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M&Aで始める飲食店開業。「事業譲渡」と「株式譲渡」で変わる、金額の算出方法

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株式会社ウィット 代表取締役・三宅宏通氏

流行に敏感な業態で浮き沈みがあり、開業資金も2000万円~3000万円は当たり前。そんな飲食業にイチから参入するのは、なかなか覚悟が必要なことだ。だがここ数年、そんな飲食業界での新たな独立手法として、低リスクで手間も省ける「M&A」が注目されている。本連載はそんなM&Aの有効性について、株式会社ウィット・代表取締役の三宅宏通氏に解説していただく。連載2回目は、実際に成約した案件をもとに、M&Aのメリットをひも解いていく。

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買収のベースとなる数価は、対象会社のキャッシュフロー

まずはじめに、「売買価格はどのように決まるのか」というテーマについてお話をしたいと思います。大前提として、M&Aの売買価格に関する査定方法や相場といったものはありますが、法律で定められたルールや規制はありません。

最終的には、売主と買主が合意する価格に調整を重ねていく作業そのものが、最も重要なプロセスになります。そしてその上で、ベースになる考えが「対象会社(事業)が1年間に生み出すキャッシュフロー」です。

決算書に記載された利益が単純にベースになるわけではありません。対象会社・事業運営に不要となるものであれば、その費用(例:役員報酬や生命保険料、経営者の自宅家賃)や実際に支払いが発生しない減価償却費などは差し引き、「対象会社(事業)が1年間に生み出すキャッシュフロー」を計算します。それを何年分にするかですが、小規模な飲食店のM&Aの場合は、2年分~4年分の範囲で成約することが多く見受けられます。

また、その金額を「事業価値」と考えると、事業譲渡ではこの「事業価値に物件取得費を加算した金額」が買手の投資コストの目安となり、会社ごと取得する株式譲渡では、この「事業価値に純資産を加算した金額」が買手の投資コストの目安となります。

これらはあくまで目安であり、実際には業種や案件規模によって相場や考え方が変わりますので、ご留意ください。また、冒頭申し上げましたように、あくまで売主と買主が合意する価格に調整していくことが目的ですから、価格よりも今すぐ相手先を定めたい売主であれば、年間キャッシュフローの1年分でも良いという要望もあります。単純計算ですが、1年で投資回収が見込める案件ともなればお得です。

売買金額の算出基準

業績以外で重要な価格基準は「信頼」と「スピード」

一方で、業績以外に価格に影響を及ぼすことは何が考えられるでしょうか。それは「信頼」と「スピード」です。きれいごとのように感じられるかもしれませんが、私個人としては、この2つが価格に及ぼす影響は計り知れないと自身の経験を通じて思っています。

どのようなM&Aであっても、売主や買主は人間です。成約に至るプロセスの中で行われる資料の授受、情報の開示、条件交渉、リーガルチェックでは、相手方の熱意や人柄がとてもわかりやすく表面化します。

たとえば、依頼した資料がなかなか出てこない場合は、売主に対して不信感が募ります。一方ですぐにメールに返信があり、期日通りに検討状況の報告があれば、買主に対して熱意を感じます。これらの過程は最終局面での条件交渉でお互い歩み寄る最大のポイントになるのです。

もちろん、高く売りたい売主と安く買いたい買主では利害関係が異なりますので、そこを調整していくことは困難ですが、「信頼」と「スピード」は相手に価格以上に託したい“何か”を生み出してくれます。特に人材が主役の飲食店経営では、より一層、この部分に対する考えは強いのだろうと感じています。

以上のポイントを見事にクリアし、晴れて成約した成約事例と買手のインタビューをご紹介します。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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