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飲食店の「QSC」向上には何が必要? ES(従業員満足度)を上げることも大切な鍵に

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画像素材:PIXTA

飲食業界においてよく耳にする「QSC」。今回は改めてQSCとは何かをおさらいし、そのQSCを向上させるためのポイントや心構えなどをご紹介する。

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今さら聞けない?「QSC」とは

QSCとはQuality(クオリティ)・Service(サービス)・Cleanliness(クレンリネス)の頭文字をとった言葉。飲食店においては、料理の品質・接客サービス・清潔さという3つの大きな軸で、店舗のレベルを測定し向上させるための指標だ。提唱したのは、マクドナルドの創立者であるレイ・A・クロック。彼はこのQSCの考えのもと、マクドナルドの具体的かつ詳細なマニュアルを作成した。そのため、どの国のどの店舗でも、同じ価値を提供することが可能になり、世界的な事業拡大につながったのだ。

QSCはどれかひとつの軸においてレベルが高ければ良いというものではない。来店されたお客様の心を掴むには、総合的に高くないと意味がないのだ。例えば、料理が美味しくてもクレンリネスに不足があればお客様は不満を感じてしまう。接客が良くてクレンリネスも問題なく、料理が美味しい……というように、評価軸のレベルが全体的に高く、さらに、何かのポイントが抜きん出ている店舗にリピーターは集まる。

では、実際どのような点に気を付けていくべきなのか。次はQSCを向上させるためのポイントについて見ていく。

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「Q(クオリティ)=料理の品質」を上げるためには?

料理の品質には、味だけではなくボリュームや見た目、温度などすべての要素が関わっている。そのため、味について見直すことは当然ながら、提供における基本的な配慮がなされているかという点も重要になる。

ラーメン店であれば、お客様それぞれの注文に合わせた味付けになっているか。ビールを提供する店舗であれば、グラスは綺麗か、泡の比率は適正か、などのポイントをチェックすると良い。特に注文頻度の高いメニューに関しては、チェックする頻度や項目数を多くすると良いだろう。

また、「インスタ映え」という価値観も定番になり、見栄えの満足度も重要になってくる。もちろん、いくら料理のクオリティが高くても、顧客層に合わせた価格に見合ったものであることも忘れてはいけない。

「S(サービス)=接客サービス」を充実させるためには?

サービスに関しては、例えば「予約」「入店案内」「オーダー」「料理の提供」「退店・お見送り」というように、接客の一連の流れを意識しつつ、ステップごとにチェック項目を設けると分かりやすい。どのステップも大切だが、特に予約時の電話対応が悪かった、入店案内時に来店したことを気づいてもらえなかった、などの不満は大きいので、まずはそこを確認するといいだろう。

また接客サービスとは、注文を聞いて料理を運ぶだけではないということも肝に銘じておきたいところ。サービスの向上には、スタッフ同士のロールプレイングの実施も有効である。従業員役とともにお客様役を疑似体験することで、実際の接客で似たような状況になった時にも対応しやすくなる。活気のある店舗、親しみのある接客など店舗によって目指すべき理想像は異なるが、スタッフ全員で同じ理想像を共有し、それを実現していくというフローが望ましい。

「C=(クレンリネス)=清掃」を徹底するには?

クレンリネスに関しても、お客様目線でチェックしていくことが大切だ。特に店舗の入口とトイレの衛生状況は、最重要チェックポイント。1時間に1回というように、毎回チェックするタイミングを決めておくと良いだろう。そのほかにも、客席の床やテーブル上の調味料入れ、メニュー表などの汚れや破損はおろそかになりがちなポイント。お客様の退店時に、毎回確認したいところだ。

もちろん髪型をはじめ、スタッフの身だしなみもクレンリネスに含まれる。また意外と盲点になりやすいのが、スタッフのユニフォーム。白など汚れが目立つ色を採用している店舗や、油を使うメニューが多い店舗の場合、ユニフォームの汚れには常に気を配ろう。

しかし、そのユニフォームを毎回洗濯することがスタッフの負担になるケースも考えられる。その際は店舗側がまとめてクリーニング業者に依頼することを検討しても良いだろう。スタッフの身なりにおける清潔感を維持できるとともに、ES(従業員満足)にもつながる。

厨房内に関しては、客席同様チェックリストを作成して清潔を保つことも大事だが、衛生検査の専門業者によるチェックを入れることも検討すべき。万が一、食中毒などが発生してしまった場合の影響は相当大きいため、未然に防ぐ意識が大切だ。

QSC+H、QSC+V、QSC+A…顧客満足度を上げるQSCの「プラスα」とは

QSCを向上させることができれば、顧客満足度は高まり、さらに売上や利益につながる可能性がある。さらに、QSCに「プラスα」を追加することができれば、さらに付加価値を高めることも。次の3つのプラスαについて解説していこう。

QSC+H(Hospitality)とは、感動させるようなおもてなしの心

QSCに追加する一つ目はホスピタリティのH。ホスピタリティは「おもてなしの心」のことで、お店やスタッフのサービスに対する姿勢が表れるものだ。よりわかりやすく言えば、お客様に対する気遣いのことで、夏は冷たいおしぼり、冬は温かいおしぼりが出てくるのも「おもてなし」のひとつといえる。

しかし、こうしたことはどこでもやっていて差別化が出しにくいもの。例えば、汗をかいているお客様におしぼりを2つ渡すことなど、マニュアルにはない対応であるが、スタッフの機転の効いた気遣いに他ならない。こうしたお客様に合わせた気遣いこそ、お客様を感動させるホスピタリティなのだ。下記に具体例を挙げよう。

・お子様がいるお客様の場合、「取り皿は必要ですか?」と声をかける
・また、「子供用のエプロンをお持ちしましょうか?」と声をかける
・エアコンの近くにいるお客様に「寒いようであればブランケットをご用意します」と声をかける
・グラスが空いているお客様に、「おかわりはいかがですか?」と声をかける、など

もちろんスタッフ1人がホスピタリティの向上に努めるのではなく、全員で向上していく姿勢が、顧客満足度をさらに引き上げることにつながっていく。

QSC+V(Value)とは、お店に来ることの付加価値

次の要素は価値を意味するバリュー(Value)のV。他店にはない付加価値と考えるといいだろう。マクドナルドでは、このVを加えた「QSCV」が世界共通の企業理念となっている。

飲食店では、来店スタンプや期間限定メニューの提供などが「お店に行く」という動機をより強めてくれることになる。SNSのフォロワー限定プレゼントなども時代にマッチしていいだろう。長時間滞在できるようにコンセントの使用を許可したり、お子さまが遊べるキッズスペースの設置したりといったことも対象者にとっては付加価値となる。顧客満足度が高まるとリピート回数が増えるだけではなく、知人を連れてきたり、SNSを通じて紹介したり、といった好循環にもつながるだろう。

QSC+A(Atmosphere)とは「また来よう」と思わせる雰囲気

QSC +AのAはアトモスフィア、つまり店舗の雰囲気を指している。店舗に足を運んで食事をするのは、食欲を満たすためだけというお客様だけではない。時間や空間を楽しんでいるお客様もおり、居心地の良さやコンセプト、つまり雰囲気によっても満足度を向上させることができるのだ。

例えば、明確なコンセプトで統一された店内インテリアや内装にすることで、客の居心地はグッと良くなる。さらにスタッフの雰囲気や言葉遣いなども雰囲気づくりには必要で、お店とマッチしていれば違和感を感じずによりくつろぎを得ることができる。「また来よう」という気持ちにさせることができるのだ。

もちろん、QSCにホスピタリティ、バリュー、アトモスフィアといった要素を一つだけ追加するのではなく、3つすべてを高いレベルで追加することで顧客満足度をより高くすることができる。

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QSCを向上するための手法

飲食店経営にとってQSCを向上させることは不可欠なことと言っていいだろう。そこでどのようにQSCを向上させるといいのか、その3つの手法について解説していこう。

改善点を見つけるために顧客アンケートを実施する

QSCを向上させるには改善点を見つけることが重要で、そのためには顧客によるアンケートを実施するのが最適だ。お客様視点での具体的な意見や要望が得られるからだ。

アンケートは週や月などで集計し、スタッフ同士で話し合いの場を設けることもおすすめ。改善点と好評だった点を分けて、お客様から褒めてもらえたことは強みとして捉え、さらに伸ばすように取り組むことでもQSCを向上させることになる。

マニュアルの作成や、チェックシートの導入

顧客アンケートを実施し、改善点が見つかったら、QSCを向上させるためのマニュアルを作成しよう。何が足りないのか、何をすればいいのかを明確にし、共有することで、スタッフの意識にも変化が現れてくる。

またマニュアルだけでは実践しているかどうかわからないという場合は、チェックシートを導入してほしい。例えばトイレ掃除にしても、見た目の綺麗さだけではなく、注意点をチェックシートにすることで、全スタッフが改善点を共有することができるようになる。

ES(従業員満足度)を上げることもQSCの向上につながる

店舗によってはQSCをチェックして改善するだけでなく、時給などの評価と連動させる、社内表彰制度を設けて表彰を行うなど、ES向上と合わせた仕組みを取り入れているところもある。ES(従業員満足度)を向上させることで、仕事への取り組み姿勢、店舗への愛着が変わり、QSCの向上につながる可能性が高いのだ。

社会保険や休暇制度などの福利厚生のほか、アルバイトへの精勤手当、有給、社員昇格制度など、スタッフのモチベーションアップの施策にはさまざまなものが考えられる。QSCの状態を見ながら、どこから着手するといいのか、経営者の判断力も必要になるだろう。

QSCの向上には「今すぐできる」「じっくり取り組む」など優先順位をつけて

今回はQSCの基本をおさらいするとともに、顧客満足度をより高めるためのプラスαの要素や、向上するためのポイントを紹介した。「また行きたい」と思ってもらうことが競合店に負けないお店づくりの基本。そのためにも恒常的にQSCの向上を目指してほしい。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/