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鳥貴族はじめ、大手飲食企業の値上げ相次ぐ。悩む個人店「利益を出してこそ店が継続」

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Photo by iStock.com/aon168

外食業界で値上げの動きが続いている。10月1日、280円均一の『鳥貴族』が一品298円に改定。『いきなり!ステーキ』も7月1日からリブロースステーキを6.5円/gから7.3円/gに、生ビールを480円から500円にするなど、値上げを実施した。他にも、『リンガーハット』が西日本エリアの店舗で8月から値上げを実施、また『すかいらーく』も10月から値上げを実施すると決算説明会で表明している。こうした値上げの波は個人経営にも及んでいるのだろうか。町の声を聞きつつ、外食産業の値上げについて考えてみた。

鳥貴族社長「苦渋の決断」、改正酒税法が値上げの一因に

「苦渋の決断だった」。『鳥貴族』の大倉忠司社長は9月29日付け日本経済新聞朝刊で、値上げに踏み切った理由を明らかにしている。「食材や人件費の高騰が続いていることに加え、6月の酒税法の改正も重なった。これほど値上げしなければならないと感じたことはない」。「酒税法の改正」とは、今年6月1日から施行された改正酒税法及び改正酒類業組合法で、酒類業者(製造・卸・小売)が酒を過度に安売りすることを規制したことを指す。法改正により、売上原価の額と販売費及び一般管理費の額を加えた「総販売原価」を下回る継続的な販売が禁じられたものだが、極めて抽象的に表現すれば「理論的に赤字になる価格で、お酒を販売してはいけません」ということである。

一部の大手小売店が理論的に赤字になる金額で販売できたのは、メーカーからの販売奨励金による。そうした販売方法が認められなくなることで、価格は正常化(値上げ)された。これは安売りの恩恵を受ける一般消費者には痛い。しかし、メーカーの都合で決まる販売奨励金を受け取れるかどうかで価格が決まるという、不公正とも言える取引から町の酒屋を守る、もっと言えば健全な市場経済を保護するためには必要である。

Photo by iStock.com/Halfpoint

都内で居酒屋を営む50代の男性Aさんは言う。「生ビールだけは値上げしました。原価の値上がり分を、通常の営業努力で吸収するのは難しいという判断です。もし値上げをしなかったら、(利益を出そうとして)お客さんにビールを多く勧めて……となってしまうでしょうね。そうするとお客さんも店を敬遠し、悪循環に陥ってしまいます。そうなるよりは、原価の値上げ分を価格に転嫁した方がいいと思いました」。

Aさんの店舗では、この値上げは特に影響はないという。「ウチのような小さな居酒屋だと、メニューで値段を確認しながら頼む人はいません。お会計をする時に、トータルで『高い』『安い』の判断をされます。その意味では、生ビールの値上げの影響はゼロと言っていいでしょう」。

これに対し、千葉県でお好み焼き屋を経営する20代の女性は「生ビールは元々、多少利幅があったので値上げしていません。これまでの利幅の中で何とか吸収できています」と話した。個人経営店舗は、それぞれの業態で扱う食材も違えば、料金設定も異なる。その店によって違いが出るため、一律に扱えないのは確かである。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/