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【2023年対応】飲食店の確定申告の手順をわかりやすく解説。必要書類や経費の疑問も回答

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今年もまた、確定申告の季節がやってきた。2023年からは確定申告の様式が一部変更となる。昨年開業した人にとっては初の確定申告となるが、初めての場合は経費の仕訳や申告方法、税金のことなど、わからないことも多いはず。そこで今回は、確定申告の基本はもちろん、自分の給与や税金のことなど、個人事業主が気になるポイントをわかりやすく解説しよう。

確定申告に必要な準備と提出期間は?

確定申告をするためにはまず、個人事業主として開業していることが大前提だ。事前に所轄の税務署に「開業・廃業等届出書」と「青色申告承認申請書」を提出しておく必要がある。昨年度に開業した人であれば、今年の1月中に確定申告書類が郵送で届いているはずだ。

確定申告では、原則として前年1月1日から12月31日までの収支を翌年3月15日までに提出することになっている。2023年の場合は、2月16日(木)〜3月15日(水)が提出期間だ。この期間中に「青色申告決算書」と「確定申告書」を完成させて、税務署に提出するという流れになる。

確定申告は自分でもできる?

多くの方が不安視していることといえば、日々の帳簿や決算書類の作成を自分でできるかどうかという点だろう。しかし、近年は経費計算や仕訳をサポートするアプリやソフト、クラウドサービスなどもたくさん登場しており、これらを活用すれば、自分で帳簿を作成することも難しくなくなってきている。レジの売上やネット銀行のデータと連動するアプリやソフトを活用し、これらを連携して使えば入力作業はさらに削減でき、手間も抑えられるだろう。

これらのデータや書類をもとに確定申告の書類を作成することになるが、郵送されてくる提出用の確定申告書類はすべて手書きの仕様であり、計算や修正がとにかく大変。そこでおすすめなのが、国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax、国税電子申告・納税システム)だ。経費の合計や控除額、最終的な納税額まで計算してくれるので、プリントアウトしたものを郵送するだけで済む。しかもデータを翌年に持ち越せるので、二年目以降の申告作業がずいぶんと楽になるはずだ。また、マイナンバーカードを保有していれば、スマートフォンやパソコンからデータを送信することで確定申告を済ませることもできる。

このように日々の帳簿づけをアプリやパソコンで効率的に行い、提出前には確定申告書等作成コーナーを使えば、初めてでも自分で申告作業を行うことは十分可能といえるだろう。

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確定申告の具体的な進め方

確定申告は、1年間の収支を計算して、所得に応じた所得税を確定させることだ。そのため1年間をかけて進めていく必要がある。日々の収支について記帳をした帳簿をもとに、下記のように進めていくのが一般的だ。

1)所得を算出する

飲食店における所得は「売上−経費」で算出することができる。売上とは店舗で売って得られる金額のことで、料理などを作る際の原材料やアルバイトなどの人件費、お店の賃料、光熱費などが経費となる。

2)課税所得を算出する

得から所得控除を差し引くことで課税所得を求めることができる。所得控除とは条件を満たせば所得から控除できる金額のことで、医療費控除や社会保険料控除などがある。また青色申告事業者であれば、青色申告控除として10万円、55万円、65万円のいずれかを控除することもできる。

3)所得税額を算出する

所得税額は課税所得の金額に応じて、税率が決まっており、例えば、課税所得金額が195万円〜330万円であれば税率は10%となる。この計算をしたのち、算出した所得税額から税額控除を行うことで最終的な税額が決定する。

4)税務署に確定申告書を提出す

納税額が決定したら、確定申告書と必要書類を税務署に提出。これで確定申告は終了となる。

書式など、2023年からの確定申告の変更ポイント

確定申告は、これまで所得の種類などに応じて確定申告書Aと確定申告書Bを使い分けていたが、2023年からは確定申告書が統合され、AとBの区別はなくなった。様式が大きく変わるわけではないが、これまでと違うことで戸惑うこともあるかもしれない。確定申告に慣れている方でも、あらかじめ変更点などを確認しておこう。

また、これまで修正申告用として使用していた第五表も廃止になっている。納税額を少なく申告していたケースなどで第五表を使ったことがある方もいるだろうが、2023年からは修正申告をする場合も第一表、第二表を使うことになる。修正申告用の欄が設けられており、そちらを使用するので混同しないように覚えておこう。

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ポイントを押さえれば確定申告は難しくない

ここからは確定申告で戸惑うことの多い経費や所得控除といったポイントについて、よくある疑問に分けて具体的に解説していこう。

確定申告の疑問(1)生活費や自宅家賃は経費になる?

レジのデータや売上票を残しておくのはもちろんだが、経費の領収書も分類して保管しておく必要がある。飲食店経営における主な経費は、「売上原価(仕入金額)」「地代家賃」「給料賃金」「水道光熱費」「広告宣伝費」など。種類ごとにファイルを用意して、そこに領収書を保管しておくのがいいだろう。

また、個人事業主の場合は「生活費」も経費になると思っている方も多いが、そうではない。事業とプライベートは明確に区別する必要があるのだ。プライベートでの交通費や携帯料金、食事代などは経費に入れることはできないので注意しよう。ただし、自宅の一部を事務所にしている場合などは、家賃の一部が経費として認められる場合もあるので、申告前に税務署に相談に行っておこう。

確定申告の疑問(2)自分の給料はどうやって決まる?

個人事業主の給料は、会社員のように固定で決まっているわけではない。青色申告決算書において、売上から経費を差し引いた金額が「事業所得」となる。つまり、確定申告の時に初めて収入が確定するというわけだ。

そして、事業所得から基礎控除(38万円)のほか、社会保険料控除、扶養控除など該当するものが所得から差し引かれ、残った金額に対して税金がかかるという流れになっている。確定申告書等作成コーナーで申告書を作成すれば、その場で所得税額も確認することができる。

確定申告の疑問(3)赤字の場合はどうなる?

開業初年度は、売上が思うように伸びなかったり、減価償却などの経費によって赤字決算になることもあるかもしれない。赤字の場合には事業所得がマイナスとなり、確定申告では個人の収入はゼロになることも。ただし、赤字額は最大3年間繰り越すことができるため、次年度で利益が出た際には節税できることになる。

また、赤字の場合でも手元に現金が残っていればいいが、もし資金が底をついてしまったら事業は継続できなくなってしまう。個人事業であれば全て自己責任となり、取引先には責任を持って自分で支払いを行わなくてはならない。場合によっては、生活費を切り崩して事業資金に回すということもあり得る点が個人事業主最大のリスクといえるだろう。

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確定申告の疑問(4)税理士に頼む場合は? 申告しないとどうなる?

確定申告は自分でできればそれに越したことはないが、そのぶん本業がおろそかになる可能性も。そういう意味では、税理士に依頼するのも一つの方法だろう。気になるのは金額だが、個人事業主であれば月額報酬1~2万円程度が相場のようだ。記帳は自分で行って申告だけ税理士に依頼するプラン、記帳から申告まで全て「丸投げ」できるプランもある。

ちなみに申告期限に遅れると「無申告加算税」、納税額を少なく申告すると「過少申告加算税」などの対象となることもある。飲食店経営を行うのであれば、確定申告は事業主としての義務だ。申告の直前になって慌てることのないよう、計画的に準備を進めておく必要がある。

確定申告の疑問(5)納付する税金の種類は?

確定申告を済ませると、様々な税金の納付額が決定される。所得税、住民税、保険料などだ。売上高が年間1,000万円以上であれば、消費税も課税される。会社員と違って税金はいわゆる「天引き」ではなく、後からの納付となる点には注意しておきたい。

納税が遅れると、「延滞税」の対象となることもある。対策としては、年収をあらかじめ設定しておき、納税分の金額をあらかじめ貯蓄しておくことだ。住民税や保険料のシミュレーターサイトなどもあるので活用してみよう。

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確定申告の疑問(6)所得控除にはどんなものがある?

所得控除とは前述したように、所得から差し引くことが認められている金額のこと。基礎控除や扶養控除、医療費控除などがあり、適用されると税額が抑えられるので適切な知識を持っておこう。

代表的な所得控除には下記のようなものがある。

基礎控除…年間の合計所得額が2,500万円以下の人が適用される。2,400万円以下の場合の控除額は48万円、2,400万円超2,450万円以下の人は32万円などとなっている。

社会保険料控除…健康保険料や国民年金保険料、国民年金基金などの掛金を拠出している人に適用。保険料や掛金の全額が控除される。

扶養控除…子や親などの親族を扶養しているときに受けられる。通常は控除額が38万円だが、扶養親族の年齢や同居の有無などによって控除額が変わる。

配偶者控除…納税者の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下の場合に適用される。通常の控除額は38万円だが、合計所得金額に応じて控除額が変わる。

このほか、寄附金控除、ひとり親控除、寡婦控除、雑損控除、医療費控除、配偶者特別控除、生命保険料控除など所得控除は15種類あるので、どの控除が適用になるのか、一つひとつ確認してほしい。

確定申告の疑問(7)確定申告では何を提出するの?

確定申告を行う際は、確定申告書の他に必要に応じて書類を提出しなければならない。具体的に見ていこう。

〈必ず提出する書類〉

確定申告書…課税所得金額や税額などを記入している書類で、確定申告の際には必ず提出する。

青色申告決算書…青色事業者の場合は青色申告をするため、青色申告決算書を確定申告書と同時に提出する。青色申告決算書は、損益計算書、損益計算書細目(売上や給与など)、損益計算書細目(減価償却、地代家賃など)、貸借対照表の4つの書類からなる。

〈必要に応じて提出する書類〉

医療費控除の明細書…医療費控除を適用する場合は、かかった医療費を証明する書類を添付する。
社会保険料控除証明書…社会保険料控除を適用する場合は、国民健康保険料、国民年金基金などの掛金を支払った証明書を添付する。証明書は各団体から送付される。

寄付金受領証明書…寄附金控除を適用する場合は、寄附を行った団体などから受領証明書を発行してもらい、確定申告書に添付する。ふるさと納税などを行った場合は各自治体から発行される。

この他の地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などの控除を適用する場合も、証明書を添付する必要がある。

確定申告の疑問(8)マイナンバーカードは必要?

確定申告にマイナンバーは必要ではないが、マイナンバーカードを利用すれば電子申告を行える。また、下記のようなメリットがある。

・本人確認書類の提出が不要になる

・マイナポータルを活用することで、生命保険料控除証明書などの必要書類のデータを一括取得し、自動入力することができる

・e-Taxで提出することで、還付申告は通常より早い3週間程度で処理される、など

また、税務署で確定申告を提出したり、書類を郵送する場合、マイナンバーカードを持っていなくても確定申告はできるが、住民票などのマイナンバーを確認できる番号確認書類と身元確認書類の提示または写しを提出する必要がある。

確定申告の疑問(9)儲けがなかった場合、確定申告はしなくていいの?

飲食店を始めたばかりや、コロナ禍で休業期間が長かった場合などは、儲けがなかったというケースもあるだろう。この場合、事業所得が年間48万円以下であれば確定申告は行わなくてもいいことになっている。これは所得税における基礎控除が48万円となっているため、事業所得が48万円以下であれば課税所得金額が0以下になってしまうからだ。事業所得とは売上から経費を差し引いた金額のことで、飲食店を始めたばかりであれば該当する方も多いだろう。

ただし、確定申告をしない場合は、住民税の申告を別途行う必要がある。怠ると、国民健康保険税や介護保険料の算定、保育所や公営住宅などの申込にも影響が出る可能性があることを覚えておこう。

確定申告の疑問(10)クレジットカードでの支払いはどう処理する?

飲食店ではクレジットカードでの支払いやキャッシュレス決済が増えている。クレジットカード会社からの入金と利用日にタイムラグがあることもあり、どのように処理するのがいいのか戸惑う飲食店経営者もいる。この場合の原則は、サービスを提供した日となる。入金日ではないため、間違えないようにしよう。また、手数料が引かれた金額で入金されるため、売上額と入金金額で差が生まれることもある。適切に手数料を経費として計上することを忘れないようにしよう。

そのほか、注意したいのが割引券を発行したり、ポイントカードによるサービスなどを実施しているケース。これらの取り扱いも、実際にお客が利用した日の売上割引として処理することになる。

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個人事業主の場合は自己管理が大変なため、申告が遅れたり、間違いが出てしまったりということもあるかもしれない。特に初めての申告の場合は、早めの準備をしておきたいところだ。記帳作業を楽にするために、支払いはクレジットカードやICカード決済にする、記帳のいらないネット銀行を利用するなど、効率化を図る方法はたくさんある。もちろん、手書きや表計算ソフトなどを利用してもいいが、直前で慌てないように自分に合った方法で進めてもらいたい。

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大槻洋次郎

ライター: 大槻洋次郎

父親が喫茶店を営む家庭に生まれ、31才の時にカフェで独立開業。個人経営のこだわりカフェの先駆者的存在となった。現在は大手カフェスクールや展示会での講師活動、飲食店の開業支援などを行なっている。現場目線の初心者でもわかりやすいノウハウに定評がある。メディア出演も多数。得意料理はパスタ。