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東京から移住して開業、「過疎」の町で繁盛店へ。北広島町『芸北ぞうさんカフェ』の「集客術」

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「田舎に人を呼ぶにはどうするか」考えた結果、月に数本のイベントを開催し人気店に

現在、日本では「地方創生」を推進し、地方の活性化に取り組んでいる。東京一極集中を見直し、地方を盛り上げることで日本全体の底上げを狙っているのだ。こうした政策の影響、さらには2011年の東日本大震災のあおりを受けて東京から地方へ移住する人が増加。地方出身者がUターン・Iターンするケースも多く、「田舎暮らし」は現代のライフスタイルとして広く受け入れられるようになってきた。

移住者の中には飲食店を開業する人も多くいるが、首都圏とは異なる地方ならではの環境に、不安に感じたり、息詰まったりする人も少なくない。そこで今回は、東京から広島県北広島町へ移住しカフェを開業した植田紘栄志(うえだ・ひさし)さんを取材。地方へ移住して飲食店を開く、その実情、そして成功の秘訣についてうかがった。

『芸北ぞうさんカフェ』を運営する株式会社ミチコーポレーション代表の植田紘栄志さん

東日本大震災を機に「ハードな過疎地」である北広島町へ移住

広島県北部、島根県との県境にある山間の町・北広島町。広島県というと瀬戸内の温暖な気候のイメージがあるが、北広島町は平年降雪量が5メートルを超える場所もあるという豪雪地帯だ。東京23区を合わせたよりもさらに広い町だが、ここに暮らすのは1万8,000人余り。過疎化と高齢化の問題を抱える、絵に描いたような田舎町だ。そんな北広島町に、年間1万人以上が訪れる人気カフェがある。それが『芸北ぞうさんカフェ』だ。

『芸北ぞうさんカフェ』を運営するのは、株式会社ミチコーポレーション。代表の植田紘栄志さんは、2011年12月に東京から北広島町へ移住した。東京では、象の糞で作るオーガニック雑貨「ぞうさんペーパー」を開発したほか、スリランカ雑貨などを販売。そんな植田さんに転機が訪れたのは、2011年3月のこと。東日本大震災がきっかけだった。

東京から祖母の故郷である北広島町への移住を決めた植田さんは、1年をかけて準備。新しい物件を見つけ、会社の機能を移した。そして時間をかけて町での人間関係を構築し、ついにオープンしたのが『芸北ぞうさんカフェ』だった。

カフェがあるのは、広島市の中心地から高速道路を使って1時間半。最寄りのICからも30キロメートル以上離れ、スキー場があること以外、周辺に目立った観光地があるわけではない。「僕は、北広島町を『ハード過疎地』とよく言うんです。普通のビジネスマンであれば、ここでカフェをオープンするなんて考えないでしょうね」と植田さんは話す。確かに、ひいき目に見ても決して集客が見込めるとは思えない立地だ。集客に対する不安はなかったのだろうか?

「やっぱり商売をするなら都会に近いほうがいい。せめて車で30分圏内に広島市のような街があるといいのですが、今の立地ではなかなか難しいものがあります。ただ僕の場合、カフェ以外にも東京でやってきたビジネスを並行して行っており、だからこそカフェを運営できるという面もあります。それでも、地元での集客だけでは厳しいので、遠くから人が呼べるようなカフェにしようと店づくりを行ってきました」

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。