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生レバーを「あかんやつ」として提供し逮捕。知らないでは済まない「飲食店が厳守すべき法律」

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今年10月、客に牛の生レバーを提供し、加熱も促さなかったとして焼肉店の経営者が逮捕された。メニュー表には生レバーのことを「あかんやつ」と表記し注文を取っていたそうで、その後の取り調べでは「“焼かなあかんやつ”という意味だった」と主張し容疑を否認している。

本人は「バレなければ大丈夫」という軽い気持ちだったのかもしれない。「お客様を喜ばせたい」というサービス精神もあったのだろう。しかし、法律を犯してしまってはいけない。「逮捕」という結果が、今後の店舗運営に影響を及ぼすのは間違いないだろう。

今回のケースに限らず、飲食店には守らなければならない大切な法律がいくつかある。一歩間違えば今回のように検挙されてしまうような法律もあるので、改めておさらいしていこう。

食品偽装はもちろん、過大な景品提供もNG

景品表示法は一般消費者の利益保護を目的に制定されている。飲食店に関わる部分の一つとして、不当表示の禁止がある。これは商品の品質や規格について、実際のものや事実と異なり、競合より著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を禁止するものである。例えば、事実と異なるのに「国産有名ブランド牛」と表示したり、商品の原産地に関して不当な表示をしたりすると違反になる。

また、景品表示法では過大な景品類の提供も禁止している。一定額以上利用した客に、くじ等の結果で景品類を提供する一般懸賞や、利用客にもれなく景品類を提供する総付景品の場合、景品類の最高額が決まっている。一般懸賞の場合は、取引価額の20倍(最高10万円)となっており、総付景品の場合は取引価額の10分の2(1000円未満の場合は200円)となっている。景品提供のキャンペーンを企画する場合は注意が必要だ。

Photo by iStock.com/recep-bg

運転手や未成年の飲酒は提供側の責任も問われる

飲食店でお酒を飲んだ客が酒酔い運転をした場合、飲酒運転の本人だけでなく、酒類を提供した者も3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる。飲食店経営者が有罪判決を受けている判例もある。車で来店したかを確認すること、運転する人にはお酒を提供しないこと、運転してきた人がお酒を飲む場合は運転代行か家族等に迎えに来てもらわない限りお酒を出せないと伝えることが必要になる。

未成年に関しては未成年者飲酒禁止法により、営業者側に年齢確認の義務を課している。違反すれば、営業者側に50万円以下の罰金が科せられる。未成年だと思わなかった、身分証が無かったという言い訳は通用しない。少しでも未成年に見える人は身分証を確認する、身分証を持ってない場合はお酒を提供しないことを徹底することが必要となる。

飲食店でのお酒の販売や自家製酒類の販売も注意

飲酒運転や未成年の飲酒以外にも、お酒に関して注意すべき点がある。お酒の小売りには酒類販売免許が必要となるのだ。ジョッキやコップに注いで提供したり、ビンやボトルを開けて提供するなど、その場で飲むために提供する場合は酒類販売免許は必要ない。例えば客が店内で飲んで気に入ったワインを、お土産用としてボトルのまま買い上げていくケースは販売免許が必要となる。

また、梅酒など自家製酒類を販売する場合も注意が必要だ。原則として、酒類製造にあたり製造免許や酒税の納税などが必要となるが、要件を満たせば免許や納税が不要となる特例措置がある。特例措置を行う場合は、細かい適用要件や申告などが必要となるので、国税庁のホームページを確認するといいだろう。

Photo by iStock.com/daruma46

労務関係にも細心の注意を

人手不足解消のために飲食業界では「働き方改革」が進められている。そのため労務関係に注意を払っている飲食店も多いと思うが、ここで特に注意すべき代表的なものをいくつか紹介したい。

労働時間に関しては、実際に調理や接客などの業務をしている時間のみ労働時間と捉えがちだが、朝礼や新メニューの研修など、使用者の指揮命令下に置かれており、参加が義務付けられているものであれば、労働時間とみなされる。

また、外国人労働者を採用する場合も確認事項や手続きが必要である。日本に滞在する外国人は在留資格を取得しているが、在留資格には様々な種類があり、すべての在留資格で就労が可能というわけではない。雇用にあたっては、就労可能な在留資格を取得しているか確認しよう。また、外国人労働者雇用に関しては、ハローワークへの届け出が必要となっている。

今回は、飲食店が気を付けなければならない法律を改めて紹介した。紹介したものの中には、食品偽装や自家製酒の提供などのように、「バレなきゃ大丈夫」という気持ちが芽生えてしまいそうなものもある。「焼かなあかんやつ」などと苦しい言い訳をしないためにも、気持ちを引き締めて健全な経営を心掛けたいものだ。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/