2017年の飲食業の「倒産」は766件。景気回復しても、倒産件数は前年より2割増。その理由は?
1月16日、東京商工リサーチが飲食業の倒産状況についてまとめたデータを発表。2017年(1~12月)の飲食業の倒産は766件で、前年より19.8%増加しているとした。
倒産した企業の88.7%が負債1億円未満の小・零細規模だが、なかにはステーキ店『KENNEDY』を展開していたステークス(負債13億8000万円)等の大型倒産もあった。業態別にみると、「食堂・レストラン」が203件(前年比36.2%増)、日本料理・中華料理・フランス料理店などを含む「専門料理店」が203件(同13.4%増)、居酒屋などを含む「酒場・ビヤホール」が116件(同36.4%増)と続き、いずれも前年よりも倒産件数が増加していることがわかる。
好景気でも飲食業の倒産は増える「矛盾」
企業の倒産件数は景気を測る統計指数のひとつだ。最近は「いざなぎ景気」を超える好景気だといわれているが、消費者にその実感は少ない。
朝日新聞社が昨年11月に実施した世論調査によると、景気がよくなったかどうかの実感について、「まったく実感していない」が33%、「あまり実感していない」が49%となり、「実感していない人」の合計は82%にのぼることがわかった。好景気だけど飲食業の倒産が増加してしまう矛盾は、景気回復による恩恵が一般消費者にまで浸透していないことが大きな原因だと考えられる。
約8割が「販売不振」を理由に倒産
倒産した飲食企業はどのような理由で倒産に至ったのか? 東京商工リサーチによると「販売不振」が621件で全体の約8割。次いで、「事業上の失敗」が42件、「赤字累積」が34件と続く。
ほとんどの倒産企業が「販売不振」を理由に倒産に至っていることを考えると、数あるライバルの中でいかに生き残っていくのか、その勝負に勝つことが大切であることがわかる。たとえば昨年倒産したステーキ店『KENNEDY』も、『いきなり!ステーキ』という強力なライバルを前に苦戦を強いられたことが想像できる。ライバルにない魅力をどう打ち出していくのか、「味」「サービス」「価格」とあらゆる面を比較しながら勝負どころを見極める必要がある。
特に最近はひとつ流行りの業態が生まれると、一気に似たような店が増える傾向にある。トレンドを取り入れることは間違いではないが、他の店舗にない価値を追求していかなければ競争には勝ち残れないし、トレンドが終焉してしまうと同時に客足も落ちてしまう。時代をとらえながら、かつ個性を追い求める戦略的な店づくりが今後も求められていくだろう。
また見逃せないのは、仕入れ価格の高騰や、人手不足を背景にした人件費の増加により、店舗の運営コストが徐々に上がってきていることだ。これにより利益を出しづらい経営体質となり、結果、「赤字累積」によって倒産を招いてしまうこともある。原価率を抑える工夫や、生産性を向上させる工夫など、さまざま手法を駆使して利益を上げやすい体質にしていくことが、今後の経営の大切な鍵になりそうだ。