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飲食店を開業する際に必要な「資格」と「届出」。調理師免許は必要? 不要?

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Photo by iStock.com/Yagi-Studio

飲食店開業には様々な準備が必要だ。物件探しやメニュー開発、スタッフ教育、広告など、やらなくてはいけないことは数え切れないほどある。何から手をつけていいか悩む方も多いのではないだろうか。そこでここでは、まず一番最初に取得しなくてはならない資格や届け出について改めてまとめておこう。

飲食店を開業するのに必ず必要になる資格

■食品衛生責任者

飲食店等を営業する場合、衛生の自主管理を行う必要があり、その責任者として食品衛生責任者を置くことが義務付けられている。この食品衛生責任者になるには、下記のいずれかを満たしている必要がある。

・栄養士、調理師、製菓衛生師、ふぐ包丁師、食品衛生管理者等の資格を持っている者
・食品衛生責任者養成講習会の課程を修了した者
・その他、知事が食品衛生に関して同等以上の知識を有すると認めた者

食品衛生責任者養成講習会とは、各都道府県の食品衛生協会が開催している講習。公衆衛生学、食品衛生学など計6時間の講習を受講すれば取得できる資格食品衛生責任者の資格が取得できる。受講費は1万円ほど。

全国共通の資格なので、例えば神奈川県で取得して、東京都内で開業するといった場合も基本的には問題ない。また、保健所に店舗の営業許可申請を出す際には、交付された食品衛生責任者手帳などを提示する必要がある。開業する3カ月くらい前までには取得しておきたい。1~2カ月先まで予約が埋まっていることもあるので、早めに確認しておこう。ちなみに横浜市の場合、講習会は原則として毎月2回開催。また、コロナ禍を背景に、eラーニングによる講習会も開催されている。

■防火管理者

日本防火・防災協会が全国各地にて講習を開催している。収容人数が30名以上の飲食店を開業する場合には取得が必要。収容人数30名以下の場合は不要とされている。ただし、店舗の席数ではなく、従業員を含めての30名以上となるため注意が必要だ。

防火管理者資格は、「乙種防火管理者」「甲種防火管理者」の2種類。収容人数が30名以上、延べ面積が300平方メートル以上の場合の甲種講習では、防火管理にかかる訓練及び教育、消防計画など、2日で約10時間の受講。収容人数30名以上、延べ面積300平方メートル未満の乙種講習は、甲種の基礎的な知識及び技能を1日約5時間で学ぶ講習となる。また、受講料は、甲種講習は8000円、乙種講習は7000円。

Photo by iStock.com/Yagi-Studio

飲食店の開業に調理師免許は不要?

飲食店開業には必須と思われがちだが実はそうではない。ちなみに「調理師」とは名称独占資格と言われる国家資格であり、有資格者以外が調理師を名乗ることは法令で禁止されている。

メリットとしては、調理師免許があれば、先述の「食品衛生責任者」の講習が免除される点だ。また、「ふぐ調理師」になるためにも必要な資格である。飲食店開業に必ず必要な資格ではないが、安心、信頼面でもメリットがあると言えるだろう。

飲食店開業に必要な申請や届出

■飲食店営業許可申請
食品を調理したり、客に飲食させる営業をする場合には、必ず保健所に申請をしなくてはならない。喫茶店営業許可申請というのもあるが、こちらは「酒類以外の飲物、または茶菓を客に飲食させる営業」なので、ほとんどの場合が飲食店営業許可申請になる。

飲食店営業許可は、申請すれば許可されるという単純なものではない。厨房設備や手洗い、換気扇、食器棚など、店舗の設備面においてかなり細かい決まりがある。そのため、施設基準に合致していることを事前に確認することを目的に、工事着工前に図面を持参して所轄保健所の食品衛生担当に相談する必要がある。

申請時には、店舗の見取り図、手数料(東京では18,300円)、食品衛生責任者手帳、水質検査成績書などが必要になる。工事完了の2週間から10日前を目安に申請しよう。万が一、申請忘れなどで無許可営業となった場合は、食品衛生法で罰せられてしまうのでご注意を。

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■菓子製造業許可申請
いわゆるパン屋やケーキ屋など、菓子等を製造する営業をする際に必要な許可。こちらも設備面で細かい基準が決められている。イメージとしては小さな工場のように、厨房を密室状態に囲う必要があるのだ。通常の飲食店よりも内装工事費が高くなる可能性がある。

ちなみに、カフェやレストランでパンやケーキを提供する場合はどうかというと、菓子製造業にあたらない場合が多い。菓子製造業に該当するのは、テイクアウトを中心で営業する場合、卸業をおこなう場合だ。詳しくは保健所に相談をしてみよう。

■深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜0時以降も酒類を提供する場合に必要な届出。届け出先は、保健所ではなく警察署になる。お店の周囲の略図や見取り図、営業許可証や賃貸契約書のコピーなど提出物は多い。

ただし、主食と認められる食事を提供している場合は、届出の必要はないとされている。例えば、ラーメン、牛丼、パスタなどを中心に提供している店ならば、届出なしで問題ないということだ。また、勘違いされやすいが、この届出は風俗営業許可とは異なるので、お店で「接待」をしてはいけない。あくまで、深夜にお酒を中心に提供するお店の届出ということを覚えておこう。

■開業・廃業等届出書
個人事業で開業する場合に必要な届出。これは税務署の管轄になる。特に事前に準備するものなどはなく、直接窓口まで行って、その場で済ませることもできる。また、最高65万円の控除が受けられる青色申告にする場合には、「青色申告承認申請書」も同時に提出しよう。

開業・廃業等届出書は事業開始から1カ月以内、青色申告承認申請書は2カ月以内に提出しなくてはならない。営業スタートした最初の定休日などに、忘れずに税務署で手続きを行おう。

以上、開業前にかならずおさえておきたい資格と届出をまとめてみた。開業直前で時間がない場合は、行政書士などの専門家に依頼する方法もある。飲食店の開業を決めたら、早い段階で一度時間をとって直接保健所などに相談に行ってみることをおすすめする。

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大槻洋次郎

ライター: 大槻洋次郎

父親が喫茶店を営む家庭に生まれ、31才の時にカフェで独立開業。個人経営のこだわりカフェの先駆者的存在となった。現在は大手カフェスクールや展示会での講師活動、飲食店の開業支援などを行なっている。現場目線の初心者でもわかりやすいノウハウに定評がある。メディア出演も多数。得意料理はパスタ。