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飲食店の「無断キャンセル客」に損害賠償請求? 経産省が「No show」問題の対策レポート発表

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Photo by iStock.com/zoranm

もうすぐ12月、飲食店にとっては1年で最も忙しい時期に突入する。忘年会などの予約がひっきりなしに入ってきている飲食店も多いのではないだろうか。

その一方で、予約したにもかかわらず店に来ない、いわゆる「No show」問題に頭を悩ませている飲食店も多い。実際に飲食店.COMが過去におこなったアンケートでも、「年末、30名の予約客が来なくて幹事にも連絡がつかなくなった。食材は翌日のコースに流用したが、刺身は使えずロスが大量に発生した」との声が。TwitterなどのSNSでも、客のドタキャンやNo showを嘆く投稿を見かける機会が増えた。

このような問題を抱えているのは、一部の飲食店だけではない。今や社会的な問題となっており、その損害額は年間で約2,000億円とも言われている。そんななか、11月1日に無断キャンセルを防ぐ一手として「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」が発表された。その内容を詳しく紹介していきたい。

No show対策は飲食店と消費者、双方のメリットになる

今回発表された「No show 対策レポート」は、無断キャンセルに対する飲食業界初の指針として注目を集めている。このレポートを発表したのは、日本フードサービス協会の常務理事・福田久雄氏や株式会社トレタの代表取締役・中村 仁氏などが名を連ねる有識者勉強会。経済産業省や農林水産省、消費者庁もオブザーバーとして参加している。

同レポートでは、無断キャンセルは飲食店にとって損失につながるが、これが解消できれば飲食店だけでなく消費者にも利益が生まれるとしている。例えば、無断キャンセルによって失っていた利益を「最新設備の導入」や「サービスの向上」に充てることができれば、それは消費者の満足度向上にもつながる。双方に利益があると認識することで、No show問題の積極的な防止を促している。

Photo by iStock.com/kokouu

キャンセル客に対して損害賠償請求ができる?

今回のレポートで大きなポイントとなっているのが、損害賠償請求についてだろう。これまで、飲食店側は無断キャンセルに対し、泣く泣く諦めることも少なくなかった。しかし、同レポートでは飲食店側がキャンセルにより被害を受けた場合、損害賠償を請求できるとしている(このレポートに法的な効力はなく、あくまでも「指針」)。

キャンセル料については、「コース予約」と「座席予約のみ」とで考え方が異なる。それぞれ詳しく見ていこう。

■コース予約の場合
同レポートでは、コース予約の場合、コース料金の全額を請求できるとしている。全額としているのは、コース料理の場合、他の客でその損害をカバーすることが難しいと考えられるためだ。ただし、食材や人材を転用できる場合は別。その分の費用は除かなければならない。

■座席予約のみの場合
一方で、座席を予約するだけの場合は、平均客単価の5~7割をキャンセル料として請求できるとしている。座席予約の場合は、実際に料理の注文を承っているわけではないため、推定にならざるをえない。そのため、平均客単価から転用可能な費用を引いた金額がキャンセル料の目安となるというわけだ。

いずれの場合にしても、キャンセル料を請求するためには、客に対しキャンセルポリシーを事前に明示する必要がある。キャンセル料をどのように取り決めているのか、客に説明できるようにしておかなければならない。

Photo by iStock.com/ViktoriiaNovokhatska

No show防止のため、飲食店ができること

同レポートでは、飲食店が無断キャンセルを防止するためにできることとして、以下4つの取り組みを紹介している。

・予約確認の徹底
・客側がキャンセル連絡しやすい仕組みの整備
・キャンセルポリシー、キャンセル料の明示
・事前決済や預り金制度の導入

これら全ての取り組みで期待されているのが、ITの活用だ。例えば予約の再確認は、飲食店にとって負担が大きいものだったが、最近ではSMSを活用した予約確認サービスも登場している。これらを利用することで、予約確認のため電話をする手間がなくなり、負担軽減を図れるというわけだ。同レポートでは、SMSにキャンセルボタンを付け、客側が連絡しやすい仕組みを整備する方法も紹介されている。

また昨今、Web予約が主流となっている店舗もあるが、Web経由の予約客だけにキャンセルポリシーやキャンセル料を明示するだけでなく、電話で予約を受けた場合にもしっかりと伝える必要があると指摘している。こうしたキャンセルポリシーの確認にもSMSを活用するのが効果的だ。また、さらに抑止力を高めるなら、クレジットカードによる事前決済や預り金制度の導入を検討してみてもいいだろう。

現在、経済産業省では、「IT導入補助金」によってIT化を進める企業を支援している。IT化を通じて、無断キャンセル防止を図ろうと考えている飲食店はぜひ利用してほしい。国と飲食業界が一体となった取り組みが始まった今、No show問題への取り組みがさらに進むことを期待したい。

■No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート(PDF資料)

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。