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「飲食業は賭けではない」。ポルトガル料理『クリスチアノ』佐藤幸二氏の“ハンパない”経営哲学

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フラセジーニャ ポルト式

月給大幅減の苦い思い出、雇われ社長での失敗経験を糧に

ポルトガル料理というニッチな部分に目をつけて大胆に成功させた後、他業態に手を広げつつ、応えきれないニーズを集めるなど、その柔軟な姿勢は経営センスの良さと言うべきであろう。それもそのはずで欧州での修行から帰国し、独立前に外食企業の雇われ社長を8年間経験している。ここでの経験が今に生きているのは間違いない。

━━社長時代に得た経験は今にどのように生かされていますか

佐藤 失敗で得るものは大きいです。私はオープンから半年以内にカレー店を一軒潰しています。U字型のカウンター席の真ん中にガスコンロを置いて、50リットルぐらいの大きな寸胴でカレーを作りました。夜はイタリアンバルにして。

━━大きな鍋だと、美味しいイメージがありますね

佐藤 それが大失敗でした。小麦粉入りのカレーを作ったのですが、夜の間に冷却されず、鍋が冷めないためカレーが発酵してしまいました。翌朝、鍋の蓋を持ち上げるぐらいに膨らんでいて、酸っぱくて食べられたものではありません。そのため小さめの寸胴で作っては冷却、作っては冷却を繰り返し、ランチ終わりにはカレーがないという状態です。さらに内装工事の費用、排気、排水などのいわゆるB工事と呼ばれる費用が口頭で聞いていた金額と異なり、予算を大きく超えてしまいました。そんなことが積み重なり業態変更です。

━━想定外のトラブルが続いてしまったんですね

佐藤 自分なりにデータを取り、それまで蓄積されているデータがありました。それをもとに、家賃は高くても集客してワンドリンク、ワンオーダーでもいけると計算していたんです。それが工事の費用が高く回収が難しくなり、客も入りません。僕の中で見誤りがあったわけで、店を始める前は、できる限りうまくいくための算段を取らないといけないということです。その失敗で、大幅な減給も経験しました。ただ、前の会社には感謝しています。そういう経験をさせてもらいましたから。

過去の苦い経験も、現在の糧になっていると語る佐藤社長

飲食は賭けではない、二重三重のセーフティーネットが必要

欧州で修行し、雇われ社長としても経験と苦労を重ね、満を持しての独立。飲食業で独立したものの、うまくいかずに店を閉めてしまうことが多いのがこの世界の特徴である。これから独立をしようという人へのアドバイスを聞いた。

━━飲食の世界は、独立しても成功しないパターンが多いように思いますが、どのあたりに問題があるのでしょうか

佐藤 飲食店をやる方の中にはギャンブルをやる感じで、とりあえず店を出せ、みたいな方もいます。それで失敗する方は少なくありません。自分が思っているより厚みのあるリスクヘッジをやらないといけないでしょう。

━━具体的にはどのようなリスクヘッジでしょうか

佐藤 初期投資よりも月額の負担が少ない方がいいでしょう。『クリスチアノ』は家賃が安い、つまり月額の負担が少ないので、急な支払いがあっても対応できます。また、私はWebデザインなどの外部の仕事もやっているので、多少の赤字があっても店舗収入以外で賄えます。もし、それでも経営が悪くなればランチをやります。そうやっていくつかのセーフティーネットを張っているわけです。おかげさまで収支は開店時の予想売上より250%程度で推移しています。それでも危機管理は今でも行っています。

━━数字は細かく計算されますか

佐藤 かなり詰めます。家賃が坪2万円で、20坪で40万円。そうなると普通は220万円から230万円が損益分岐点になります。そこで人件費をどうする、メニューをどうするか。あるいはキッチンを大きめにとって、料理のパフォーマンスを上げて単価を上げるとか。どのような戦略で利益をとるかを考えないといけません。そしてその店がある町はどういう客層で、単価はどの程度が期待できるとかの考慮も必要です。

━━そういう準備や思考が足りない方が多いのでしょうか

佐藤 飲食業は賭けではありません。やるなら確実に、うまくいく道を探り出さないと。アンテナを張り巡らせ、トレンド、世の中のニーズ、何が必要かを常に考えるべきです。そういうことをせずに、失敗する人は多いのではないでしょうか。もっとも、たまたまうまくいってしまう人もいます。しかし、それを成功例としてもてはやすのは、よくありません。偶然の成功と必然の成功を一緒にするのは間違っています。

店内の様子。地元客だけでなく、その味を求めて遠方からも多くの客が訪れる

従業員が「ウチで良かった」と思える会社に

最後に事業への思いや、今後のグループ全体の方向性について聞いた。

━━企業経営をしていく中での、社長の原動力になっているものはどのようなことでしょうか

佐藤 一言で言えば生活です(笑)。ただ、事業主になったからには、働く人間がウチで働いて良かったと思ってもらえればいいなとは思います。

━━そのためには具体的にはどのようなことを行っていくのでしょう?

佐藤 直近の成果として月8日間の休みと大幅な労働時間の削減を実行できました。今後は今以上に働く仲間の将来を考えて行動できたらと思います。将来を見据えた、研修や勉強会なども今以上にやっていきたいと思っています。生産者や、ポルトガルに行く、あるいは技術を高めてそれをみんなで共有したいと思います。成長してほしいですね、みんな。それがお客様へのサービスにつながりますから。

雇われ社長時代の痛恨の失敗を、独立してから活用して冒険とも思えるポルトガル料理店を成功させ、すでに6店舗を経営する佐藤社長。その“半端ない”経営哲学は、店舗経営をする人、これからしようとする人の指針になるだろう。

佐藤幸二(さとう・こうじ)
1974年6月、埼玉県生まれ。埼玉県立与野高校を卒業後、武蔵野調理師専門学校に入学。卒業後、(株)ANAホテル&リゾーツ(現IHG・ANA・ホテルズグループジャパン合同会社)に入社、全日空ホテル インターコンチネンタルの洋食部門に配属される。1996年から2001年までイタリアを中心に欧州で修行。帰国後、外食産業の雇われ社長等を経験し、2010年9月に独立、同年12月に『クリスチアノ』をオープンした。

『クリスチアノ』
住所/東京都渋谷区富ヶ谷1-51-10
電話番号/03:5790-0909
営業時間/18:00~L.O.23:00 
定休日:無休
http://www.cristianos.jp

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松田 隆

About 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/