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FL比率は驚異の39%! 繁盛タイ料理店『999』に学ぶ、「食材費・人件費」の高騰を乗り切るヒント

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お話を伺った株式会社カオカオカオの代表・新井勇佑氏

最近、飲食業界では値上げが相次いでいる。天候不順による食材費の高騰や、慢性的な人手不足による人件費の上昇に加え、6月の酒税法の改正も追い打ちをかけているようだ。しかし、FLコスト(※売上に対する、食材費と人件費の割合)を上手にコントロールして、この危機を乗り越えている個人店もある。タイの屋台料理を提供する『999(カオカオカオ)』だ。

2014年9月にオープンした中野店は、パクチーを山盛りにしたオリジナル料理やドリンクで注目を集めたり、芸能人がひそかに通う「隠れ家」としてメディアに紹介されたりしたことで、予約がとれない人気店に成長した。今年の6月には新宿3丁目に2号店がオープンし、11坪の面積で月商730万を叩き出している。FL比率39%、営業利益率37%という高収益モデルの秘密を探った。

経営者に必要なことは「感情とビジネスを切り離して考えること」

代表の新井勇佑氏は、大学の研究員として臨床心理学を学んでいたが、町田の料理店で働いたことをきっかけに、タイ料理研究に没頭していったという。店を開くにあたって、現地を含めて3000食以上のタイ料理を食べ歩き、本場の味を再現することに力を入れた。新井氏は当時のことをこう振り返る。

「飲食の世界に入って気づいたのが、FLコストのコントロールができていない店が意外に多いということです。飲食業界は職人気質の人が多く、FLやPLをしっかり学んでいる人は少ないと感じました。コース設定や新しいメニューを作ることに時間を割く人は多くても、FLやPLを専門的にやっている人は少ない。仕入先を探す努力や工夫を怠っているところも見受けられます。例えば、『昔からつきあいがあるから』『お世話になったから』という理由で、知り合いから割高な食材を仕入れるのはよくあることです。そういう気持ちの部分と、ビジネスを割り切れない人が多いように感じます」

新井氏はさまざまな店を食べ歩いたり、ネットや本で調べたりしてデータを集め、国内の仕入れ先を開拓した。たとえばパクチーは宮古島や佐賀など、首都圏と比べて「物価が安いところ」から仕入れることで、タイから食材を輸入した場合の半分程度のコストに抑えている。

色鮮やかな外観は本場タイを彷彿とさせる

オペレーションの無駄をなくすことで人件費を下げる

新井氏は飲食店で働くうち、オペレーションに関しても「もっとこうしたほうがいいのではないか」という改善点に気づいたそうだ。

「オペレーションもよく考えないと人件費の無駄が発生します。例えば、厨房に『あおり』というストーブを使うところがあるのですが、そこに立つ料理人は火を使うことだけに専念していたほうが調理のスピードがアップします。この人にいかに“他のことをさせないで済むか”という視点で配置やスタッフの導線を考え、連携したときに『1+1=3』になるようなオペレーションを意識しています」

水のおかわりも頻繁に頼まれると、スタッフを増員する必要が出てくる。新宿店ではウォーターサーバーを設置し、付け合わせのスープやサラダとともにセルフサービス方式を取り入れた。ほかにも、スタッフがすべての客席に直線で移動できるようテーブルを配置するなど、最小の人数で切り盛りするために細かな工夫を凝らしている。

「調理も提供までにすごく時間がかかるものはやらないようにしています。新宿店は、ランチはカオマンガイとカオカームーの2種類だけを提供する専門店にしました。カオマンガイはゆでた鶏を切るだけ、カオカームーは豚足を煮込んだものを盛るだけです。昼はアルバイトでも切り盛りできるようにして、社員の力を温存しています」

スタッフひとりが働ける時間は限られている。社員に負担がかかりすぎないよう、シフトやオペレーションを工夫するのも離職を防ぐ上で重要な取り組みだろう。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。