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代々木上原の繁盛居酒屋『まるしゑ』。夢は「24時間営業」、女性スタッフが輝ける店に

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店主の相馬由夏さん

代々木上原駅の北口を出てすぐの場所に佇む『酒場 まるしゑ』は、イタリアンやフレンチの店が多く並ぶこの街で、入り口には赤い提灯、提供しているのはおばんざいやおでん……と、周囲の店とは若干毛色の違いを見せる酒場だ。

オープンから5年目、安定した売上をキープしつつ、近隣の人々をはじめ、老若男女問わず多くの客に親しまれている。家庭的でヘルシーさを“売り”にしたメニューと、気取らず和やかな雰囲気で、女性ひとりでもフラッと立ち寄れるのも特徴だ。

店を営むのは相馬由夏さん。今回は、女性店主ならではの店づくり、そして繁盛の秘訣を伺った。

旬の食材を使ったおばんざいは常時10種類

相馬さんは、東京農業大学出身。栄養士の勉強をしていたそうだが、もともと料理が好きだったことと、大学時代にデリで調理の仕事をしていたことをきっかけに卒業後は飲食の道へ。都内の居酒屋や立ち飲みバルなどで調理や接客の経験を積み、4年前に『酒場 まるしゑ』をオープンした。

店の看板メニューは、旬の野菜を中心としたおばんざい。季節によるが、「ポテトサラダ」「旬野菜とひじきのきんぴら」などの定番から、「小松菜と帆立の辛し和え」「ブリと白菜の生姜煮」など常時10種類を取り揃え、価格は1グラム3円。客が好きな量をオーダーできるスタイルだ。その他、季節ごとのおすすめメニューは20種類前後、定番メニューは肉の熔岩焼きやおでんなどをはじめ、40種類前後を用意している。

旬の食材を使ったおばんざいは10種類。リーズナブルで数種を気軽につまめるのが、客にとっては嬉しい

料理について伺うと、「産地はどこどこで……とか食材にこだわるよりも、家庭的だけど家ではこんなの作れないよねという料理を心がけています」とのこと。

確かに、取材時に提供していた季節のおすすめメニューでは、「白子の天ぷら(780円)」「空心菜とエビのタイ風アヒージョ(650円)」「酒粕豆乳ブルーチーズ(500円)」「牡蠣と白子の豆乳グラタン(1,000円)」など、家庭では食べられないオリジナリティあふれる料理が並んでいる。

「お客さんに、『自分たちが変化していると思ってても、それ以上に変化しないとお客さんには伝わらないよ』と言われたことがあって、それは常に意識していますね。例えば、旬の食材の料理を『オーダーが入っているからもうちょっとやろうか』じゃなくて、積極的に次の旬のものを出すようにしています。じゃないとスーパーにもたくさん並んじゃう。なのでスーパーで売り始めた頃には、もう終わり。次のメニューに変えています」

旬のものを取り入れ、常に“変化”することを心掛けている相馬さん。この攻めの姿勢が、何度も訪れてくれるリピーターを生み出しているのだろう。

「通いやすい価格帯」で美味しいものを

おばんざいは100グラムあたり300円、500円前後の料理も多く、どれも質の割にリーズナブルなのが魅力だ。「通いやすい価格帯の店は上原にはあまりないので、そこはブレないようにしていますね。お客さんにも、わかっちゃいますからね」と相馬さんは言う。

しかし、駅近のため家賃も安くはないだろう。経営的に難しくはないのか伺うと、「がっぽり儲けようとしなければ、やっていけます。適正な価格で美味しものを提供できれば」ということだが、そこは相馬さんの人柄の表れでもあるだろう。

また、ドリンクの方はビール、サワー、ワイン、焼酎、日本酒、果実酒など一通りを揃えている。もともとワインを多めに揃えていたそうだが、「上原ではワインを飲める店が多いので違うものを」と、ラインナップを減らし、その分、相馬さん自身の関心が大きくなっていた日本酒を多くした。農大のつながりで、酒蔵を紹介してもらえるという利点を活かし、有名な銘柄はあえておかず、産地がかぶらないようにさまざまな地域の日本酒をセレクト。一升買って、なくなったら違うものを仕入れるというスタイルにしているそうだ。

舌の肥えた客が多いエリアで「旬にこだわった美味しい料理」と「メニューの多彩さ」、そしてそれらを「気軽に楽しめる価格」というのが、お客を飽きさせない大きな理由のようだ。

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若松真美

ライター: 若松真美

ライフスタイルや旅行に関する女性向けWebメディアで編集者を経験後、現在はフード、トラベル、日本文化などの分野で執筆するライター。蕎麦屋酒と浮世絵を愛する。週末は東京下町を中心に酒場巡りや町歩きを楽しんでいる。