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「FLコスト」。原材料が高騰する中でも利益を出すために必要なコスト管理術や施策とは?

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画像素材:PIXTA

飲食店経営に関わる数値として最も大切な指標のひとつ「FLコスト」。原材料費の高騰や最低賃金の上昇などでFLコストの管理に苦慮している飲食店も多い。そこで今回はこのFLコストについて改めて説明するとともに、FLコストの改善方法について紹介していく。

そもそもFLコストとは?

FLコストは飲食店における食材原価(food cost)と人件費(labor cost)の合計である。飲食店でかかるコストの大部分を占めるとともに、店舗にて管理可能な項目ということもあり、飲食店経営において特に重要視されるコストである。賃料はあらかじめ決まっている固定費であり、水道光熱費は管理したとしても利益に与える影響は大きくない。一方、占める割合が大きいのが食材原価や人件費のFLコストだ。原材料費の高騰や最低賃金の上昇、あるいは人材確保のための賃金上昇など、飲食店のFLコストをめぐる状況は厳しいが、日々の営業の管理の積み重ねで利益が変わってくる。

一般的な飲食店では、食材原価も人件費もそれぞれ売上の30%程度が一つの基準となっており、FL合計で売上の60%以下に抑えることができると黒字になる可能性が高い。このFLコストが売上高に占める割合を「FL比率」と言い、「食材原価+人件費÷売上高×100」で計算する。ちなみにFL比率が65%を超えると赤字店舗になる可能性が高いと言われている。FL比率で具体的にお店の状態を見ていくと下記のようになる。

FLコスト比率と経営状況の目安

FL比率の改善を目指すには、具体的には下記のような5つの手法が考えられる。

①仕入れを見直し、食材原価を抑える
②食材廃棄ロスを見直す
③飲食DXの導入などで人件費を抑える
④人員配置やシフト管理を改善し、人件費を抑える
⑤料理の価格を引き上げる

ただし、食材原価に関しては、業態によっても違いがある。次の項目で詳しく見ていこう。

業態別の標準的な食材原価とは

一般的に食材原価が30%、人件費が30%で、FL比率は60%が標準とされる。しかし業態によって食材原価は異なり、理想的なFL比率も異なる。例えば、ラーメン店の食材原価は30%程度と言われているが、カフェは25%程度だとされる。一般的に飲み物は原価率が低いものが多く、ドリンク比率が高いカフェであれば原価率は低くなる。居酒屋も生ビールや刺身などの原価率は30~40%になる一方、サワーなどは10~15%程度となり、トータルでみて30〜35%程度という店舗が多い。

業態ごとの標準的な食材原価率は下記のようになっている。

・ラーメン店…30%前後
・カフェ…25%前後
・居酒屋…30〜35%
・焼肉店…40%
・ファストフード…40%
・レストラン…30〜35%

とはいえ、原価率を40%程度に設定して客数と回転率を重視して利益を獲得する業態や、原価率を20%程度に抑えて人的サービスに力を入れる業態などもある。業態を立ち上げる際に、どこを強みとするのかしっかり決める必要がある。

では、実際に飲食店の経営を始めてFLコストが計画より高いとなった場合に、どうすれば下げることができるのだろうか? まずは原価率のコントロール方法から見てみよう。

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F(食材原価)のコントロール

原価率が高い場合、まず確認すべきはロスを確認して減らすことである。ロスと一言でいっても、オーダーミスや調理ミスなどによるオペレーションロス、食材の賞味期限切れなどによる廃棄ロスなどがある。前者であれば、オーダーのとり方や厨房への伝え方、レシピなどの確認や見直しが必要となり、後者であれば発注方法や保管方法の見直しやメニューのABC分析を行い、よく出る食材・出ない食材の分類をして管理方法を変える必要があるだろう。

また、原価率の低いメニューとその出数を増やす施策も有効である。先ほどの居酒屋の例もあるが、ドリンクメニューなど原価率の低いアイテムを増やす、その原価率の低いアイテムをおすすめメニューとしてメニューブックや店内の目立つところで紹介して、出数を増やすなどで全体の原価率を下げる取組みも有効である。

仕入れコストを下げる方法としては、仕入れ先や食材の見直しなども有効ではある。ただし、仕入れ先の変更などは相手もあることであり交渉次第となることや、食材も原価率を意識しすぎて質の悪い食材に変えるだけでは、品質に影響するので注意したほうがいいだろう。

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L(人件費)のコントロール

人件費のコントロールに関しては、まず基準シフトを作成することが必要になる。仮に売上に対して人件費の基準を30%と設定したとしても、全ての時間帯で30%となるわけではない。開店前や閉店後など売上が発生しない時間帯や、売上の少ないアイドルタイムは30%を超える比率となり、売上が多くなるピークタイムは30%より大幅に少なくなるだろう。まずは、売上予測と基準シフトを作成して、人件費が基準通りになっているか確認してみよう。

基準シフトに沿って実際のシフトを作成し運用しても、予測通りの売上を達成するのが難しい場合が出てくる。その場合はスタッフに早上がりを依頼したり、休憩時間を長くするなどして人件費をコントロールする必要がある。

また、労働時間を管理するとともに、労働時間あたりの生産性を上げる取り組みも必要である。作業効率のしやすいレイアウトや配置を考える、発注作業や売上分析などはIT活用で作業時間短縮を図る、複数ポジションの仕事をこなすことができるような教育を行うことなどが有効である。

一方、飲食DXの導入も進んでいる。業態にもよるが、セルフレジや食券販売機の導入のほか、セルフオーダーシステムなど少人数による接客オペレーションを構築することで、人件費の抑制も可能となる。ただし、導入費用が必要になるため、長期的な視野を持つことも必要になってくるだろう。

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FL両方下げることができる策

原価率と人件費率を同時に下げる方法として「値上げ」という選択肢がある。値上げにより売上が増える一方で、原価・人件費ともに変わらないのでFL比率は下がることになる。しかも原材料の高騰などで値上げを実行している飲食店も多いため、値上げをしやすい状況と言えるだろう。ただし、値上げしても客数が減らないことが前提条件となるため、客数に影響がない範囲での値上げが必要となる。慎重に検討することが大切だ。

安定経営には家賃を含めたFLRコストの見直しも

飲食店経営で重要な指標となるFLコストについて解説してきたが、同様に重要な指標としてFLRコストについても正しく理解しておこう。FLRコストとは、F(食材原価)とL(人件費)に、RENT(家賃)を加えた指標だ。FLRコスト比率は下記の計算式で計算される。

FLRコスト比率(%)=(食材原価+人件費+家賃)÷売上高×100

飲食店のFLRコスト比率は70%が標準値。大半の飲食店経営では売上の増減に関わらず家賃が発生するため、いくらFLコストを抑制したとしても、家賃が高ければ利益が残らないといった事態になる。例えば、FLコストを50%に抑えたとしても、FLRコストが80%という店舗もある。そのためいくらFLコストを削減しても、利益が残らない状況が生まれてしまうのだ。
ただし、家賃は契約上の問題も絡んでいるため、大家さんへの家賃交渉が現実的でない場合、移転も視野に入ってくるだろう。一方、FLコストのコントロールが難しい場合は、店舗の移転によって店舗運営を好転させるという手法も考えられる。つまりFLRコストの見直しで、利益が出る店舗運営ができるということでもあるのだ。そのためFLコストと合わせてFLRコストについても検討してほしい。

売上増のために営業利益率を高める

FLコスト、FLRコストの他にも、飲食店経営者として注目してほしい指標がある。それが営業利益率だ。飲食店には「粗利益」と「営業利益」の2つの利益があるが、粗利益は売上高から食材原価を差し引いたもの。一方、食材原価以外にも人件費や家賃、水道光熱費など店舗運営に関わる販売管理費を差し引いたものが営業利益だ。計算式は下記になる。

営業利益率=粗利益(売上高−食材原価)−販売管理費÷売上高×100

つまり営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合のことで、8%が飲食店の標準値とされる。しかし中には営業利益率が20〜30%という飲食店もある。具体的には、販売管理費などをそのままにして、売上高を高めると営業利益率を高めることができる。

簡単な方法は値上げをすることだが、それでは客離れという現象につながる可能性もある。そのため下記のような施策が欠かせないだろう。

・接客品質を上げて高級感を高める
・盛り付けなどの工夫で料理の価値を高める
・知名度を高めて、店舗自体の価値を高める、など

店舗の雰囲気やコンセプトなどにもよるが、このような施策で店舗や料理の価値を高めることで、営業利益率を高められる可能性があることも覚えておいて損はないだろう。

今回はFLコストの説明とその改善方法を紹介した。繰り返すがFLコストは飲食店経営において、店舗で管理可能な重要な指標である。特に現在は、原材料高騰や人件費高騰などによって、FLコストのコントロールには難しい状況にあるとも言える。利益を生み出せる経営運営を目指すためにも、FLコストに加えてFLRコストについての理解も深め、自店の運営に合った管理方法を身につけてほしい。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/