外国人観光客に対する飲食店の受け入れ態勢は? 来店数を増やしたい店舗が約6割に

2018年9月10日

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近年外国人観光客の増加に伴い、飲食店においても外国人観光客の利用が大幅に増えているといわれている。しかし、実際の来店頻度や対応における問題点等はどうなっているのだろうか?今回の「飲食店リサーチ」では、「外国人観光客の対応」に関するアンケート調査結果を振り返り、実態についてまとめてみた。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:275名
調査期間:2018年7月13日~2018年7月19日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果:「飲食店における外国人観光客対応の課題」に関するアンケート調査

■回答者について
本調査にご協力いただいた回答者のうち69.1%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は60.4%(首都圏の飲食店の割合は78.6%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

外国人観光客の来店頻度、「全く来店しない」は10%以下


外国人観光客の来店頻度について見ると、約10%の飲食店が「毎日」、約20%が「週に数回」、2/3の店舗が「月に数回」以上外国人観光客が来店すると回答している。観光地や大都市の店舗と住宅街などの店舗では違いはあると思われるが、「全く来店しない」は10%を切っており、ほとんどの店舗は定期的に外国人観光客が来店すると考えた方が良いだろう。


業態別に見ると、寿司、ラーメン、和食といった日本食を代表する業態は「月に数回」以上が7割を超えており、外国人観光客の利用頻度が多いことがうかがえる。一方、中華やイタリア料理、フランス料理は「月に数回」以上が4~5割程度になっており、日本に来たからには日本食を食べたいと考える外国人観光客が多いことがわかる。


約6割の飲食店が外国人観光客の来店数を増やしたいと回答


次に、今後外国人観光客の利用を増やしたいかについて見てみよう。約6割の飲食店は外国人観光客の来店に前向きであると回答している。


「外国人観光客の来店数を増やしたいと思うかどうかと」いう質問に対して、「とても思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答した店舗は、次のような理由を挙げた。

<「客単価」に関する回答>
・外国人のお客様は日本人よりお酒をよく飲む方が多く単価がよい。(東京都/専門料理)
・団体で来店してくれて、単価も良いので。(大阪府/ラーメン)
・客単価は高く、原価率は低く、滞在時間は短いから。(大阪府/和食)

<「SNSでの拡散」に関する回答>
・口コミ力が高いので、評価を頂ければSNSの口コミで広がり、来客数が伸びるため。 (東京都/寿司)
・美味しいと思ったら必ずSNSを使うので拡散してくれる。(岐阜県/居酒屋・ダイニングバー)

<「店内の雰囲気作り」に関する回答>
・海外の方がいると、英語を話せる日本人が話したがる傾向にあるため、お店に活気が出る。(東京都/バー)
・お店の雰囲気がお洒落になりますし、想像していたよりもマナーの良い方が多いのでお店としては大歓迎です。(東京都/居酒屋・ダイニングバー)

<「時流」に関する回答>
・外国人観光客数は急激に伸びているので取り込んでいって当然。(東京都/鉄板)
・観光でこられたお客様に満足していただたい。(静岡県/和食)
・日本のよさを知って欲しい。(愛知県/ラーメン)

自由記述から、外国人観光客の来店に前向きな店舗は「客単価の高さ」や「SNSの拡散力」などにメリットを感じていることがわかった。また、外国人観光客が来店することは当たり前のことであり、食を観光の思い出のワンシーンにして欲しいといった思いが反映された回答も目立った。

業態別では、ラーメン、鉄板焼き・お好み焼き、そば・うどんが高くなっている。一方、イタリア料理や中華、和食や寿司は増やしたいという回答は少なくなっている。和食や寿司など料理やマナーの説明が難しい業態では、手間や日本人顧客への影響を考えると増やしたいと思っているわけではないとの回答が多くなっている。


その他にも「外国人観光客の来店数を増やしたいと思うかどうか」という質問に「まったく思わない」「どちらかと言えばそう思わない」と回答した店舗の自由記述からは、外国人観光客受け入れへの不安が見えてきた。

<「外国語でのコミュニケーション」に関する回答>
・外国語メニューの作成が出来ない、外国語が出来ない、説明に時間がかかる。(東京都/和食)
・全スタッフが日本語以外しゃべれないのでコミュニケーションをとるのが難しい。それに伴い、人員が外国人観光客に割かれてしまい、店が回らなくなる。(愛知県/居酒屋・ダイニングバー)
・繁忙時に、対応が遅れてしまう。英語に堪能な人員が多くなく、回転率が悪くなる。(埼玉県/イタリア料理)
・メニューの内容がよく理解されていないまま注文を受けるので、残されることがよくある。(東京都/テイクアウト)

<「常連客への配慮」に関する回答>
・観光客のような一時的に来るお客さんよりも継続して来られるお客さんをターゲットにしているため。(東京都/フランス料理)
・近所の常連さんが満席で入れなくなるため。(大阪府/居酒屋・ダイニングバー)

<「文化の違いやマナー」に関する回答>
・以前よりはマナーが良くなりましたが、やはりそうでないお客様が多いのが現実ですので、あまり歓迎していません。 東京都/その他)
・内装や雰囲気をとても気に入っていただけたのはいいが、店舗のあらゆる場所でポージングしながらの写真撮影会をされてしまった。(愛知県/イタリア)
・チャージの文化が受け入れられない。(東京都/バー)
・食べ放題をやっているが、取るだけ取って大量に残して帰ったり、テーブル上やその下も汚く散らかし放題で他の客が不快に感じる。(東京都/洋食)
・突き出し代を請求するとクレームになる。(東京都/居酒屋・ダイニングバー)
・クレジット決済を導入していないが、クレジットしか決済できないと言われてしまった。 (東京都/カフェ)

外国人観光客受け入れに消極的な店舗の多くは、「言葉の壁」に大きな不安を感じているようだ。コミュニケーションが十分にとれなければトラブルに発展しかねないためだろう。

最も意見の多かった課題は「料理や食材の説明」


外国人観光客の対応の課題については、59.6%の飲食店が「料理や食材の説明」が課題と回答しており、「店内でのマナー(44.0%)」、「苦手な食材の対応(40.4%)」と続いている。日本語はもちろん、英語圏以外の観光客の来店も多く、意思の疎通に時間がかかることに対する課題は多い。また、キャッシュレスが進んでいる国も増えており、個人店で現金対応のみとなると戸惑ったり、食券の券売機での購入方法がわからない観光客も多いようである。


対策は農水省の『インバウンド対応ガイドブック』などを参考に


これから外国人観光客を取り込んでいきたい、外国人観光客の来店頻度が高いといった飲食店で、まだ対策をとっていない店舗には、農林水産省のHPにあるインバウンド対応ガイドブックを参考にするといいだろう。

特に飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック(最新版は平成29年度版)には、食材やアレルギーなどの指差しコミュニケーションツールや、簡単な会話例もあり、そのまま使うことができる。外国語のオーダー表や外国人観光客向けのコースの設置、基本情報を入店前に説明、といったお店の取り組み例も掲載されているので、取り入れることができるものは取り入れるといいだろう。

また、外国人スタッフの採用も解決策の一つである。ネックになっている言葉の問題を、ダイレクトにカバーしてくれる。2019年4月には入管法が改正され、在留資格「特定技能1号」が新設されることが追い風にもなり、 より外国人スタッフが飲食店で戦力になっていくだろう。

今回のアンケート調査では外国人観光客の来店頻度が増えており、今後も増やしていきたいと思う飲食店が多い一方で、課題を持っている店舗も多いことがわかった。外国人観光客も日本食を食べたいと思う人が多いため、うまく対応できれば双方にとってメリットとなるだろう。他店の事例も参考にしつつ、できることから取り組んでみてはどうだろうか。

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