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パリの三つ星『ル・サンク』の元スーシェフ田熊一衛氏が、地元・福岡で挑む新たな挑戦

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田熊一衛シェフ

地元・福岡で料理人としての一歩を踏み出し、その後、東京、パリの名店で経験を重ねた田熊一衛シェフ。2018年に帰国し、昨年6月には東京・白金に昼はパティスリー、夜はレストランという新しいスタイルの『Libre』をオープンしたことで大きな話題となった。

同年9月には、地元・福岡にパティスリー『Libre』を開業。さらに2019年4月には、田熊シェフが監修する洋食居酒屋『FLOW』が福岡に誕生した。帰国後、精力的に活動する田熊シェフに、店づくりの信条や、地元・福岡への思いについて聞いた。

『Libre』(東京・白金)オープンから数か月で福岡進出!

フランス・パリから帰国後、2018年6月に『Libre』(東京・白金)をオープンさせた田熊シェフ。ちょうどその頃、以前から親交があり、業務提携を組むOBU Companyの寺川欣吾社長に、西鉄福岡(天神)駅北口改札外コンコースの「天神TOIRO」から出店依頼が届く。田熊シェフは当時をこう振り返る。

「OBUの業態より、『Libre』の方がマッチするのでは?と話をいただき、いずれ地元・福岡にお店を持ちたいという思いがあったので、チャレンジすることにしました」

このオープンをきっかけに、福岡を訪れる頻度が増えた田熊シェフに、今年1月、再び新たな相談が舞い込んだ。相談者は、上京前の10代の頃からお世話になっている『MOCHA JAVA CAFÉ』のオーナーだ。『MOCHA JAVA CAFÉ』といえば、今泉公園を見渡せるロケーションと、本格的な味わいの料理で人気を博していたが、新たな挑戦として業態を変更することになったそう。

「これまでにはなかったカジュアルなお店をしたいと考えました。ビストロと言ってしまうと、福岡の人たちには敷居が高いと思ったので、洋風居酒屋をめざすことにしました」

『FLOW』の店内

確かに、“パリで活躍したシェフの店”と言われると、身構えてしまいがちだ。

「自分を表に出す料理ではなく、街の人たちの“アレが食べたい”という思いに応える、人々から愛される店でありたいと考えています。軸としてはフランス料理だけれど、二つ星、三つ星の料理を出すのは違うでしょう? 自分を表に出すなら、ガチガチのガストロミーをすればいいだけのこと。けれど、私は常に福岡にいるわけではないので、福岡では不可能です。二つ星、三つ星の技術を取り入れながら、気軽に楽しんでほしいので、料理のコンセプトなども特に決めていません」

この思いは、『Libre』のスイーツにも通じると田熊シェフは言う。一つのお菓子からいろんな会話が生まれ、人々が幸せな気持ちになるように、『FLOW』の料理やドリンクを通して、人々を幸せにしたいというアツい思いを抱いているのだ。

『FLOW』の料理はすべて田熊シェフが監修

料理だけでなく総合力で「これまでになかった」と言わせたい

オープンから約3か月。近況を聞いてみた。

「苦戦するのは予想していました。というのも、福岡の人は、人ありきで店を選ぶ傾向がありますよね。今は東京からのスタッフが中心なので、福岡のお客様に認知してもらうまでは時間がかかるだろうと思っていました。また、ここは20年近く、『MOCHA JAVA CAFÉ』として愛されてきました。場所柄、通りすがりに入るお店ではなく、このお店を目指して来てもらわないといけませんので、浸透するまでには時間がかかるでしょうね。

東京の場合、新しいスタイルの居酒屋をオープンしましたといえば、自ずと人は集まるけれど、地方は基本的に保守的です。だからこそ、あえて流行りの店にはしたくなくて。福岡のランキングがあるとすれば、5~8位あたりをうろちょろしているような店がいいですね。とはいえ、お客様に来ていただかないと始まりませんし、そろそろ、各方面に発信をしていかなければと考えています」

メニュー開発は基本的に東京で行うという田熊シェフ。「魚のマリネorタタキ サラダ トマトウォーターとハイビスカス」のような独創的な素材の組み合わせだったり、「コンテチーズのハムカツ」など、日本人に馴染みのあるメニューを取り入れたり。普遍的なもの、新しいものを混在させながら、カラフルなお皿や可愛らしいユニフォームなど、居酒屋らしからぬ店づくりで、これまでになかった居酒屋を作り上げようとしている。

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寺脇あゆ子(cadette)

ライター: 寺脇あゆ子(cadette)

福岡・大阪の出版社勤務を経て、福岡を拠点に活動するフリーの編集者・ライター。グルメ情報誌『ソワニエ』やシティ情報ふくおか別冊『福岡肉本』などの地元情報誌のほか、ぐるなびが運営する『dressing』、スイーツ専門の『CAKE.TOKYO』、ウェブマガジン『greenz.jp』などのウェブメディアでも九州・福岡を中心とした情報を発信している。