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朝9時オープンの型破りなワインバー『ウルル』。きっかけは「好きな仕事を続けたい」という思い

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2016年にワインバー『Uluru(ウルル)』をオープンした廣中祐二さん

飲食店の中でも、特にアルコールを出す店は夜の営業が当たり前。午後から仕込みを始めて夕方にオープン、その後、終電まで店を開けて自宅に帰るのは深夜というケースも珍しくない。そんなアルコール主体の飲食店の常識を覆すワインバーが広島にある。平日の営業時間は午前9時~午後8時、カフェや食堂ならいざ知らず、ワインバーとしては型破りの営業スタイルだ。今回はこのワインバー『Uluru(ウルル)』の店主・廣中祐二さんにそのワケを聞いた。

自身の体調に不安を感じながらも「ワインにもっと関わりたい」

海外からも多くの人々が訪れる平和記念公園から、橋を1本渡った場所にある『ウルル』。「ワインの魅力とともに、新しいライフスタイルを知るきっかけの場所になってほしい」との思いで2016年6月にオープンした。営業時間は月曜から金曜は午前9時~午後8時、土曜は午後10時までで、月に一度、満月の日のみ満月ワインバーと称し午後6時~午前0時の営業になる。

店主の廣中さんがワインに魅了されたのは、調理師学校に通っていた頃のこと。卒業後は1年ほどバックパッカーとしてヨーロッパを回り、帰国後、飲食店に勤めた。その後、島根県のワイナリーで1年ほどワイン造りを学ぶ。さらに広島市にある自然派ワインショップ『ハナワイン』に勤めるなど、廣中さんの生活には常にワインが寄り添っていた。その結果、「店を持ち、もっとワインに関わりたい」という思いを強く抱くが、一方で、飲食店に勤めていた頃のある経験から自分の店を持つことに二の足を踏んでいた。

「当時、夜が中心の営業スタイルで体調を崩してしまったことがあって……。自分の体に無理をさせていることに気が付いたんです。それでも何とかワインに関わる仕事をやりたいと思って、それで思いついたのが、夜中心の営業ではなく、明るいうちからワインの楽しみ方を提案する今のスタイルでした」。

料理には無農薬・有機栽培の食材も使用

オープン前は同業者から賛否両論! 今は情報交換の場に

「コーヒーや紅茶のように、朝に1杯のワインを楽しむのもいいのではないか。日本では馴染みがなく躊躇してしまう昼飲みを、もっと自由に楽しめるようなライフスタイルが提案できるのでは」。そう考えた廣中さんだったが、この型破りの営業時間は同業者からも賛否両論。背中を押してくれる人がいる一方、「絶対成り立たない」という声をもらうこともあり、廣中さん自身も不安を感じながらのスタートだった。それでもオープンから1年が過ぎ、この画期的なワインバーは広島の街に馴染みつつある。大きな利益はないけれど、売り上げはゆるやかに右肩上がりが続いている。

あくまでもワインを楽しんでもらう店だからと、あえてランチメニューなどは設けず、料理はワインにあうアラカルトが中心。「朝起きて朝日を浴びて、1日をスタートしてほしいんです。だから夜からずっと飲んでいて、うちで数軒目という人はお断りしているんです」。その言葉通り、オープン後の店内にはすがすがしい空気が漂っている。ちなみに『ウルル』に朝訪れるのは、平日休みが多い美容師やアパレル関係者らサービス業の人、また同業者である飲食業界の人の姿も多くみられる。

「夜に営業する店だとライバルとお客様を取り合うことになるけれど、僕の店のスタイルだと他の飲食店とお客様を共有できるんです。昼間うちに来たお客様に夜におすすめの飲食店を紹介したり、その逆もあります。そんな流れができているんです」。

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。