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27歳で異業種から飲食業界へ。学芸大学『ひとひら』に聞く、グルメ激戦区を生き抜く秘訣

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店主の赤川登希夫氏。赤川氏と従業員の無駄のない動きが目でも楽しませてくれる

東横線学芸大学駅周辺は渋谷や中目黒、自由が丘へのアクセスが良く、若者が多く住んでいる活気のあるエリアだ。様々な飲食店が軒を連ねるこのエリアで、駅から徒歩3分ほどの好立地に店を構えるのが和食居酒屋『ひとひら』だ。連日、地元や近隣エリアから多くのお客が訪れ賑わいを見せている。2016年5月にオープンしたこのお店は、新しい形の和食居酒屋として地元に根づき、好評を得ているようだ。

店主の赤川登希夫氏はアパレル業界から転職し、飲食の道へと進んだと聞く。異業種から飲食の道へ進んだその理由は? まずはそこから話を伺った。

カウンター10席、奥にテーブルが10席。外からも厨房の様子がわかる

アパレル業界から飲食の道へ。10年間、腕を磨いて独立

「27歳までアパレルメーカーの営業をやっていました。実家(千葉県松戸市)が居酒屋をやっていたので、飲食の道に進みたいと思っていたのですが、お店をやるのが大変なのは両親が身に染みて感じていたので反対されていたんです。それで最初はアパレルメーカーに就職しました。働いているうちにやはり飲食の道に行こうという気持ちが湧いてきて、意を決して27歳の時に飲食業界に転職しました」

高校卒業後に働き始める者も多い飲食業界では決して早いスタートではない。しかし実家が居酒屋という環境で育った赤川氏は「門前の小僧習わぬ経を読む」のごとく、仕事を早々と覚えていった。またアパレルメーカーでの経験が接客をするうえでも活きたようだ。

最初は焼き鳥屋、次は和食の店で修行。最後は鉄板焼き屋で腕を磨き、トータルで10年間働くことで調理や接客のノウハウを得ることができた。そして満を持して独立し、お店を開くことに。当初からいずれは自分の店を持つことを視野に入れていたようだ。実家の店を継ぐことは考えず、あくまで都内で自分の店を開くことにこだわった。

厨房はステージのごとく。見られることで意識が高まる

それでは、なぜ都内でもグルメ激戦区と呼ばれるエリア「学芸大学」で店を開くことになったのだろう。

「この場所でお店を開くことになったのは物件ありきです。正方形の形がやりたいお店のイメージにぴったり合っていたので、『ここだ!』と思い即決しました」

カウンターがメインのお店で働いていたこともあり、自身のお店はカウンターに囲まれた、厨房がステージになるようなレイアウトにした。お客に見られている方が自身も従業員も意識が高まり、いい仕事ができると考えたからだ。また客も料理や食材はもちろん、調理の様子を目で楽しむことができる。

「ぶり大根」¥630などの魚料理も豊富。お酒との相性も抜群だ

「刺身+天ぷら+おばんざい」で、他店と差別化を図る

メニュー構成にも赤川氏のこだわりが色濃く表れている。

「『刺身』『天ぷら』『おばんざい』がメニューの三本柱になっています。刺身で一番おすすめなのが生本鮪盛(¥1,500)です。ほほ肉など、本まぐろの旨い部位が入っています。社員の同級生が豊洲市場のまぐろ専門店にいるので、そこから仕入れています。牡蠣や貝類は義理の父が、鹿島灘で漁師をしていますのでそこから送ってもらっています」

自身や社員の繋がりから良質な食材を手に入れていると語る赤川氏。続いて「天ぷら」「おばんざい」の魅力についても教えてくれた。

「『天ぷら』は自分も好きで、お店を始める時に絶対にやりたいと考えていました。ちゃんとした天ぷら屋さんは敷居が高いですけど、ウチでは揚げたての天ぷらをもっと気軽に楽しんでもらいたいと思っています。単品でも頼めますし、盛り合わせをカスタマイズできるようにもなっています。場所柄、ひとり暮らしの方も多いので天ぷらの需要はすごくありますね。また、『おばんざい』はカウンターの台に並べて視覚でも楽しめるようにしています。クイックにお出しできるので、メニュー構成の上でも“売り”になります。すべて500円で、常時10~15種類ほど。おばんざい5種盛(¥780円)はすごくお得で人気がありますね。『5種盛とお酒があればそれでいい!』というお客様もいます(笑)」

赤川氏は「いい刺身と揚げたての天ぷらが食べられる居酒屋は、学芸大学付近ではうちの店だけでは」と自信をのぞかせる。そこにおばんざいが加われば、メニューのバラエティはさらに広がる。

おばんざいで人気の「蓮根と牛蒡のきんぴら」¥500

酒蔵とのつながりを大切に。日本酒と焼酎に力を注ぐ

料理へのこだわりを教えてくれた赤川氏だが、それに合わせるお酒も手を抜かない。

「飲食業界に遅く入ったので、何か自分の“売り”になるものを持たなければと思っていました。そこで、料理人として働きながら、お酒の勉強もするようになったんです。『ひとひら』では学んだ知識を生かして、日本酒と焼酎に力を入れています。地酒は繋がりがないと仕入れができない場合もありますし、生産元まで訪れ仕入れた地酒もあります。特に出雲富士(島根)、大信州(長野)、飛露喜、寫楽(ともに福島)、日高見(宮城)は思い入れの強い、おすすめの地酒です。また、焼酎が好きな社員がいますので、焼酎の発注全般は彼にお願いしています。私も一緒に鹿児島の蔵に伺ったり、『東京焼酎楽宴』というイベントに参加したりしています。蔵元と繋がりが深まると、生産者の顔がわかって、お酒にかける想いを共有することができます。味ももちろん大事ですが、作っている方の人柄に惹かれることが多いですね」

とことんこだわったメニューの数々、そして一朝一夕では出来ない仕入れ先や蔵元との「つながり」。この二つが『ひとひら』が繁盛店となる大きな要素となっている。赤川氏いわく、将来的にはサラリーマンが集うエリアで新たに出店することも視野に入れているようだ。もうひとひらの花が咲くことを期待したい。

『ひとひら』
住所/東京都目黒区鷹番3-3-19 YK2ビル 1F
電話番号/03-6886-4316
営業時間/11:00〜14:00(ランチとドリンク)、18:00〜翌2:00(L.O.1:30)
定休日/不定休

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東海林ミノル

ライター: 東海林ミノル

1973年静岡県生まれ。印刷会社の営業からコピーライターに。広告制作会社勤務を経て、現在は執筆/編集に軸足をシフトしている。15年程前から中央線沿線在住。趣味は食べ歩き、料理など。特技は知り合いと偶然、町で出会うこと。