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元甲子園球児・弓削啓太シェフがパスタ界のW杯で準優勝。高校卒業後に歩んだ新たな道で栄誉つかむ

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「バリラ・パスタ・ワールドチャンピオンシップ2017」でファイナリスト(準優勝)となった弓削啓太氏

元甲子園球児で『Ristorante QUINTOCANTO(リストランテ・クイントカント-大阪市北区)』のシェフ・弓削(ゆげ)啓太氏(31)が、9月27日~29日にイタリアで行われた「バリラ・パスタ・ワールドチャンピオンシップ2017」でファイナリスト(準優勝)となった。「パスタ料理のW杯」とも呼ばれる同大会で予選、準決勝と勝ち進み決勝ステージに進出。優勝は逃したものの、高いポテンシャルを示した。この快挙に甲子園でともに戦った同期のエースも熱いエールを送る。

イタリアの伝統に日本のタッチを加えたパスタ

今年で6回目となる同大会は35歳以下、イタリアンレストランで5年以上の勤務経験があり、英語でコミュニケーションが取れるという条件で世界から選ばれた13か国の20人のシェフが腕を競った。27日ミラノでの予選ステージ「シグニチャーディッシュ」(看板メニュー)は事前に登録した自店のメニューを1時間以内に作る。弓削氏は「スカンピとレンズ豆のフジリ」を作り、上位10人に残り翌28日の準決勝ステージへ進んだ。

準決勝ステージは10人ともパスタとトマトでつくる「パスタ・アル・ポモドーロ」を作り、その出来栄えを競う。ここも上位3人に残り、29日の決勝ステージ進出を決めた。

舞台をパルマに移しての決勝ステージは初日と同じ看板メニューを作るが、時間は予選の半分の30分と制限される。優勝はアクルシオ・ルタ氏(イタリア)で、準優勝が弓削氏とオムリ・コーエン氏(イスラエル)。優勝したルタ氏は現在、米国のサンディエゴのレストランに勤務しており、オバマ前大統領にも料理を出したことがあるという。

第1回の山田剛嗣氏以来の日本人による優勝は逃した弓削氏だが、昨年の宮本義隆氏に続く準優勝で日本のパスタのレベルの高さを示した。現地からの報道でも「タイムアップの音と同時に最後のガーニッシュを加えるという、完璧なタイミングだった。彼の料理にはイタリア伝統のレンズ豆と魚が入っているが、それに日本のタッチを加えている。アンチョビストック、柚子、味噌、日本のバジルなどだ」(i-Italy)と詳しく伝えられている。

決勝ステージで作った「スカンピとレンズ豆のフジリ」

料理はバランス、素材の長所を活かすことが大事

この結果に弓削氏は「ホッとしました。普段、店で出している料理に近い状態、『クイントカント』はこういうパスタを出しているというのを、時間内にどれだけ伝えられるかという勝負でした。そういう意味で店の料理が評価されたと感じるので嬉しいですね」と満足感を口にする。

パスタを作る上で気をつけていることはバランスだという。「どの料理でもバランスをとることには気を配ります。お皿の中でのバランス、あるいはコースの中でのバランス。甘すぎてもいいんです、それを相殺する別の味があれば。甘すぎる物がある方が料理として角が立って、輪郭がしっかりしてきます。その輪郭を丸めるのではなく、それに対する苦味をつけたり、酸味をつけたりでバランスを取る。素材の長所を活かすことが大事です」。

大きな勲章を手にした弓削氏だが、佐賀県立鳥栖高校2年時に甲子園出場という別の勲章も持っている。2002年夏の甲子園1回戦、桐光学園戦でベンチ入りし、0-0の延長11回裏無死一、二塁の場面で代走として出場。0-3とリードされた延長13回裏二死走者なし、最後の打者となるかもしれない場面で打順が回り、四球を選んで次打者につないだ(試合は桐光学園が3-0で勝利)。

「ベンチ入りしていましたが、出ることは予期していませんでした。代走で出て、そのまま守ったことのないファーストに入りました(本来はサード)。高校で初めて出た公式戦が甲子園の延長戦です(笑)」と振り返る。甲子園での出場機会はわずかだったが、高校野球で学んだものは今に生きているという。「3年間続けたことで体力的、精神的に鍛えられたというのがあります。それと野球もレストランもチームプレーですから、チームでやっていくことに関しては自信があります」。準優勝の時に「店が評価されたと感じる」と喜んだのも、そんなチームプレーの精神なのかもしれない。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/