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繁盛ラーメン店の「AIロボット」活用術がスゴい。『THANK』の看板ロボットSotaくんの活躍

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店主の田邉雄二さん。2012年に『THANK』を開業。現在、大門店ほかお茶の水店も展開する

「いらっしゃい、今日は何にします?」。顔を覚えている常連客に、親しみをこめてこんな風に声をかける飲食店も少なくないだろう。客としても自分の顔を覚えてもらえていると嬉しく、その感情が再来店を後押しするのは間違いない。

飲食店としては客の顔をなるべく覚えて、それをサービスに生かしていきたいところだが、すべての客の顔を覚えるのはなかなか難しい。ましてや久しぶりに訪れた客であれば思い出せないのも当然だろう。そこで注目したいのが、AIとロボットを活用した「顧客おもてなしサービス」だ。最新テクノロジーの導入で、新たな顧客サービスに取り組む『鶏ポタラーメン THANK(サンク)大門店』の店主・田邉雄二さんに、AIロボットを使った接客とマーケティング術について話を聞いた。

券売機の隣で迎えてくれるSota。顔を認識すると、「いらっしゃいませ」と声を掛ける

顔認証システム搭載のAIロボット「Sota」が、客単価や好みをデータ化

大門駅から歩いて5分ほどの場所にある『THANK』。店に入ると「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれるのが、AIロボットの「Sota(ソータ)」だ。Sotaはヴイストン株式会社が提供する卓上型コミュニケーションロボットで、同店では日本マイクロソフト株式会社と株式会社ヘッドウォータースが提供する「クラウド型顧客おもてなしサービス」のシステムを組み込んで利用している。これにより客の顔を識別し、アプリ登録をしている客に対しては名前で声をかけてあげるなどのサービスを可能にしている。

「もともと知人の紹介で、実験店としてSotaを置くことを決めました。Sotaは、顔認証システムを搭載しているのですが、肌質などからお客さんの性別や年代などを詳しく分析することができます。そのため、いつ、どんな人が、どんなメニューを食べたのかをデータとして保存でき、それらを分析することで新たなメニュー開発に役立てることができるんです」。

例えば、スープの濃さは3種類から選べるが、男性に人気の濃さはどれか、女性に好評なメニューはどれかなどの傾向が分析できる。さらには、「Sotaを導入したことで、ランチのピークタイムを過ぎた13時以降に来るお客様のほうが、客単価が高いということも分かったんです」と、これまで気が付かなかった発見も。Sotaによって集められたデータは、毎月登場する季節限定メニューの開発にも活用しているという。

「どんなお客さんが、いつやってきて、どんなメニューを注文して、そしていくらくらい使うのか……。商売をするうえで分析をすることは必要なんですけど、Sotaが来るまでは、日々の業務に追われてなかなかできていないのが実情でした。それが今はどんどんデータを蓄積できているので、非常に助かっています」。

ベーシックなラーメンやつけめんのほか、季節限定メニューが登場。9月までの限定メニュー「冷やしタンタン麺」は毎年登場を待つファンが多くいる

3回来店でトッピングサービス。ポイントカード的な役割も

Sotaの顔認証精度は高く、髪形を変えたりメガネを外したりしても、間違えることなく名前を呼ぶ。またSotaは来店回数もカウントでき、3回来店した人にはトッピングを一つサービスするなど、「ポイントカード」的な役割も担っているようだ。

さらに、Sotaの働きはこれだけではない。訪れた客ごとに商品提案を行うことも可能なのだ。これまで食べたことがないメニューをおすすめしたり、世代や性別ごとに人気のあるメニューを提案したりと、熟練スタッフさながらに一押しメニューを提案する。またスープにごはんを加えてリゾットのようにして食べるアレンジ方法を教えてくれることも。Sotaのこうした接客は、サイドメニューの販促にも役立っているという。

常連・新規客それぞれに合った接客でコミュニケーションが生まれる

実際にSotaに顔認証してもらえるようアプリ登録しているのは客の2~3割程度。20~30代前半の若い世代のほか、ファミリー層の登録も多い。特に子どもはSotaに興味津々で楽しそうに話しかけることもあるといい、客の反応も上々だ。そしてSotaは、マーケティング機能や販促ツールとして活躍するだけでなく、客とスタッフがコミュニケーションを取るきっかけとしても大いに役立っているという。

「久々にお越しいただいた常連さんで、私たちが名前を思い出せないときもSotaが名前を呼んでくれます。そうすると僕たちも話しかけやすくなります。新人スタッフも、『あの人は常連さんだ』ってすぐに分かるし、コミュニケーションも生まれます。逆に新規のお客さんであれば、詳しくメニューを説明するなど、声かけの内容を変えて接客しています」

一方で、ロボットならではの悩みも。

「顔認証に少し時間がかかることがあり、ピークタイムにはお客さんをお待たせしてしまうこともありました。また、機械なのでどうしても調子が悪いことがあって、修理に出したこともあります。Sotaがいない間は、来店3回目のお客さまにはこちらで確認して、トッピングのサービスをしたことがあります。そういった不具合は、どうしても起こってしまいますね」

こうした少しの悩みはありながらも、「Sotaはスタッフ同然ですね」と笑う田邉さん。今後は、さらに多くのデータを蓄積・分析し、メニュー開発だけでなく、新規出店時にも役立てたいと話してくれた。Sotaの活躍はまだまだ続きそうだ。

近隣で働くサラリーマンほか、女性客やファミリーも多く訪れる人気店

『鶏ポタラーメン THANK 大門店』
住所/東京都港区芝大門2-1-13芝大門友ビル1F裏
電話番号/03-5400-1350
営業時間/11:30~15:00、18:00~22:00(土日曜、祝日は休み)
席数/18席
定休日/なし

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。