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2019-03-26 16:09:25.0

どんな輸入食材が安くなる? TPP・日欧EPAが飲食店に与える影響とは

画像素材:PIXTA
2018年12月にTPPが発効、2019年2月に日欧EPAが発効し、さまざまな輸入品の関税が引き下げられました。このことは飲食店にとって、食材の仕入れ価格や食材選びに大きく関わります。今回はTPPと日欧EPAの2つの経済連携が、飲食店にどのように影響するのかを解説。食材仕入れやメニュー開発を担当する方は要チェックです!

TPPおよび日欧EPAとは

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、太平洋を取り囲む11の国々による経済連携協定。一方、日欧EPAとは日本と欧州連合(EU)の経済連携協定を指します。経済連携協定とは、締約国間での経済取引の円滑化により、幅広い経済関係の強化を目的とした協定のこと。今回のTPPと日欧EPAにおいて飲食店に関係のありそうなところをピックアップすると、加盟国からの輸入品にかけられていた「関税がなくなる・段階的に下げられる」つまり「輸入食材が安くなる」点が挙げられます。

TPPで安くなる輸入食材とは?

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TPPの加盟国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムに日本を含めた11カ国です。そして、関税をなくす品目は、日本が輸入している農林水産物の約82%にもなります。

TPPによって価格の低下が見込まれるのは、
・加盟国からの輸入が多く
・これまで関税が高かった品目 です。

たとえば、牛肉が挙げられます。輸入先のベスト3にはTPP加盟国のオーストラリアとニュージーランドが入っています。これまで輸入牛肉には関税が38%もかかっていましたが、段階的に引き下げられ、16年目には9%に。長期的に価格が下がると予想されていますが、すでにオーストラリア産牛肉の価格を下げ始めているスーパーもあります。

そのほか農林水産省の発表によると、カナダ産の豚肉、ニュージーランド産のキウイ、メキシコ産・オーストラリア産のアスパラガス、チリ産の銀ザケ・マスなどが長期的にみて価格に影響しそうです。輸入食材を多く使うお店は、産地や仕入れ価格をチェックしてみてください。

日欧EPAで安くなる食材とは?

欧州連合(EU)の加盟国は28カ国(2019年3月時点でイギリスは離脱に向け交渉中)。EUからの輸入品にかけられる関税が撤廃される品目は、なんと99%にものぼります。とくにワインは、これまで15%もしくは1リットル当たり125円の関税がかけられていましたが、一気にゼロに。パスタやナチュラルチーズ、アイスクリーム、チョコレートなども段階的に引き下げられます。イタリアンやフレンチなどの西洋料理店やカフェ・バーなどには、仕入れの価格面で良い影響が出そうです。

また、産地ブランド(GI)の相互保護も日欧EPAのポイント。これは地域の気候条件や伝統的な製法を生かした農林水産物や食品を知的財産として保護する仕組みです。たとえば、EUの産品では、「ゴルゴンゾーラ」(イタリア)や「ロックフォール」(フランス)など71品目が対象になります。相互保護が始まったことで、日本国内で製造したチーズにそれらの名前はつけらないようになりました。また、飲食店として気を付けなければならないのがメニューの名前です。たとえばパルマ産でないハムを使う場合、「パルマ風ハム」とメニューに名付けるのはNGになるので注意が必要です。

TPP・欧州EPAの影響で国産ブランドはどうなる?

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TPPや欧州EPAで安い輸入食材が入る懸念事項として、「食の安全」や「国産ブランドの衰退」を不安視する声がありますが、かえって国産ブランドの価値が上がるのではないかという声もあります。安い輸入食材との価格競争にさらされることになる日本の生産者は、品質をさらに向上させ、ブランド力を高める工夫をすることとなるでしょう。

日本の消費者の間では、輸入食品よりも国産の食品の方が「食の安全」への信頼度が高い傾向にあります。飲食店は多少仕入れ値が高くてもブランド力の高い国産食材を使うことで、自店のブランド力アップにもつながるかもしれません。

飲食店は情報収集と食材の見直しが必要に

為替や石油価格にも影響を受けるので一概にはいえませんが、TPPや日欧EPAによって輸入品の価格は安くなると予想されます。飲食店の皆様は、これを機会に使用する食材や仕入れの見直しなどを図ってみてはいかがでしょうか。

また、これまで以上に国内・海外の「産地ブランド」に注目が集まることが予想されます。「安さ」を追求するだけでなく、産地や製法などにこだわったメニューを開発するのもよいでしょう。そのためにも、ユニークな取り組みをしている生産者や話題の食材にアンテナを張っておきましょう。

TPPや日欧EPAをはじめ、食品をめぐる経済環境はどんどんグローバルになっていきます。食材の仕入れやメニュー開発について考える際は、料理のコンセプトはどうするのか、どこの国のどのような食材を使うのか、価格を下げられる部分はどこなのかなど、十分に情報収集を行いましょう。

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