飲食店は“個性”があれば広告は要らない。FOODIT TOKYO 2018で語られた「究極のオリジナリティ」

登壇したレバレッジコンサルティング株式会社の本田直之氏（左）と東京工業大学メディア論教授の柳瀬博一氏（右）

FOODIT TOKYO実行委員会主催のイベント「FOODIT TOKYO 2018」が9月に開催された。このイベントは、「外食の未来が生まれる場所を作ろう」という趣旨でスタートし、今年で4回目。堀江貴文氏や楠本修二郎氏など、外食業界に影響力のある計22名が登壇し、さまざまなテーマでトークセッションを繰り広げた。

なかでも「究極のオリジナリティ」と題したセッションでは、数ある飲食店の中から“選ばれる店”になるためにはどうすればいいか、その方法論について議論され多くの観客を集めた。登壇したのはレバレッジコンサルティング株式会社の本田直之氏と東京工業大学メディア論教授の柳瀬博一氏。今回はその内容を詳しく紹介していきたい。

「なんだこれ！？」という驚きが個性を生む

今回のセッションでは飲食店の事例をもとに「オリジナリティ」の考察を行っていった。本田氏よりまず紹介されたのは、意外性やギャップが味わえるエンターテイメント色の強いお店だ。なかでも北九州市にある『照寿司』は、店主・渡邉貴義氏の濃いキャラクターが話題となり繁盛店への道を拓いていったという。

「2年くらい前から大将がキメ顔で寿司を提供するようになったんです。蝶ネクタイで、しかもネタが巨大。この演出がすごくウケて、ごく普通の“街の寿司屋さん”という感じだったのに、雑誌の表紙を飾るようになったりして。今では食べログの点数も4点超えだし、世界中からお客さんが来ています。はっきり言って、オリジナリティがあるかないかで人生が変わっちゃう、その好例だと思います（本田氏）」

『照寿司』の店主・渡邉貴義氏　※トークセッションのモニターを撮影

『照寿司』の営業のスタート時間は12:00、17:30、20:15の3回に設定されており、店主・渡邊氏の「ショー」が堪能できるカウンターは10席のみ。予約時間を指定することで「劇場型エンターテイメント寿司」というオリジナリティを打ち出すことに成功している。

福岡市にあるバー『つどい』も強烈なオリジナリティを放っている店だ。店内にはダジャレが落書きされていたり、インスタント焼きそば「U.F.O.」をオマージュした自家製麺「汁なしのアレ」を提供していたりと、ユニークな店づくりで話題を集めている。

「まず、メニューだけでも“なんだこれ！？”という感じですが、オーナーは無言で黙々と仕事をしている。このギャップ感が面白い。僕がインスタにアップしていたら、友達も行くようになって。昔だったら埋もれてしまっていたかもしれないけど、SNSがあることによって全国に広がって、日本中からお客さんが来るようになった。ロケーションは全然良くなくて、路地の奥の奥で人通りもない。だけど行列ができちゃうっていうのは、今の時代はオリジナリティがあれば、どこでも勝負できるということ。立地が悪いというのは全然関係ない（本田氏）」

強烈な個性で世界中から客を集める『傳』

外苑前の『傳』は、2018年の「世界のベストレストラン50」で17位になった世界的にも有名な和食店だ。世界中から客を集める人気店だが、料理のクオリティーが高いのはもちろんのこと、「傳（デン）タッキー」と名付けられた鳥料理に代表されるように、遊び心あふれる演出で客の心を掴んでいるのが特徴だ。こうした店の魅力はインスタグラムなどのSNSで世界中に届けられ、それが新たな客を生む好循環ができあがっているという。

名物「傳（デン）タッキー」　※トークセッションのモニターを撮影

「店主の長谷川さん自身はインスタグラムに料理の写真を全くアップしていません。お客さんと一緒に撮った写真くらいです。料理の写真は、お客さんが勝手にどんどんアップして、世界中にそれが広まっていった。長谷川さんは英語が話せるかというとほとんど話せないですし、お客様を楽しませるのに言葉はいらないということを彼は証明したと思います」