飲食店ドットコムのサービス

働き方改革関連法が飲食店に与える影響は? 大切な3つのポイントを解説

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

※写真はイメージ。Photo by iStock.com/sguler

2018年6月29日、「働き方改革関連法」が可決、成立。2019年4月1日から順次施行されていく。メディアでは「高度プロフェッショナル制度」についての議論が多く取り沙汰されていたが、今回の法案成立で変わるのはそれだけではなく、飲食店に関連のある制度も多い。

そこで今回は、飲食店に関わる「働き方改革関連法」のポイントを確認しつつ、飲食店経営者として気を付けるべきことはなにかを考えていく。

働き方改革関連法のポイント

飲食店に関わるポイントとなるのが、「残業時間の上限規制」「同一労働同一賃金」「勤務間インターバル制度」の3つ。来年4月から順次施行されていくことになるが、これにより働き方に大きな変化が訪れる飲食店も出てくるだろう。それぞれ概要を説明していく。

※写真はイメージ。Photo by iStock.com/urbancow

■残業時間の上限規制
これまで実質的に上限がなかった残業時間に、上限を設けるのがこの制度だ。大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日から適用される。

適用されると、原則、残業時間の上限は「月45時間、年360時間」となるが、繁忙期などでやむを得ず残業時間の上限を超える場合は、6カ月までは許容される。ただし、その場合でも単月100時間未満(休日労働含む)、2~6カ月の平均80時間(休日労働含む)を上限とし、年間上限も720時間となる。

これらの上限を超えて労働させた場合、罰則対象となり、「6カ月の懲役または30万円以下の罰金」が科される。飲食店経営者は、今まで以上に残業時間の把握や、徹底した管理が求められることになるだろう。

■同一労働同一賃金
正社員とアルバイト、両方を雇っている飲食店も多いが、そこでポイントとなるのが「同一労働同一賃金」だ。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差改善を目的とする制度で、雇用形態が異なる場合でも仕事内容や貢献度等が同じならば、給与や賞与も同等のものにすべきとし、不合理な格差が生じないようにする。雇用側が、待遇差の理由を説明することも義務付けられている。施行日は、大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日から。

■勤務間インターバル制度
「働き方改革関連法」に努力義務として盛り込まれているのが、勤務間インターバル制度。勤務終了から次の勤務開始までに一定時間以上の休息時間を確保すべきとする制度で、長時間労働の抑制やワーク・ライフ・バランスの向上が期待されている。

飲食業界でも2017年に『すき家』を展開する「ゼンショーホールディングス」が、一部店舗で勤務間インターバル制度を試験導入する方針を明らかにしているなど、注目度は高い。勤務間インターバル制度が浸透していけば、必然的に深夜まで働いていた人が、数時間の仮眠で翌朝働く……といった体に負担のかかる働き方はできなくなるだろう。

厚生労働省による、勤務間インターバル制度導入にかかった費用を助成する「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」もあるので、興味がある飲食店経営者はチェックして欲しい。達成状況によるが、最大150万円の助成金が支給される。

※写真はイメージ。Photo by iStock.com/Yue_

飲食店経営者として気をつけるべき点は?

「働き方改革関連法」の成立により不安を感じている飲食店経営者もいるかもしれないが、まずは施行により、何が変わるのか、どの制度が自分たちに影響あるのかを理解し、必要があれば施行期日までに規則の見直しを進めることだ。早いものは2019年4月1日施行されるので、今から準備を進めていこう。

また、人事担当者や管理者への周知・教育を徹底することも忘れてはならない。とくに、「残業時間の上限規制」については罰則規定があることから、残業時間が多い飲食店はこれまで以上にスタッフの管理が求められるだろう。

すでに独自に「働き方改革」をおこなっている飲食店も多いが、今回の「働き方改革関連法」の施行は、改めて労働環境について見直す良い機会になるだろう。従業員にとって働きやすい環境を作ることで、優秀な人材が集まりやすくなり、人手不足解消にも繋がる。今一度、働く側の立場になり、飲食店での「働き方」について考えてみてはいかがだろうか。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。