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TPP発効による飲食店への影響は? 輸入食材が安くなる一方、安全性への懸念も

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Photo by iStock.com/artran

2018年12月30日、アメリカの離脱などに揺れたTPPがついに発効された。ここ数年、何かと日本を賑わしてきたTPP。様々な分野で影響があるとされ、飲食業界も例外ではない。どんな影響を受けるのか、その詳細を把握しておきたい飲食店経営者も多いだろう。

そこで今回は、TPPについて改めて解説するとともに、今後飲食業界が受けるであろう影響について考察をしていく。

そもそもTPPはどんな協定?

そもそもTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、環太平洋地域の国々による経済連携協定のこと。農産物や工業製品などの関税引き下げや撤廃のほか、投資の自由化、さらには知的財産など多様な分野におけるルールの構築といった内容が盛り込まれている。

2017年にアメリカが離脱したことにより、現在参加しているのは日本を含め11カ国(参加国:日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)。11カ国の総GDP(国内総生産)は約1,100兆円となっており、世界のGDPの約13%を占める計算だ。11カ国以外に参加に興味を示す国もあり、今後の動向についても注目されている。

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TPPによる懸念点とは?

TPPは巨大な経済連携協定として注目をされている反面、様々な観点から懸念点が挙げられてきた。安価な輸入品が国内で流通することによるデフレや、国内農産業の衰退といった懸念点を耳にした人もいるだろう。

なかでも、飲食業界に大きく関わる懸念点といえば「食の安全性」が挙げられる。政府は輸入食材の安全性に問題はないとしているが、不安を感じている消費者も多く懸念は拭えていない。一方で、国産の食材に対する価値が向上するとの見方もある。つまり国産の食材を使っている飲食店は、それだけでブランド価値が出るというわけだ。今後はこうした動きに注視しながら店舗運営をしていくことが飲食店には求められていきそうだ。

輸入食材をより安価に仕入れられるように

TPPによるメリットは、国産食材のブランド力向上だけではない。今後は、輸入食材をより安く仕入れられるようになるかもしれない。TPPによる関税の撤廃は、日本が輸入している農林水産物の約82%に渡る。つまり関税が撤廃された分、より安価に食材が手に入るかもしれないというわけだ。TPP参加国からの輸入食材を扱っている飲食店は、見逃せない部分だろう。

例えば、輸入牛肉にはこれまで38.5%の関税がかけられていた。しかし、TPP発効後に徐々に引き下げられ、16年目には9%となる予定だ。最終的に30%近く関税が引き下げられることになる。こうした動きに対し、すでに輸入牛肉の値下げを始めたスーパーもあるようだ。

また、仕入れ食材の価格が下がれば、メニューの値下げなど消費者への還元もしやすくなる。集客のために新たな戦略を打つことができるだろう。

Photo by iStock.com/Boris_Kuznets

2月からは、日欧EPAが発効される

ここまでTPPについて解説してきたが、最後に直近で発効される経済連携協定として日欧EPA(日EU経済連携協定)を紹介したい。2019年2月に発効される日本とEUによる経済連携協定で、TPPと同様に関税の撤廃が盛り込まれている。

対象となる品目には、ワインやパスタ、ソフトチーズなどが含まれる。ワインに関していえば、すでに大手酒造メーカーが欧州産ワインの値下げを発表。欧州産食材を仕入れている飲食店にとっては、朗報といえるだろう。

また、ヨーロッパとの自由貿易化を図る日欧EPAが後押しとなり、ヨーロッパへの出店を検討する飲食店もある。日欧EPAにより、食材調達の負担が軽減するという見方があるためだ。ビジネスチャンスとしても期待が高まる。

輸入食材を仕入れている飲食店はもちろん、そうでない飲食店にとってもその影響が気になる、TPPと日欧EPA。すでに関税が撤廃されている食材もあるが、今後長期に渡り徐々に関税が引き下げられる食材もある。今後もその影響を注視していく必要がありそうだ。

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。