.2%。大手チェーン店などでは考えにくいが、小規模店舗では業務を行いながらの実践的なOJTが行なわれている様子だ。次に、「マニュアル(文章)」を利用している店舗が35.0%、「外部講師による研修」を行っている店舗が5.1%、「マニュアル(動画)」を利用している店舗が3.4%と回答が続く。自由記入の「その他」には、「LINEで周知」「店舗内で研修会」等の回答があった。

マニュアル等を特に用いない店舗が63.2%と最も多かった

「気持ちをつかむ」が最難関ポイント

「スタッフ教育において不十分だと感じていること」という質問については、「モチベーションや積極性の向上」が62.4%と最も回答が多く、スキル云々よりも精神的な部分が問題視されていることがよくわかる。2番目は「基本的接客スキルの定着(47.7%)」、3番目には「会社(店)の理念やビジョンの浸透(41.9%)」という回答が続く。基本的な業務スキルの向上、そして理念や目標を共有し、スタッフのモチベーションを上げていくことに苦慮している店舗が多いようだ。

スタッフのモチベーション向上に苦慮している店舗が多いようだ

教育者不足も問題

次の質問は「教育を行う中で課題と感じていること」。一番多かった回答は「教えられる人が少ない」で44.4%。小規模な店舗では、新人スタッフのトレーニング中も限られた人数でシフトを回さねばならず、先生役のスタッフにも休みを与えなければならない。先生役が少ない場合は、それだけ新人のトレーニングにも時間がかかり、結果的に人件費を圧迫してしまうという悪循環に陥りかねない。

また、「一人で仕事をできるようになるまで時間がかかる」と回答した店舗は38.5%だった。先述のような状況に加え、積極的に覚えていこうとするスタッフ側の姿勢の欠如も匂わせる回答だ。また、「教えてもすぐに辞められてしまう(38.5%)」との回答も多い。やはり、スタッフの教育と定着という2つの要素は密接に関わっており、同時に改善していかなければならない問題と言える。

「教えられる人が少ない」という回答が最も多かった

個々へのコミュニケーションが重要

最後に、「スタッフ教育においての工夫」をいくつか取り上げてご紹介したい。

「個別に時間をとってミーティングをするようにしている」
「なるべく話しかける。異変にすぐに気付いてあげる」
「一緒に食事をして人間関係が深まってから、仕事の話しをして共通の目標を探る」
「その世代に自分の目線を下ろして会話をしたり、『これを伝えたい!』という時は、真剣に話し込むようにしている」
「コミュニケーション向上のために、バーベキューなどのイベントを定期的に開催している」

まず挙げられたのがコミュニケーションをしっかり取るということ。キメの細やかな教育をするには、やはり良好な人間関係の素地が重要ということだろう。

「目標を明確にしてモチベーションを高めるため、スキルチェックシートという自社オリジナルの評価基準シートを活用。何ができれば研修が完了し、何ができれば時給がいくらになるのかを、教育スタッフも本人もはっきりわかるようなシステムを取り入れています」
「最初に『覚え欲しい業務内容』を書面で説明して、出来ているか出来ていないかを擦り合わせしています」
「それぞれのレベルに合わせて毎月何を習得すべきかを伝えて、達成ならばお店で使える割引チケットの配布や、3か月連続で達成なら時給アップなどをしています」

スタッフのモチベーションを高めるには、明確な目標を持つことが重要になる。スキルチェックシートやノートを用いて、習得すべき技術を明らかにし、出来るようになったかどうかを定期的にチェックする。スキルが上がれば時給アップなど、やる気につながる報酬を用意している店舗も多いようだ。

Photo by iStock.com/psphotograph

「ブラザーシスター制度によるコミュニケーション強化」
「社員、アルバイトの壁がなく、お互いに意見を言える環境づくりをしている」

「話しやすい上司」がいるだけでも、新人スタッフの不安は軽減する。コミュニケーションが取りやすい環境を作り、定着率向上につなげていきたいものだ。

「叱るばかりでなく、褒めることを増やす」
「個々に応じた教育と、注意と褒めるの、メリハリをつける」
「成長したと感じられる時や出来なかった事が出来るようになった時には、当たり前かもしれませんが、しっかりと褒める」

数多く見られたのが「褒める」という意見。褒められれば誰もがやる気につながる。教育の基本かもしれないが、スタッフの気持ちを掴むために「褒める」ことは必要不可欠のようだ。

店舗によってベストな教育方法は異なる。しかし、やはり最も大切なのは、一方通行にならずスタッフの共感を得ながら教育を進めていくことではないだろうか。皆さんのお店でも、ぜひ参考にしていただければと思う。

「飲食店リサーチ」について
飲食店リサーチ」では、飲食店を経営する皆さまに、店舗運営に関する様々なアンケートを行っています。 アンケート結果は、飲食店の皆さまに店舗経営のヒントとして活用していただけるよう、レポート記事として公開されたり、 皆さまが利用する業務用商品やサービスなどの開発に役立つデータとなります。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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