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近隣の飲食店が互いに送客! 下北沢の“ある通り”で生まれた「連携集客術」

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『TAP&GROWLER』のオーナー・金井圭司さん

ここ数年、開発が進み、徐々に街並みが変わりつつある下北沢。そんな下北沢の小さなある“通り”をリサーチしたところ、「ここにいるだけで一日過ごせる!」というスポットを発見した。各店舗の店主に話を聞くと、偶然の産物らしいが、見事なまでにお店のジャンル分けがされている。お客の共有はされてはいるが、ライバル同士ではない。ひとつの“通り”を舞台に、いつの間にか連携し合い、それぞれが集客効果を得ているという4つの店のオーナーを取材した。

新参者でも、すぐに“通り”のムードメーカーに

まず話を聞いたのは、昨年オープンした新進気鋭の店『TAP&GROWLER』の金井圭司さん。金井さんのフットワークの軽さは、瞬く間に同じ“通り”の他店とつながりを持つことになる。

「もともとブルワリーに興味があり、自分でビールを作ってみたくてこの店を開いたんです」

そう、ここは飲食店ではなく、ビール醸造所であり酒屋なのだ。

「自社開発のビールも含め、クラフトビールを“量り売り”している、恐らく日本初のお店です。酒屋なのでフードメニューの提供ができないことを逆手に取って、フードの持ち込みは自由なんです」

なんとも、斬新な発想である。そして、テイクアウトメニューがある近隣の『極鶏.Bar』や『かまいキッチン』と、すんなり意気投合。自然な流れで互いの店のお客を共有する流れになったという。

スタイリッシュな樽生がずらりと並ぶ、カウンター内

「下北沢には長年住んでいたのですが、お店を開くにあたって、下北に固執していたわけではないんです。でも、この“通り”には、何か呼ばれた感じがあったのかもしれません。僕なんかまだ昨年からの新参者なので、偉そうなことは言えませんが」

とは言え、全国のブルワリーから直で仕入れている生樽専門店であり、選び抜いた18種類のクラフトビールを常備するこだわりを持つ同店。酒屋らしく、ボトルのリユースも可能にしているなど、その使い勝手のいい店づくりが功を奏して利用客は後を絶たない。

「僕は全くの異業種から趣味が高じてこの店を開きました。その異業種もまだ続けていますし、このお店は社員とアルバイトに任せています。“オーナーの冷やかし”として、顔を出しているだけです(笑)」

そうおどける金井さん。しかし、彼が顔を出し、お客とコミュニケーションを取ることによって新たな和が生まれ、その和は他の店へとつながってゆくのだ。

「この“通り”は車が通らないんです。だから、音楽イベントを開催したり大道芸人を呼んだりと、うちの店が参入する前から色んな意味で熱かったんです。僕が個人的にやってみたいのは、『かまいキッチン』のクミさんがいい牡蠣を仕入れられるルートを持っているので、この“通り”で牡蠣のバーベキューをやってみたいです。牡蠣をつまみにうちのビールを飲んでくれたら、最高ですね」

最後に、お店で金井さんに会った際、ビールの講釈をしてもらえるのかと聞くと……。

「いや、僕、あまりそういうの好きではないんですよ。とにかく飲んでほしいという考えでして。飲んで美味しくて、その場が楽しくあればそれでいいのかなと」

新参者と恐縮はしているが、間違いなく、この“通り”のムードメーカーであることは間違いない。

この“通り”のお姉さん的な存在のクミさん

小さな子ども連れでも気軽に入れるお店

この通りではベテラン店にあたる『かまいキッチン』。

「10年ほど前に私自身が、下北沢で赤ちゃんを連れていけるお店を探していたら、あまりなくて。だったら、自分で始めてみようかなと思ったのがきっかけです」

そう話すのは、店主のクミさんこと山崎久美子さん。店は仲間3人で始めたが、その中にフィリピン人男性がいたことで、日本人にはあまり馴染みのない、トマト煮込みをアレンジしたカレーである『カルデレータライス』などのフィリピン料理もメニューに入れ、話題となる。もちろん、それだけではない。母親である山崎さんの自然な発想から生まれた、合鴨米や旬の無農薬野菜を基調とした小鉢が3点ついた健康的な定食は、下北沢屈指の心も休まる味わいだ。

「子供に、そしてみんなに優しい家庭料理を意識しています。お弁当のテイクアウトもできますよ」と山崎さん。子ども連れだけでなく、一人で来るお客さんも多く、使い勝手は様々。閉店時間近くに訪れ、お弁当をテイクアウトし、『TAP&GROWLER』に持ち込むことも、もちろん可能だ。

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山崎光尚

ライター: 山崎光尚

小学館の雑誌を中心に活動するフリーライター。食以外の得意分野は、音楽・漫画・お笑い・映画など。ヴィレッジヴァンガード公式フリーペーパー『VV magazine』では、毎月、様々な分野で活躍する有名人を直撃取材中。