軽減税率スタートまであと2か月。大手外食各社の「価格」をめぐる戦略
10月からの消費増税まで残り約2か月。あわせてスタートする軽減税率制度に向け、大手外食各社の「価格方針」に関心が寄せられている。飲食店の場合、店内での飲食にかかる税率は10%に引き上げられる一方、持ち帰りについては8%に据え置かれる。この複数税率による課題がさまざまあり、それを理由に各社で方針が割れている状況だ。
複数税率の実施で想定される懸念
最たるものは、複雑化するレジ対応や客への説明といった店側の負担。加えて購入時には、「結局、いくら支払えばいいのか?」という客側の混乱も生じるだろう。この対応策として各社が打ち出している価格方針には、「表記をそろえる」という共通項がありつつも、大きく異なるふたつの流れが見えてくる。
イートインとテイクアウトで、実際の支払い額に差を持たせない「税込み同一価格」
イートインとテイクアウトの税込み価格を揃える一番のメリットは、客にとって購入価格が分かりやすいということ。軽減税率制度導入前と同じ感覚で飲食を楽しむことができるため、安心感も大きい。
現時点でこの方針を発表している大手外食チェーンの例は、以下の通りだ。
■日本ケンタッキー・フライド・チキン
オリジナルチキンの単品価格は、10月以降も店内飲食・持ち帰りを問わず、現状(1ピースあたり税込250円=本体価格231円+消費税8%)のまま据え置き。制度導入後は、軽減税率が適用されない店内飲食での本体価格を227円に値下げすることで、帳尻を合わせるかたちだ。
理由としては、「同じ商品で価格が異なることにより噴出するであろう、客の不満を解消したい」というものと、客が持ち帰り価格で購入した商品を店内で食べた際の対応など、「従業員のイレギュラーなオペレーション負担増を避けたい」という二点が明言されている。
■松屋(松屋フーズホールディングス)
KFCと同様、本体価格の調整によって、店内飲食と持ち帰りの購入価格をそろえる方針。
明朗会計のキープや、起こりうるさまざまな従業員負担を減らす目的はもちろんだが、同社ではそれ以上に「券売機での精算方式に対応するため」という、現行システムや設備上の理由も大きいよう。導入している券売機では、一円単位の計算が難しく、複数税率の対応には不向きという判断だ。