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学芸大学の人気バール『Lo SPAZIO』に聞く! 飲食店のテイクアウト・デリバリー活用法

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『Lo SPAZIO(ロ・スパッツィオ)』のオーナー野崎晴弘さん

2019年から始まる消費税率10%引き上げに伴い、軽減税率が導入されることが話題だ。飲食店では外食にかかる消費税は10%に上がるものの、テイクアウトやデリバリーは8%のまま据え置きとなるため、税率が相対的に低くなるテイクアウトやデリバリーの需要が高まる可能性が指摘されている。

これによりテイクアウトやデリバリー事業を始めることを検討している飲食店も増えているが、実際に導入するとどんなメリットや課題があるのだろうか。今回は、テイクアウトとデリバリー両方を運営しているバール&ピッツェリア『Lo SPAZIO(ロ・スパッツィオ)』のオーナー・野崎晴弘さんに話を伺い、飲食店におけるテイクアウト・デリバリーの実情を教えていただいた。

本場イタリアのバールのように、カウンターのある店内

テイクアウト・デリバリーを導入したのは「販路拡大」「認知度アップ」のため

イタリアにてバリスタ、ジェラタイオの修業を積み、日本のバリスタ業界におけるパイオニア的存在として活躍する野崎さん。イタリアのカフェ&バール文化、そして本場仕込みのエスプレッソやカプチーノを日本にも伝えたいという思いから、2002年に『Lo SPAZIO』をオープンした。

テイクアウトはドリンクのみ。2013年からはナポリピッツァをメニューに加え、同時にピッツァのテイクアウトもスタート。さらに2016年には、人気メニューであるピッツァ11種類のデリバリーを開始。テイクアウトとデリバリーの両方に力を入れるようになった。

店内でのサービス以外にも手を広げた理由を聞いてみると「席数がそれほど多くないので、店内サービス以外にも少しでも販路を広げたい、店の認知度のアップに繋げたいと思ったのがきっかけです」とのこと。来店してくれるお客以外に食べてもらえる機会が増えるのは、確かにデリバリーやテイクアウトの大きなメリットといえるだろう。

定番メニューの「トリッパと白インゲン豆のトマト煮」

デリバリーサービスを使うことで幅広い客層に届けられる

デリバリーは複数のサービスを活用。最初に「楽天デリバリー」を導入し、その後「Uber EATS」、「ファインダイン」とも契約した。

「注文数だけでいえば、ダントツでUber EATSの利用が多いです。ただ、各デリバリーサービスによって客層や注文の入るタイミングも違います。例えば、Uber EATSであれば一人暮らしのお客様が多いので平日夜にも多く注文が入りますが、ファインダイニングはファミリー層が多く、土日に集中して注文が来ます」

複数のサービスを活用することは、それだけ客層を広げることに繋がっているようだ。

一番人気のマルゲリータに水菜をトッピング。こちらはイートインメニューのみ

同時注文で忙しさが増加。これまでになかった課題が増えた

テイクアウトに続きデリバリー事業もスタートさせ軌道に乗せた同店。販路を広げることは、売上の向上に貢献していると言う。

「ウチの店に関していえば、テイクアウトやデリバリーで儲かっている部分は大きいです。やって良かったと思いますね。デリバリーの件数は、今日はよく注文が入るなって日で12、3件ほどです」

知名度を高めることができ、売上アップにも貢献しているこれらのサービス。いいことづくめにも思えるが、これまでになかった課題も見えてきた。実際にやってみて感じたのは、来店客も、そしてテイクアウト客やデリバリー客も、食べたい時間帯は同じだということだ。土日の店舗が混み合うような時間帯に、同時にテイクアウトやデリバリーの注文も入ることが多いのだという。

「雨の日などの集客が弱いときに注文が入ってくれれば嬉しいのですが、なかなかそう上手くはいかないものですね」と、野崎さんは笑う。売上が増える分、スタッフの手間も増えることは気に留めておきたいところだろう。

倒れにくく冷めにくいものを選んだ、デリバリー用のピザの包材

一番多いクレームは「冷たかった」。配達後の商品状態も店の責任に

現在はデリバリーサービスをうまく活用している同店だが、これまでには失敗も多くあったそうだ。失敗談をいくつか教えてくれた。

「Uber EATSが日本に進出してきたばかりの頃、登録ドライバーもそこまで多くなかったので、お客さんからオーダーが入ってピザを焼き始めても、ずっと『ドライバーが見つかりません』という表示のままということがありました。ドライバーが見つかってから焼いていたのでは遅くなるし、焼き上げたピザはどんどん冷めていくしで、すごく焦りましたね。最近は認知度が上がりドライバーも増えたようなので、そういうことはなくなりましたが……」

また、現在は改善したが、以前は焼き上がったピザをドライバーが受け取りに来るまで保温して置いておくスペースが無く、冷めてしまうこともあったという。

「お客さんからの1番多いクレームが、『冷たかった』でした。商品を渡してから相手に届く前に、冷めてしまったりよれてしまったりしても店の責任になるので、ある程度覚悟が必要です。また店内のオーダーとデリバリーが重なる時間帯などは枚数確認が疎かになってしまい、届けたら商品が足りないなんてこともあったので、スタッフ一人一人の意識の底上げも必要ですね」

野崎さん自ら作ってくれた、イタリア仕込みの「カプチーノ」

自信がある商品こそ、テイクアウトやデリバリーのメニューに

デリバリーやテイクアウトを始めた目的はもちろん売上の増加もあるが、「認知度を上げることの方を重要視している」と野崎さんは言う。

「純粋に売上だけを考えたら、原価の安いフライドポテトでもテイクアウトやデリバリーのメニューにした方が良いですよ(笑)。でも、テイクアウトやデリバリーを続けているのは、なるべく多くのお客様にウチの店の良さを知ってもらいたいからです。今後はピッツァだけでなく、同じく人気がある煮込み料理も加えられればと考えています」

テイクアウトやデリバリーで売上を上げることも大事だが、販路を増やすことで店のPRの場にし、来店動機に繋げていくことの方が重要だという。そのため、料理の味を損なわないよう、持ち運ぶ間に冷めないような包材を活用したり、家で手間なく美味しく味わえるような工夫を行なったりと、野崎さんは努力を惜しまない。

デリバリーやテイクアウトは軽減税率の影響もあり、今後需要が高まることが予測されている。同店のように、新たな販路や知名度アップ目的としても有効だろう。しかしながら、やみくもに導入することは、余分な手間となったり、サービスがおろそかになって店のマイナスイメージに繋がってしまったりとデメリットにもなりかねない。なぜテイクアウトやデリバリーを導入するのか、目的意識をはっきり持つことが重要といえそうだ。来年10月に消費税がアップする前に、店舗でもテイクアウトやデリバリーサービスを行うかどうか検討してみる価値はあるだろう。

オープンなスタイルの外観

『Lo SPAZIO』
住所/東京都目黒区鷹番3-3-5
電話番号/03-5722-6799
営業時間/月〜金11:30〜15:00、18:00〜23:00(L.O.)、土日祝11:30〜22:30(L.O.)
http://www.bravissimo.co.jp

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西尾悠希

ライター: 西尾悠希

これまでグルメ系情報誌やカフェのムック本、グルメ系サイトなど、飲食系メディアに数多く編集やライティングで携わる。料理が趣味で、フードアナリストやフードコーディネーターの資格も取得。お酒を飲むのも好きで、休日には三軒茶屋や学芸大学の飲食店をよく開拓している。