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野菜高騰に悩まされる飲食店の生の声。長引く苦境はいつまで続く?

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Photo by iStock.com/patrickheagney

野菜価格の高騰が続いている。秋の天候不良により、野菜の収穫量が少なかったことが大きな原因だ。家庭ではもやしや豆苗など価格が安定している野菜で難を凌ぐことができるが、飲食店の場合はそうはいかない。実際にどのような影響が出ているのか? 飲食店の生の声を聞いた。

値上げは信頼に関わる問題「なかなか難しい」

まずは都心の大型商業ビルに入っている人気レストランで、メニューの考案や仕入れを担っている料理長Iさんに話を聞いた。

「例年に比べて葉ものがかなり高いなと感じています。ただこういう事態になる前から、写真やサンプルを作って(メディアやお客様に)発信してしまっているので、食材を減らすことも、急に値上げすることもできない。どうしようもないです」

Iさんの店舗は野菜がメインの業態ではないものの、ほとんどのフードメニューにサラダをセットとしてプラス。また、メインディッシュにロールキャベツなども出しているため、野菜は欠かせないと話す。

「大型店の場合は仕入れの量自体が多いので、1kgあたり100円でも上がったら大変なことになります。うちは野菜がメインではないので、急に赤字になることはないですが、それでもやはり苦しい。とんかつ屋などキャベツが必要不可欠な飲食店はもっと大変だろうなと思います。個人店であれば、値段を上げるのも手かなと考えてしまいますが、値上げとなるとお店の信頼にも関わるので、なかなか難しいと思いますね」

Photo by iStock.com/Wavebreakmedia

苦しいのは「うちだけではない」

続いて個人店にも話を聞いた。都内にある隠れ家的な雰囲気のカフェで、ランチタイムともなればすぐに席が埋まってしまう人気店だ。メインメニューには、皿のおよそ半分に新鮮なサラダが添えられている。普段なかなか野菜を摂れない人にも嬉しいボリュームで、オープン当初から値段は変わらないまま。オーナーのCさんに野菜の高騰について聞くと「でも、仕方ないのかなぁ」と、穏やかな口調。

「野菜のみならず、果物やお米も全体的に不安定だなと感じています。毎年クリスマス直後に値段が一気に下がる苺も例年のようには下がりません。“どうしたらいいかな”とは思いますが、どうしようもできない。お客様のことを考えると、量を減らすことも、値段を上げることもできませんから」

葉ものの一部は「家族が畑で作った野菜を送ってきてくれる」ということで、「そこは助かっています」とのこと。しかし、ほとんどの野菜は「必要な分を購入しています。昨年は天候が不安定な日が続いたので、飲食店だけではなく、農家の皆さんも苦しい時期だと思います。うちだけじゃない。焦っても仕方ないし、きっとそのうち終わりが来る。だからいまは “仕方ない”と思って耐えるしかないのかなと思っています」と話してくれた。

Photo by iStock.com/Wavebreakmedia

2月に入って野菜の価格は徐々に回復傾向

「そのうち終わりが来る」。その言葉通り、野菜の高騰にも終わりが見えてきた。農林水産省が1月31日に発表した「野菜の生育状況及び価格見通し(平成30年2月)について」によると、にんじん、白菜は引き続き「高値水準で推移」だが、だいこん、キャベツ、ほうれん草は「高値水準ではあるが、1月の水準からは徐々に回復」し、2月後半には平年並みに戻る見込み。レタスやねぎといった他の野菜に関しても「平年並みに戻る」もしくは「平年並みで推移」という予想になり、価格が落ち着く傾向を示している。飲食店は仕入れ値をマメにチェックしてみるといいだろう。

また、1月下旬の降雪や低温については、主産地等からの聞き取りによると「収穫遅延による一時的な出荷の減少要因となったものの、今後の出荷数量や価格に大きな影響を与えるものではない」ということで、まずは一安心だ。

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逆井マリ

ライター: 逆井マリ

フリーライター。音楽、アニメ、ゲーム、グルメ、カルチャー媒体などに取材記事を執筆。現在の仕事に就く前に、創作居酒屋、イタリアン料理店での業務経験あり。写真は大好きなアイスランドで撮影したもの。